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第1章 疫病と言う夫婦喧嘩
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しおりを挟む村長宅は、村の中では一番立派な家だった(王都で言えば、普通の家)。
その玄関ドアにあるノッカーをコンコンコンと打ち鳴らす。
すると中から二十代前半の女性が出て来た。
「どちら様でしょう?」
僕を上から下まで不躾な視線を寄越しながら、怪しげな顔で問い質してくる。
そんなに怪しげに見えるんですかねぇ。
仕事できてるので、カッターシャツに濃紺のジャケット、同じ色のスラックス。至って普通ですが、何処が怪しいのやら……。
「宰相様の言伝てで、此方に伺ったのですが、村長はご在宅でしょうか?」
仕事用の笑みを浮かべて聞けば、女性の顔に赤みが差す。
何を考えてるのでしょうか?
「エッ、ええ。父なら居りますが、取り敢えず中にお入り下さい。」
と確認もせずに中に入れてくれる。
"宰相様の言伝て" とだけで中にすんなり入れるとは、この家は大丈夫なのでしょうか?
と疑念が沸くが、所詮他所様の家の事だ、僕が気にすることではないか。
僕は、女性の後について行くが、普通なら一階にある応接間あるいは客間に通される筈だが、何故か二階の奥まった部屋に案内された。
何故だろうと疑問に思ってると。
「父は、一ヶ月前に流行り病を患い、一時期回復はしたものの体力が思う程回復できず、伏せっておりますゆえ、このような場所にお連れしたのです。」
と女性が此方を向き、説明する。
なる程ねぇ。
尤もなる言い訳ですね。
女性がドアを開け中に入るように促してくる。
僕は、促されるまま部屋に一歩足を入れる。
部屋の中は、カーテンで窓を塞いでおり薄暗く
、窓辺にあるベッドには誰も寝ては居なかった。
これは、どういうことだろうか?
またしても疑念を浮かべる僕。
少しでも光を入れたくて。
「あのう、すみませんが、カーテンを一ヶ所だけでも良いので、開けさせて貰っても良いでしょうか? 後、空気の入れ換えも。」
誰も居なくても、この淀んだ空気の中には居たく無いと思ってしまうのは、致し方ないと思う。
「すみませんが、そのままでお願い致します。」
と女性に返されて、何処か訳ありな感じがするが、何かが可笑しいと感じる。
村長がこの部屋には居ないのであれば、他の部屋で休んでるのだろうと察し。
「村長の体調が優れないのならまた改めてお伺い致します。」
僕はそう言葉にして踵を返そうとするが、僕の行くてを女性が塞ぎ仁王立ちする。
何時の間に僕の後ろに回り込んだのだろう?
そう思いながらも。
「どうされましたか? 何か気に触るようなことでも行ったでしょうか?」
疑問に思って、そう言葉にしつつも、警戒は怠らないようにした。
「あなたは、本当に宰相様からの事伝の方なのですか? 以前にもそう言って私たちを騙した騙が居りました。確証が得られるまで、此方から出すわけには行きません。」
と、冷静沈着な態度で言い出す女性。
へぇ、これ罠だったんだ。
って、感心してる自分が居る。
まんまと嵌められてしまう僕って、滑稽だろうなぁ。
女性も胸の内で、笑っているんだろうなぁ、簡単に引っ掛かる僕の事を……。
まぁ、確証なら直ぐに出来ますが、少し様子を見た方が良いでしょう。
しかし、先程気になる事を言っていましたねぇ。
宰相様からは、僕が行く前に派遣してるなど一言もありませんでしたし、そういう類いの書類は目にしなかったと思うのですが、ね。
これは、別件って事になりますかね。
「分かりました。ただし、窓とカーテンは開けさせて貰いますよ。こんな淀んだ空気の中に長く居たくないんでね。」
僕はそう言うと全ての窓とカーテンを開け放った。
女性は、僕の行動を見て驚愕していた。
"開けるな" と行った矢先に窓とカーテンを全開にしたのだから。
「私は、何があっても知りませんから!!」
とわなわなしながら、女性は部屋を出て行き、ご丁寧に鍵まで掛けていったのだ。
はぁ~、これでは外に出られません。
ドアを見れば、内側から鍵が開けれるようには成っていないために、僕は鳥の籠になってしまいました。
抜け出すことはできますがここに戻る事を考えると無理ですね。
さて、奥さんとどう連絡を取るべきか……。
僕は、改めて部屋の中を見渡す。
所々壁紙が破れていて、床も多少傷んではいるみたいだが、まぁ、居られなく無い環境ではあります(お手洗いも有り)が、長居はしたくないですね。
これは、早く出れる様にすべきですね。
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