ヒ・ミ・ツ～許嫁は兄の親友～（旧:遠回りして気付いた想い）［完］

高校生編と再婚約の条件

幸せオーラ…遥

  俺は、昨日亜耶からプレゼントされた時計を腕にして、出社した。


  エレベーターホールで順番待ちをしていると。
「おはよう、遥。朝から何ニヤニヤしやがって。」
  雅斗が俺の肩を叩く。
「えっ、あぁ。おはようございます、副社長。」
  嫌みっぽく返事を返す。
  そして、雅斗が俺の方に手を差し出して。
「……で、亜耶への返事の手紙は？」
  寄越せと言わんばかりだ。
「ねぇよ。」
  俺は、素っ気なくそう返した。
「は？ 亜耶から、手紙貰ったんだろ？ 返事は返すもんだろうが……。」
  雅斗が、眉間に紫波を寄せて言う。
  確かにそうなんだが。
「俺、気のきいた便箋なんて持ってねぇから、昨日のうちにメールで返事を返した。」
  俺の言葉に。
「まぁ、そうだろうな。」
  何で、そこに納得するんだよ。
「だが、そこは自筆で書いて渡してやる方が、真実味があるだろうが……。」
「そうだろうけど、直ぐに返事してやりたかったんだから、仕方ないだろう。」
  不貞腐れながら答える俺。
「……で、今日の幸せオーラは、亜耶が関係してるのか？」
  確信めいた言葉で雅斗が聞いてくる。
  あんな手紙もらえばな。
「そうだよ。悪いかよ。昨日の亜耶からのプレゼントもしてるしな。」
  そう言って、左の袖を捲る。
  女性物だが、亜耶とお揃いだと思うと、な。
  ……でも、俺がこれを持っているのに悠磨あいつには、何て言うんだ？
「それはそれは良いことで……。って、それペアウォッチだって由華から聞いてる。遥が女性物ってことは、亜耶が持ってるの男性物か？ まぁ、悠磨あいつにはわからないだろうよ。」
  雅斗には、俺の考えはお見通しみたいだ。
「だと良いんだが……。」
  苦笑を浮かべながら答えた。
「そろそろ、その幸せオーラ封印しろよ。今から仕事なんだからな。」
  雅斗に釘を刺される。
「わかってるよ。」
  仏頂面で答え、前を見据える。

  
  俺は、仕事モードに切り替えたのだった。