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高校生編と再婚約の条件
お義姉ちゃんと…亜耶
しおりを挟む朝は、悠磨くんと来たけど、帰りは由華さんと待ち合わせって言っても、由華さんが学校まで迎えに来てくれることになってた。
淡々と練習をこなしていく。
リレーは、アンカーとなってる分、やはり緊張が否めない。
本番に失敗しないように何度もイメージトレーニングをし、自分を追い立たせていれば、あっという間に部活が終わり、着替えをすませて校門に向かう。
由華さんが門に凭れて待っていた。
「お義姉ちゃん。」
私は、駆け寄って由華さんに声をかけた。
「亜耶ちゃん、お疲れ様。」
満面の笑顔で由華さんが迎えてくれた。
しかも、思いっきり抱き締めてくるし……。
周りの生徒が、遠巻きで私たちを見て行く。
「お義姉ちゃん。そろそろ、放してもらえませんか?」
恥ずかしくなって、そう問えば。
「えーー!!」
由華さんが嫌そうに叫ぶ。
「まぁ、いっか。亜耶ちゃん、お昼、何が食べたい?」
突然ふられて。
「う~ん、パスタかな。」
即答してしちゃった(笑)。
その答えを聞いて、由華さんが少し考えてから。
「わかった。美味しいお店知ってるから、そこに行こう。」
私の腕に自分の腕を絡め歩き出した。
学校からさほど遠くない場所に隠れ家みたいにその店はあった。
店内に入ると落ち着いた雰囲気のお店だった。
窓際の席に座ると。
「今日は、あたしの奢りだからね。好きなの食べてね。」
メニューを見ていた私に、由華さんがニッコリと笑顔を浮かべて言う。
「因みにあたしのお薦めは、これかな。」
そう言って、メニューを指差す。
それは、ベーコンとアスパラのクリームソースパスタ。見るからに美味しそうで。
「じゃあ、それでお願いします。」
薦められた物をと言うと由華さんがウェートレスを呼んで、注文した。
由華さんが、ニコニコしながら私を見てくる。
何かあったのかな?
「亜耶ちゃん。最近綺麗になったよね。」
突然の言葉に私は、どう返したらいいのかわからない。
「それって、高橋先輩が絡んでるの?」
興味津々で聞いてくる。
えっと……。
「遥さんとは、五ヶ月はまともに会ってませんよ。」
卒業式と入学式の時に顔を会わせただけで、会話何てしてない。
「えっ!!」
由華さんが、驚いた顔をする。
お兄ちゃんに何も聞いてないのかなぁ?
「何で? 高橋先輩の元気の源って、亜耶ちゃんだけなのに……。」
何て言葉が由華さんの口から出てきた。
ん?
遥さんが何?
「お兄ちゃんに聞いてないんですか? 婚約解消したこと。」
私は、由華さんに問いた。
すると首を横に振り。
「聞いてないよ。雅くん何も言わないし……。特に高橋先輩の事となると口を閉ざしちゃうから……。」
由華さんが、口を尖らせて言う。
何も聞いてないのか……。
今日は、少しでも遥さんの近況聞けるのかなって思ってたんだけど、無理かな。
「そうですか……。」
私は、由華さんから目線を反らした。
由華さんから見ても落ち込んでるのがわかったのか。
「……でも、昨日の亜耶ちゃんの様子、可笑しかったから、だから今日誘ったんだよ。」
由華さんの明るい声。
「何かあったんでしょ? 亜耶ちゃんの心の中に変化が……。」
鋭い指摘にたじろぐ。
「もしよかったら、話聞くよ。これでも亜耶ちゃんより長く生きてるしね。」
茶目っ気たっぷりで言う由華さん。
由華さんになら、話してもいいのかなって思う。
少しの沈黙の後。
「……あの……。」
どう切り出したらいいのか解らずに口ごもっってしまう。
そこに。
「お待たせしました。ご注文の品になります。」
そこにウェートレスさんが注文品をテーブルに並べる。
「ご注文の品は以上です。ごゆっくりお召し上がりくださいませ。」
ニッコリと笑顔を浮かべて、立ち去って行った。
それを見送ると。
「取り敢えず、食べよか。」
由華さんに促されて、食べる。
「美味しい!」
つい口からこぼれた。
由華さんのお薦め、本当に美味しくて食が進む。
「ウフフ。ここのお店、あたしが学生の頃からやってるお店だよ。値段も手頃だし、デザートも充実してるから、よく友達と来てたんだ。」
由華さんが、懐かしそうにそれでいて嬉しそうに言う。
「ここってね、最初に見つけたの高橋先輩なの。で、雅くんが高橋先輩から教えてもらって……。であたしと来るようになったお店なの。」
由華さんが、感慨深げに言う。
そうだったんだ。
「それで、亜耶ちゃんにも教えてあげたかったんだ。私たちの思いでの場所を亜耶ちゃんが通ってくれたらって、ね。」
ニコニコして食べる由華さんに私も微笑む。
そして、意を決して。
「お義姉ちゃん。私……最近、遥さんの事ばかり考えちゃうんです……。」
私は、口にした。
「あれ、前からじゃないの?」
由華さんが、不思議そうな顔をして聞いてきた。
私は、首を横に振る。
「違うの。最初は、ただのお兄ちゃんの友達ってしか思っていなかった。でもね、遥さんが綺麗な女性と歩いてるにを見た時に"モヤモヤ"にやっと気付いて、それから最近ある男の子と付き合うようになってから、何かが違うって思うようになって……。気付いたら、遥さんの事を思い出すんです。」
美味しいパスタなのに何も味がしなくなってきた。
自分の言った言葉が、上手く伝わってるのか解らなくて、緊張してきたのかも……。
「ふ~ん。それって、亜耶ちゃんが高橋先輩の事を意識し出したってことだよね。その付き合ってる子には悪いけど、亜耶ちゃんが意識しないうちから、高橋先輩は、亜耶ちゃんにとって大切な存在になってたってことじゃないかな。」
由華さんが、優しく言葉を紡ぐ。
「もしかしてだけど、知らないうちに比較してたりする?」
由華さんに言われて、ハッとした。
最近、何かと悠磨くんと遥さんを比較する時が多くなってる。
悠磨くんと居ても遥さんならこうするだろうって思ってしまう。
「その顔は、してるね。同じ男としてみてるんだと思うけど、亜耶ちゃんにはその付き合ってる男の子じゃ物足りないって思ってるんだと思う。亜耶ちゃんには、年上の男の人が合うと思う。高橋先輩みたいなチャランポランでも根がしっかりしてて、何でも包み込んでくれる大人な男の方がいいと思う。って、あたしの意見だけどね。」
ウィンクして言う由華さん。
「亜耶ちゃんはさぁ、雅くんや周りの大人達の顔色を見て育ってるから、同年代の男の子が頼りなく感じるんだと思う。」
由華さんの言葉が、胸にストンって落ちた。
そっか……。
今の時間は、無駄じゃない大切なもの。
自分が周りの男の子に異性として感じなかったのは、遥さんが居たから……。
そして、知らないうちに私は、遥さんと居ることが当たり前になってて、気付いたときには頼りにしていた。
でも……。
『高橋さんは、俺の姉貴と婚約してるんだよ。』
あの人が言った言葉が、脳裏に浮かぶ。
「亜耶ちゃん、どうしたの?」
私の顔を伺いながら由華さんが聞いてきた。
「あの……。遥さんが、婚約したって話を耳にしたから……。」
今更私が何を言っても仕方ないんじゃないかって……。
私の口からでた言葉に。
「そんなの噂だけ。高橋先輩、ずっと拒んでるし……。その話は無しになったはず……。それに……。」
由華さんが、途中で口を閉ざした。
「それに。何ですか?」
気になって、続きを知りたかったのに。
「何でもない。食べ終わったことだし、買い物に行こう。」
由華さんが、席を立った。
私は、小首を傾げながら、由華さんの後を追うのであった。
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