上 下
90 / 145
高校生編と再婚約の条件

距離感…亜耶

しおりを挟む

  散々楽しんだカラオケ(途中変な雰囲気になったが……)を出て、近くにあるファミレスに入った。
  六人掛の場所に案内をしてもらい、互いの彼の前に座る。
  私の右側に姫依ちゃん、左側に留美ちゃんが座る。

  メニューを見ながら、何にするか考える。


  そう言えば、今日はお兄ちゃんと食べに行くって言ってたっけ……。だったら、ドリンクだけの方がいいか……。

  何て思いながら、メニューを捲っていくとデザートのページに辿り着いた。フと目についたのが、季節のフルーツタルト。フルーツが、これでもかってふんだんに盛ってあって、食べてくださいって言ってるみたいで、誘惑に負けそのタルトと紅茶を頼むことにした。


  各々決まったようで、店員さんに注文すると喋りだした。


「亜耶。学校での悠磨くんってどう?」
  姫依ちゃんが聞いてきた。
「どうって?」
  逆に聞き返しちゃったよ。
  何を知りたいのか、わからなかったのだ。
「中学と同様で、人気あるでしょ?」
  う~ん。
  人気あるのかなぁ?
「今のところわかんないな。クラスかなり離れちゃったし……。唯一の接点が、委員会と部活ぐらいだから……。」
  私の言葉に二人が驚いた顔をする。
  そんなに驚くこと?
「今度の球技大会でわかるんじゃないかなぁ?」
  クラスでは、誰も悠磨くんの事言う人居ないし……。
「ちょ、ちょっと亜耶。そんな呑気に構えてていいの?」
  姫依ちゃんが焦りながら言う。
  エッ……。
  なんで、焦る必要があるんだろう?
  焦ったって、何にもなら無いし、今更悠磨くんが人気者であろうと付き合ってるのは私なんだから、姫依ちゃんが焦るのは可笑しいと思うんだけど……。
「別にいいんじゃない。悠磨くんが亜耶大好きなの一目瞭然なんだし……。」
  留美ちゃんが姫依ちゃんに言う。
  ん?
  そんなにベタ惚れしてる?
  私には、わかんないや。
  ベタ惚れって言うのは、遥さんみたいな……。
  って、また比較しちゃってる。
  何でだろう?
「部活って、陸上?」
  留美ちゃんが話を変えるように聞いてきた。
「……うん。マネージャーだったんだけど、今回の大会だけ人数不足でリレーの選手。」
  私は、そう二人に告げる。
「今回だけって?」
  不思議そうに訪ねてくるから。
「ん。女子部人数足りなくて、出ることになったの。」
  嫌々だけど。
「亜耶、足早いもんね。」
  留美ちゃんが思い出し納得したように言う。
「うん。そういやそうだったね。混合リレーやスウェーデンリレーに選ばれてたもんね。」
  姫依ちゃんも思い出したように言う。
  うん。そうだったね。気付いたときには、リレー枠に入ってた。

  そういや、あの時の体育祭時、お兄ちゃんに無理言って百メートル走に出てもらったっけ(遥さんも道連れで)……。
  あの二人、必要以上に人を引き付けていたっけ……。

  思いに耽っていた。
「亜耶。さっきから携帯鳴ってる。」
  留美ちゃんが小声で言ってきた。
「……あっ。」
  私は、慌てて鞄の中を探って携帯を開く。

  ディスプレイには“お兄ちゃん”と表示されていた。
  私は、それを手にして。
「ちょっと外すね。」
  一言言って、店の外に出た。


  外に出ると着信が切れて、直ぐにかかってきた。
「もしもし?」
  私は、そのまま通話ボタンを押して出た。
『もしもし、亜耶? 今何処に居るんだ? 迎えに行くから、場所教えて。』
  お兄ちゃんの優しい声。
「駅の近くにあるファミレス。前、お兄ちゃんと行った場所だよ。」
  私がそう言うと。
『あそこか……。今、近くに居るから準備しとけよ。』
  お兄ちゃんはそれだけ言って、通話を切った。
  
  私は店の中に戻り。
「ごめん。私この後、用事があるから、先に帰るね。」
  椅子に置いておいた鞄を掴んで、財布を取り出して、自分の分の支払いをテーブルに置く。
「じゃあ、また遊ぼうね。」
  それだけ言って店を出た。


  店を出ると入り口で由華さんが立って居た。
「亜耶ちゃん。久し振り~。」
  元気な声と笑顔に迎えられた。
「お久し振りです、由華おねえさん。」
  私も笑顔で返した。
  一瞬驚いた顔をして、ムギュっと抱き締められてた。
「何。この可愛い娘。」
  って、頭をワシャワシャとメチャクチャに掻き回された。
「由……お義姉ちゃん……。」
  由華さんにされるままで居る私。
  どう抵抗しようとしても、無理だと思いそのままで居た。
「由華。いい加減やめてやれよ。」
  苦笑交じりのお兄ちゃんの声がし。
「えーっ。もっといじりたい。」
  由華さんが、駄々をこねる。
「うん。わかってるけど、ここ店の入り口だからね、移動しよ。」
  お兄ちゃんの言葉に由華さんが
「はーい。」
  由華さんは、素直に頷いて、私の腕に絡み付く。
「行くよ、亜耶ちゃん」
  って、引っ張り出す。
  私は、目でお兄ちゃんに助けを求めたけど……。
  “ごめん、無理”って口パクで言ってきた。
  うっ……。
  今日も、由華さんに振り回されるのか……。



  心の中で溜め息をついた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

2番目の1番【完】

綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。 騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。 それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。 王女様には私は勝てない。 結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。 ※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです 自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。 批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました

白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
恋愛
早瀬 果歩はごく普通のOL。 あるとき、元カレに酷く振られて、1人でハワイへ傷心旅行をすることに。 そこで逢見 翔というパイロットと知り合った。 翔は果歩に素敵な時間をくれて、やがて2人は一夜を過ごす。 しかし翌朝、翔は果歩の前から消えてしまって……。 ********** ●早瀬 果歩(はやせ かほ) 25歳、OL 元カレに酷く振られた傷心旅行先のハワイで、翔と運命的に出会う。 ●逢見 翔(おうみ しょう) 28歳、パイロット 世界を飛び回るエリートパイロット。 ハワイへのフライト後、果歩と出会い、一夜を過ごすがその後、消えてしまう。 翌朝いなくなってしまったことには、なにか理由があるようで……? ●航(わたる) 1歳半 果歩と翔の息子。飛行機が好き。 ※表記年齢は初登場です ********** webコンテンツ大賞【恋愛小説大賞】にエントリー中です! 完結しました!

処理中です...