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高校生編と再婚約の条件

ゆかり嬢と対峙…遥

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 今日は、亜耶の高校の入学式。
 何故、知ってるかって?
 それは……雅斗と理事長直々に連絡があったんだよ。
 それと、亜耶が新入生代表だって最初言ってたんだが、なんか色々あって取り止めになったって言ってたなぁ。
 別に構わないけど(本当なら声も聞きたかったんだがな)……。
 変な虫が付かなくて良いことだ。
  
 亜耶に関してのイベントに参加しないわけ無いし(過去三回だけ行けなかった)……。
 さて、そろそろ準備するか。


 準備終えて、家を出る。
 久し振りの母校に胸を馳せる。
 ってのは、嘘。
 チョクチョク来てるんだよな。
 叔父がよく俺を呼び出すから……。
 式の前に少し顔を出しておくかな。

 俺は、その足で理事長室に向かった。



 コンコン。
 理事長室のドアをノックする。
「伯父さん、俺だけど。」
 そう声をかけると。
「遥か。入って来い。」
 ドア越しに聞こえる声。
「失礼します。」
 ドアを開けて、中に入る。
「久し振りだな。」
 伯父さんは、そう言って笑顔で迎えてくれた。
「って言っても、正月に会ってるよ。」
 ぶっきらぼうに答える俺。
「まぁな。あんなところであってる時は、気が気じゃないんだよ俺にとってはな。」
 苦笑混じりで答える伯父。伯父は、母親の弟だ。
「仕方ないでしょ。恒例なんだからさ。」
 俺も苦笑して答えた。
 親戚一同が介する場が苦手な伯父は、何時も挨拶を済ますと逃げるように去っていくからなぁ……。
「しかし、段々と姉さんに似てくるな、お前は。」
 って、どういう意味だ?
「母さんに?」
「そう。頭の回転は早いくせに一途で、何もできない。」
 うっ……。
 それを言われると痛い。
「まぁ、今日は鞠山亜耶愛しい娘の入学式なんだろ? 時間が許す限り見ていきな」
 苦笑を漏らし、全て把握済みだと言わんばかりの顔をする伯父を一睨みして、理事長室を出た。
  
 


 その足で、体育館に移動した。
 ここを卒業して八年。

 何も変わってねぇ……いや、変わったのかもしれない。
 俺自身が……。


  俺は、体育館の保護者席の一番後ろに座った。
 まだ、会場内はまばらだった。

 う~ん、っと延びをして始まるのを待つことにした。


 暫くして、上級生がザワザワと中に入ってきた。
 
 会場が保護者と在校生で、埋め尽くされて、式が始まる。

 新入生入場から始まる。
 俺は、後ろ姿の亜耶を探すが、見つからない。
 何て思っていたら、とんでもないことが耳に届いた。


 “今年の新入生代表は、金で買ったみたいだぞ。”

 何て声だ。
 ん?
 金を積んで代表を手に入れた?
 そう言えば、伯父は俺に頭を下げてたっけ……。

 “あぁ、そうらしい。最初に決まってた代表は、成績優秀な女の子だったそうだ。”

 って……。
 まさか……な。

 “そうそう、あの有名な鞠山財閥のお嬢様だったみたいだな。”

 おいおい、マジか……。
 本来亜耶がやるはずだった代表をお金で買ったって事か……。

 “金で買った方は、何て言ったっけ……。ほら、今業績をあげてる。”
 “あっ、細川……。”
 “そうそう。悪どい事するなぁ。”

 細川って、細川商事の事か?

 その言葉を片隅に置き、亜耶の入学式を祝おうと思った。



 式が終わり、新入生退場の言葉が聞こえた。
 おっし、気を取り直して亜耶を探すか。
 さっきは、変なのに気を取られて探せれなかったしな。
 クラスごとに出てくる生徒の中で、亜耶を探す。

 おっ、亜耶居た。
 亜耶が、俺の方を見ているのに気付いて、口をゆっくりと動かした。

『おめでとう』

 って……。
 少し動揺した彼女の顔が、直ぐに笑顔になった。
 ヤバイ……。
 写真に残したい。

 それほどまでの満面の笑みだったから……。


 式が終了し、会社に戻る為に校門を出た。
 出たところで携帯が震えた。
 俺は、うちポケットに入れていた携帯を取り出して出る。

「もしもし……。」
『もしもし、遥さん。今、よろしいでしょうか?』
 チッ……。
 出て、後悔する。
 細川のお嬢か……。
「で、何の用?」
 知らず知らずのうちに冷たい声になる。
『……あの……お昼、ご一緒にいかがと思いまして……。』
 しおらしく聞いてくる彼女に。
「悪いけど、今忙しいんで。」
 つけんどに答える。
『あの娘の入学式に来てて、忙しいなんて言い逃れは、出来ませんよ。』
 って……。
 何でばれてるんだ。
 何処に居るんだ。
 俺は、首を動かす。
 まさか、俺の事監視してるのか?

 俺は、辺りを見渡す。
 左右前方には居ないってことは、後ろか。
 俺が振り返ると彼女は、笑みを浮かべながら近付いてくる。

 俺は、電話を切った。
「遥さん。今日こそは、私に付き合ってもらいますからね。」
 ゆかり嬢が、俺の腕に自分の腕を絡ませてきた。
 彼女から香る甘ったるい臭いに気分悪くなる。
 ヤバ、この臭いダメだ。
 俺は、それを振り払い距離をとった。

「遥さん……。」
 彼女は、悲し気な目で俺を見てくる。
「だから、その呼び方辞めてくれるか。俺、その呼び方で許した覚えない!」
 前回言ったことを守らないなんて、いい度胸してる。
「だけど、私と遥さんは婚約者でしょ?」
 彼女の顔が歪みだす。
「誰と誰が、婚約者だって? 俺は、あなたと婚約した覚えありませんよ!」
 道の真ん中で言うことでは、無いと思うが、言わずにはいられなかった。
「あの娘に危害を加えてもいいの?」
 不適な笑みを浮かべる彼女。
 コイツ、何考えてるんだ?
 胡散臭げに彼女を見る。
 それこそ、社会から自分達を消してくれって言ってるものだ。
「どうぞ。彼女は、そんなに柔じゃない。その前に自分達が潰されることを前提にしてくださいね。彼女は、鞠山財閥の秘蔵っ子ですから、彼女に何かあれば、己に害が及ぶと思って行動してください」
 俺は、彼女の脅しに更に脅しをかけた。
 そう、前回の事で、俺に風当たりが強くなった。
 だが、今度亜耶の事を侮辱したら、細川商事への風当たりが強くなるのは明白だ。
「それから、新入生代表を金で買ったみたいですね。本来は、入試トップの子が読むはずですが、あなたの弟さんが優秀とはとても思えないのですが……。それを鞠山財閥の会長が知ったらどうなるのか。社長は温厚な人なので、沈黙するでしょうが……」
 そこまで言って、彼女の顔色が変わった。
 彼女は、そこまで深読みしてなかったみたいだ。
 自分が行った行為が、どれ程愚かなことなのかそしてどうなるか考えればわかる筈だが……。
 それに、弟の自尊心は傷つけられてるんじゃないか?
 そんな事も考え付かないような短絡な考えしかない女とは付き合うきもない。
「私は、ただ、遥さんの傍に……居たいだけで……。そこまで、思ってなくて……。私は、どうしたら……いいの?」
 彼女の頬に雫が溢れる。
 自分に酔ってるだけだな。
 自分が、中心じゃないと嫌だみたいな?
 ハァ、ヤダヤダ。
「俺に聞くな。自分が撒いた種だ。自分で何とかしろ! 俺を頼るな。俺は、自分の事で手一杯なんだよ」
 俺は、それだけ言って背を向けて、会社へと歩みを進めた。
  
 こんな時、亜耶を抱き締めれないなんてな……。
 癒しが、足りない。


 あの時。
 亜耶の母親が言っていた。
 これは、御大からの試練だって。
 だから、俺はこれを乗り越えて、彼女の隣で堂々と居たいと思う。
 それまでは、絶対に頑張るって決めてるんだ。
 そして認めてもらう。
 誰が、何と言おうと必ず亜耶の婚約者に戻るんだと……。

 そう心に決め込んでるんだ。




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