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中学生と婚約解消

尾行?……悠磨

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 義之の家からの帰り道。
 オレは、亜耶の事を考えながら歩いていた。

 亜耶……。
 オレは、どれだけ頑張れば君に近付くことができるんだ?
 目標は、あの人"高橋遥"を越えること!
 あの人の情報がもっと欲しい。
 何でもいいから……。
  
 少しでもいいから、君の傍に居たいんだ。


 そう思った矢先だった。
 顔を上げれば、目の前に高橋遥本人が居るではないか。
 オレは、気付かれないように跡を着けた。

 彼を追っ手着いた場所は、某有名ホテルだった。
 上を見上げれば、空高く延びる建物。
 太陽の日差しが、目にチカチカと入る。
 彼は、戸惑いもなく入り口を潜って行く。
 こんなところに何の用が……。
 そう思いながら、入るには忍びなくて狼狽えながら、一歩中に入り辺りを見渡す。
 ロビーで、綺麗な女の人とイケメン三人に囲まれてるあの人を見つける。
 ここからでは遠くて、会話が聞こえない。
 気付かれないように距離を詰めていくも結局、人目が気になり、断念する。

 よく見れば、四人とも同じような顔立ち。兄弟なのだろうと推測できる。
 ただ、立ち振舞いがとても優雅であるのはわかる。
 幼い頃からの躾が成せるものだろう。
 兄が言っていたことは、本当なのだと言うことだ。
 その御曹司が、一般の亜耶と婚約してるなんて、到底思えない。
 これは、何かの間違いじゃないかと思う。

 オレは、そう結論を出して踵を返した。


 しかし、あの人の周りには美形が多い。
 って、そこは考えても仕方ないか……。
 跡を着けて行ったにも関わらず、何も収穫はなかった。
 ただ、御曹司ってことだけが明白になっただけだった。


 誰か、あの人の事を知ってる人近くに居なかったか?
 考えろ……。

 あっ、居たよ。
 亜耶のお兄さん。
 あの人の親友だって、兄が言ってた。
 だけど、どうやって接触すればいいんだ?
 亜耶の家に押し掛けて聞くわけにもいかないし……。
 どうしたらいいんだ??

 オレは、頭を悩ませながら、家へと足を向けていた。

 ふと、視線を上げれば見知った後ろ姿が目に飛び込んできた。その隣には男性も居る。
 これは、チャンスかも。
 オレは、彼女の方に足早に近付き。
「亜耶」
 そう声を掛けた。
 彼女は、肩を魚籠つかせこちらを振り返り。
「あっ、悠磨くん。こんにちは」
 オレを確認してから、笑顔で返してくる。
 めちゃくちゃ可愛い。
「こんな所で何してるの?」
 亜耶が、不思議そうな顔で聞いてくる。
 まぁ、今居る場所が住宅街だから、そうなるよな。
「あぁ、義之ん所に行った帰りだよ」
 まぁ、嘘つく必要もないし、な。
「そうなんだ」
 納得してくれたっぽいけど……。オレは、隣に居る亜耶のお兄さんに目線を向けて。
「こんにちは」
 と、挨拶すれば。
「こんにちは」
 ニコニコして返してくれた。
「亜耶。俺、先に帰るな」
 って、亜耶の頭をポンポンして歩き出すお兄さん。
 オレもやりたい……。って違う。
 亜耶と二人っきりにしてもらえるのは嬉しいのだが、オレが用があるのはお兄さんの方だ。
「あの~」
 オレは、恐る恐る声を掛ける。
「俺に何か用か?」
 って、口許は笑ってるのだが、目元が鋭くて言葉に詰まる。
「少し……聞きたいことがあるのですが……」
 オレは意を決してそう口にすれば、不思議そうな顔をし。
「俺で答えれるのなら」
 と言ってくれて、でもオレが聞きたいことは、亜耶に聞いて欲しくないことで……。亜耶を見れば、キョトンとした顔でオレの事を見てて、どうしたら良いかわからずいた。
 オレが中々口にしないから、痺れを切らしたのか。
「亜耶。先に帰って勉強しな。わからないところが出たら後で教えてやるよ」
 お兄さんが、亜耶にそう告げてくれた。
「うん。じゃあ悠磨くん、明日塾でね」
 って、小さく手を振って歩き出す。 
 その仕草が、可愛くて仕方ない。
「うん。明日な」
 オレもそう答えて彼女の背中を見送った。




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