上 下
37 / 145
中学生と婚約解消

お兄ちゃんと②…亜耶

しおりを挟む

 店員さんの案内で席に着くと。
「亜耶。好きなの頼んで言いぞ」
 って、お兄ちゃんがニコニコしながら言う。
 うーん、っと……。
 メニューを開き、ニラメッコ。
 勉強で疲れたから、甘いものは外せない(ただ、食べたいだけなんだけど、ね)。
  うーんとうーんと……。
 シーフードピラフとシーザーサラダ、それから……。  
 あっ、これ、美味しそう。
 って、目に飛び込んできたのは、ガラスの器にバニラアイスの上下に沢山のイチゴが飾られたパフェ。
 でもな……、こんなに食べれないと思うし……。
「何を迷ってるんだ?」
 顔を上げれば、向かいに座るお兄ちゃんが私の百面相を楽しげに見ていた。
「このイチゴパフェをデザートとして食べたいけど、全部は無理かなって……」
 私は、メニューを指差してそう告げれば。
「パフェ以外に何を選んだんだ?」
 って聞いてきたから。
「シーフードピラフとシーザーサラダ」
 メニュー表を指差す。
「食べれそうになければ、俺が食べるから、安心して頼んで良いぞ」
 って、お兄ちゃんが言うから。
「いいの?」
 聞き返せば。
「当たり前だろ。食べたいものを食べな。注文は以上だな」
 お兄ちゃんが確認してきたから頷くと、テーブルの端にあるブザーを押した。
 ポンと音が鳴り、電光掲示板に番号が表示された。 
 それを見た店員さんが、私たちの方に来てくれて。
「ご注文をどうぞ」
「シーフードピラフとシーザーサラダ、イチゴパフェ。後カプチーノを」
 お兄ちゃんがスラスラと注文する。
「ご注文を繰り返させていただきます。シーフードピラフをお一つ、シーザーサラダをお一つ、イチゴパフェをお一つ、カプチーノをお一つですね。イチゴパフェとカプチーノはいつ頃お持ちいたしましょうか?」
「カプチーノは食事と一緒に、イチゴパフェは食後にお願いします」
 店員さんの質問にも淀み無く言うお兄ちゃん。
「注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「はい」
「しばらくお待ちください」
 そう言うと、立ち去っていった。

 店員さんが去ってから、さっきの遥さんの様子が可笑しかったことをお兄ちゃんに言えば。
「気になるのか?」
 と逆に聞き返されて、どう答えたら良いのかわからなくなって。
「少し……だけ……」
 と答えれば、ニコニコ顔になり。
「今日の遥は、お兄さんたちに呼び出しされてるんだよ」
 お兄ちゃんが何でもない風に言う。
 遥さんのお兄さん?
 そう言えば私、遥さんの家族の事何も知らない。
 そう思ったとたん。
「ねぇ、お兄ちゃん。遥さんどんな家庭で育ったの?」
 言葉にしていた。
「どんなって……。そんなの遥に直接聞けば良いだろうが」
 呆れた顔で言うお兄ちゃん。
 それはそうなんだろうけどさ、今更聞きにくいじゃんか。
「亜耶が聞けば、全部答えてくれると思うぞ」
 真顔で返される。
 えっと……、それは……。
「まだ分からないのか? 遥は、"亜耶に聞かれたことは、俺の口から話したいから、雅斗は喋るな"と釘を刺されてるんだ。疑問に思うことは、直接遥に聞け」
 意地悪な笑みを向けてくるお兄ちゃん。
 だけど、その言葉に納得もいく。
「わかった。今度会ったときにでも聞いてみる」
 そう告げれば。
「それが良いぞ」
 って、何時もの笑顔に戻り頷くお兄ちゃん。

「お待たせいたしました」
 店員さんが、注文の品を持ってやってきた。それをテーブルに並べる。
「あ、有難うございます」
 そう口にすれば、一瞬店員さんの動きが止まったかと思うと、またテキパキと動き出す。その顔は笑顔だった。
 目の前に座るお兄ちゃんは、クスクスと笑っていて、私は頬を膨らませる。
「なんで、お前は、そんなに素直なんだよ」
 って……。
 私が、素直……?
「顔に出てる」
 そんなに分かりやすいかなぁ?
 首を傾げると。
「そんなとこに惹かれたんだろうなぁ、遥は」
 う~ん、そうなんだろうか?
 腕を組考え込めば。
「ほら、腹減ってたんだろ? 食べな」
 お兄ちゃんに促され、手を合わせ。
「いただきます」
 とするものの熱いの得意じゃないから、先にサラダに
手を出す。
「……ったく、いつまでも子どもだな」
 って呆れた顔を見せるが、優しい眼差しのお兄ちゃん。

 そりゃあ、お兄ちゃんから見たらお子さまですよ。
 そんなお子さまが好きな人が居るんですからね。

 って口には出さずに目の前の物を口にした。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー

光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。 誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。 私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。 えぇ?! 私、仙人になれるの?! 異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。 それなら、仙人になりまーす。 だって、その方が楽しそうじゃない? 辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。 ケセラセラだ。 私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。 まぁ、何とかなるよ。 貴方のこと、忘れたりしないから 一緒に、生きていこう。 表紙はAIによる作成です。

タイムスリップビール~黒船来航、ビールで対抗~

ルッぱらかなえ
大衆娯楽
★作中で出来上がるビールは、物語完結時に実際に醸造する予定です これは読むビール、飲める物語 ーーーー 時は江戸。もしくは江戸によく似た時代。 「泥酔して、起きたらみんなちょんまげだった!!!」 黒船来航により世間が大きく揺らぐ中、ブルワー(ビール醸造家)である久我山直也がタイムスリップしてきた。 そんな直也が転がり込んだのは、100年以上の歴史を持つ酒蔵「柳や」の酒を扱う居酒屋。そこで絶対的な嗅覚とセンスを持ちながらも、杜氏になることを諦めた喜兵寿と出会う。 ひょんなことから、その時代にはまだ存在しなかったビールを醸造しなければならなくなった直也と喜兵寿。麦芽にホップにビール酵母。ないない尽くしの中で、ビールを造り上げることができるのか?! ビールという飲み物を通じ、歴史が、そして人の心が動く。これはお酒に魅せられ、お酒の力を信じた人たちのお話。

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

【欧米人名一覧・50音順】異世界恋愛、異世界ファンタジーの資料集

早奈恵
エッセイ・ノンフィクション
異世界小説を書く上で、色々集めた資料の保管庫です。 男女別、欧米人の人名一覧(50音順)を追加してます! 貴族の爵位、敬称、侍女とメイド、家令と執事と従僕、etc……。 瞳の色、髪の色、etc……。 自分用に集めた資料を公開して、皆さんにも役立ててもらおうかなと思っています。 コツコツと、まとめられたものから掲載するので段々増えていく予定です。 自分なりに調べた内容なので、もしかしたら間違いなどもあるかもしれませんが、よろしかったら活用してください。 *調べるにあたり、ウィキ様にも大分お世話になっております。ペコリ(o_ _)o))

皇帝(実の弟)から悪女になれと言われ、混乱しています!

魚谷
恋愛
片田舎の猟師だった王旬果《おうしゅんか》は 実は先帝の娘なのだと言われ、今上皇帝・は弟だと知らされる。 そしていざ都へ向かい、皇帝であり、腹違いの弟・瑛景《えいけい》と出会う。 そこで今の王朝が貴族の専横に苦しんでいることを知らされ、形の上では弟の妃になり、そして悪女となって現体制を破壊し、再生して欲しいと言われる。 そしてこの国を再生するにはまず、他の皇后候補をどうにかしないといけない訳で… そんな時に武泰風(ぶたいふう)と名乗る青年に出会う。 彼は狼の魁夷(かいい)で、どうやら旬果とも面識があるようで…?

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

→誰かに話したくなる面白い雑学

ノアキ光
エッセイ・ノンフィクション
(▶アプリ無しでも読めます。 目次の下から読めます) 見ていただきありがとうございます。 こちらは、雑学の本の内容を、自身で読みやすくまとめ、そこにネットで調べた情報を盛り込んだ内容となります。 驚きの雑学と、話のタネになる雑学の2種類です。 よろしくおねがいします。

あやかしが漫画家を目指すのはおかしいですか?

雪月花
キャラ文芸
売れない漫画家の田村佳祐。 彼が引っ越したマンションはあやかしが住まうとんでもマンションであった。 そこで出会ったのはあやかし『刑部姫』。 彼女は佳祐が描いた漫画を見て、一目でその面白さの虜になる。 「わらわもお主と同じ漫画家になるぞ!」 その一言と共にあやかしは、売れない漫画家と共に雑誌掲載への道を目指す。 原作は人間、漫画はあやかし。 二人の異なる種族による世間を騒がす漫画が今ここに始まる。 ※カクヨムとアルファポリスにて掲載しております。

処理中です...