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中学生と婚約解消
亜耶の微妙な変化…遥
しおりを挟む翌朝。
朝から、バタバタと騒がしい音がして、目が覚めた。
俺、一人暮らしだった筈……。
そう思いながら辺りを見渡せば、自分の部屋ではなかった。
ん?
あぁ、昨日は鞠山家に泊まったんだッけか……。
「ファ~」
欠伸一つし、押し入れに入ってるボックスの中にある服を引っ張り出す。
それに着替えて部屋を出た。
「おはようございます」
俺はそう言いながら、リビングに入る。
「おはよう、遥くん」
新聞を読んでいたみたいで、紙面から一瞬だけこちらに顔を向け、直ぐに戻った、亜耶の父親。
「二日連続で、亜耶を送ってくれてありがとな」
って、淡々とお礼を述べる父親に。
「気にしないでください。フィアンセとして当然の事をしたまでですから……」
思ってることをそのまま口にする。
「それでもさ、毎回って訳にはいかないだろうが」
「そうですが……」
出張で居ない時だってあるからなぁ。
「まぁ、遥くんの想いが早く亜耶に届くと良いんだがな」
苦笑しながら言われる言葉は、俺の胸にグサリと突き刺さる。
「善処しましす」
俺はそう告げる。
「まぁ、焦らずにな。私は、仕事だから行くが、ゆっくりしてきなさい」
亜耶の父親はそう言ってソファーから立ち上がると、玄関の方に足を向けた。
「遥さん。コーヒー飲む?」
亜耶の母親が、声を掛けてきた。
「はい、頂きます」
そう俺が言葉を返すと、俺専用のコーヒーカップを持って現れる。
「朝御飯は、亜耶と一緒でよかったかしら」
と訪ねられ。
「ええ。亜耶と一緒にお願いします」
そう返事を返す。
「遥さんも大変ですよね。お家の事も在るのに、亜耶に振り回されて……」
申し訳なさそうに言う母親に対して。
「家の事は、大丈夫ですよ。亜耶に対しては、自分が好きでやってることですから気にしないでください」
自分の気持ちを素のまま口にする。
「なら良いのだけど……。辛くなったら、亜耶の事は気にしなくても良いわよ。逆に寂しくなって、遥さんの事を気にしだすと思うし……」
って、茶目っ気たっぷりで言う。
それは一理あるかも……。
少し、亜耶から距離を取るのも一つの手かもしれないが、俺が我慢できそうにない。
「亜耶が起きてくるまで、寛いでて」
クスクス笑いながらリビングを出ていく母親。
俺は、淹れてもらったコーヒーを啜りながら、ソファーに凭れた。
暫くして。
「おはようございま~す」
って、元気な声で亜耶がリビングに入ってきた。
俺は、笑みを浮かべながら。
「おはよう亜耶」
って振り向き様に答えると、驚愕してる亜耶の顔が目に飛び込んでくる。
「な、何で、遥さんが居るの?」
って、ほんと元気だ。
「昨日、添い寝してやっただろう」
嘘だけど。
そう言った時のオタオタする亜耶が可愛くて、ついからかってしまう。
「おはよう。どうしたの?そんな所に突っ立ってないで、座ったらどう」
との声がし。
「な、何で朝から遥さんが居るの?」
絶叫に似た声が上がるが。
「何言ってるのよ。二日続けて、遥さんに背負って帰ってもらったのはどなたですか?一昨日よりも昨日の方が遅くなったから、泊まってもらったのよ」
冷静に対処する母親に。
「えっ、だって、添い寝って……」
あたふたしながら小声で言う亜耶に。
「そんな事、遥さんはしてないわよ。あなたをベッドに寝かせるとお風呂に入って、何時もの部屋で寝てたからね」
って、クスクス笑う母親。
あ~あ、からかったのバレた。
亜耶が頬を膨らまし、俺を睨み付けて。
「も~遥さ~ん!!」
そう言ったと同時に俺のところに来たと思いきや、背中をバシバシと叩き出す。
「あはは…。ごめん……」
って謝ってはみたものの叩くのをやめない亜耶。
「亜耶、その辺にしておきなさい。で、お礼は言ったの?」
母親に咎められて、シュンとなりながらも、目だけは俺を睨んだままだ。
「遥さん。有難うございます」
不本意そうに言う亜耶。
そんな亜耶の頭を撫で。
「ん?気にする事は無い。亜耶は、俺のフィアンセだからな。これぐらい造作もない」
そう口にすれば、口を余計に尖らし不機嫌を装い出す。
何か、考え事か?表情が可笑しい。何時もとどこか違う感じがする。
「亜耶、何固まってるの?朝御飯食べるでしょ?」
母親の声に我に返ったのか。
「えっ、あ、うん。食べる」
慌てて返事を返している。
それをクスクス声を発てずに笑い見ていた。
「遥さんも亜耶と一緒に食べてくださいね
」
って、ニコニコしながら言ってくる。
「お言葉に甘えさせていただきます」
そう言葉にし、ソファーから立ち上がり亜耶の背に手をやるとダイニングまで誘導する(逃げられないようにだが)。
この時、亜耶が動揺してるなんて、気付きもしなかった。
ダイニングテーブルに亜耶は定位置に座る。俺は真向かいに座った。
二人分の朝食がテーブルに並ぶ。
純和風の朝食。
久し振りの叔母さんの手料理。
「頂きます」
食卓に全て並び終えると、二人で挨拶をし食べだす。
真っ正面の亜耶の様子が少し可笑しいと感じ、声を掛けることにした。
「亜耶、亜耶……」
何度呼んでも、一向にこっちを見ることはなく、何か考えてる風にも見える。顔を覗き込むようにして。
「亜耶、亜耶」
声をかければ、やっとの事で顔を上げた亜耶。だが。
「わっ!」
驚いたように仰け反るから、心臓がチクリと痛んだ。
拒絶されてるのか?
そう思ったら、悲しくなったがそれに気付かぬ振りをし心配気に亜耶を見つめる。
「亜耶。さっきから呼んでるのに、中々返事しないから、心配した」
言葉にすれば、戸惑った顔をする亜耶。
これは、どう対処して良いか俺には分からないから、話題を変えることに。
「亜耶。昨日さ、勉強で解らないところがあるって言 ってただろ?午前中なら勉強見てやれるから、ご飯食べたらやろうか」
亜耶は、俺の提案に頷くだけだった。
その後、亜耶がジッと俺の事を見てくるから。
「亜耶? 俺の顔に何かついてるのか?」
俺の言葉に、慌てて首を横に振る。
「見られてると、食べにくいんだが……」
亜耶に見られてると思えば、恥ずかしくもなる。好きな娘に見られてるんだからな。
「ごめんなさい…」
亜耶はそう言うと、無言で食べだした。
朝食を済ませ、亜耶の部屋に移動する。
「……で、何処がわからないんだ?」
俺が聞けば、数学の教科書を出してきて指を指す。
「懐かしいなぁ……。この問題は、前ページに載っている公式を利用して解けば良いんだ」
俺が言えば、前ページの公式をノートに写し出す。それに当て嵌めながら解いていく亜耶。
「やっと解けた。ありがとう」
ずっと解けずに居たのだろう。亜耶が、満面の笑みで言ってくる。
「よかったな。後はよかったのか?」
改めて聞けば、亜耶が呆然としていて驚いたが。
「亜耶?」
名前を呼べば、我に返り慌てて。
「後、後これも……」
思い出したかにように聞いてくる。
そんな亜耶が、可愛くてしかたがない。
ある程度の疑問が解決したころ。
「亜耶。高校、何処に行くんだ?」
って聞けば。
「ん?一応推薦は貰えてて、公立の清陵学園を受けるつもりだよ」
って、問題集を解きながら言う。
清陵か……。
「そっか。あそこは良いよ。進学するにも就職するにも最適な場所だ」
俺の母校でもあるな。
「推薦が決まってるなら、面接の受け答えをしっかり練習しておくと良いぞ」
まぁ、伯父の学校だし落ちることはないだろうけど……。
「例えば?」
亜耶が俺に振り向き聞いてきた。
「う~ん、そうだなぁ。受験した動機とか趣味、興味のある教科、入ってからやってみたいこととか……。自分なりの答えを見つけとくと良いぞ」
何気にアドバイスしてる俺って……。
亜耶を見れば、何と無く納得してる感じだ。
「まぁ、亜耶なら大丈夫だろう」
俺はそう言いながら亜耶の頭を撫でた。
ピピッ、ピピッ……。
携帯にセットしていた電子アラームが聞こえてきた。
あ~あ、タイムリミット。
もう少し、亜耶と居たかったが仕方がないか……。
「ごめん、亜耶。タイムリミットだ」
俺はそう告げると不思議そうな顔をする。
「この後、仕事なんだ。頑張れるように充電させてもらっても良いか?」
俺は、珍しく亜耶に問た。
「う…うん、いいよ」
と、ぎこちない返事をもらい。
「ありがとう」
とお礼を言って、後ろからフワリと抱き締め、亜耶の肩にを額を載せる。
あ~ぁ、もう離れないといけないだなんて、寂しすぎる。
兄貴達に呼ばれてなければ、もっと堪能できたのに……。
仕事と言うう、見合いになんて行きたくない。
「じゃあ、受験頑張りなよ」
俺は、亜耶の耳元でそう言葉にし、ゆっくりと腕をほどき部屋を出た。
亜耶。
俺の大切な娘。
お前は、俺の事を想ってくれてないのは分かってる。
だが、手放せないんだ。
あの時からずっと、変わらない。
亜耶……。
君自信を愛している。
階段を降りて靴を履くと、鞠山家を後にした。
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