上 下
5 / 145
中学生と婚約解消

出会い…遥

しおりを挟む

 俺は、高橋遥。
 今日まで残業と接待の日々で、疲れが一向にとれずにいた。
 この疲れをとるには、愛し(俗に言うフィアンセ)に会いに行くしかない。
 ということで、二週間ぶりの休日を彼女を目の保養にしようと朝から、準備して家を飛び出した。


 彼女に会ったのは、高校二年生の夏頃。
 偶々、親友の雅斗に声をかけられて(テスト勉強と言う面倒な名目だったが)、家に行った時だった。
 勉強に身が入らずに、雅斗の部屋を物色してた時だった。
「遊んで、お兄ちゃん。」
 いきなり部屋の戸が開き、子ども特有の高い声が、室内に響いた。
 俺は思わず戸の方に目を向けた。
 そこには、黒髪を腰まで伸ばし、目のクリクリした可愛い女の子が立っていた。
「何? 雅斗の妹? 可愛い。」
 俺は、誰よりも先にそう口にしていた。
 えっ、何でこんなに気になるんだ?
 目が離せずに見ていれば、何時もと違う雰囲気だったためか、オロオロとし段々と涙目になってきている。
 あ~、もう可愛すぎ。
「大丈夫だよ。」
 って言って、抱き締めてあげたい。
 そんな妄想に囚われてる時に。
「後で遊んでやるから、向こうで待っててくれな。」
 雅斗の優しい声が耳に聞こえてきた。
 俺は驚いて雅斗を凝視した(他の面々も同じ顔だ)。声音だけではなく、目許も何処と無く優しく見える。
 普段学校で見るのは淡々とした冷たい(特に女子)対応なのに、妹にはそんな態度では無いとは、これは一体なんだ。
 これは所謂シスコンってヤツか?
 俺が雅斗に目を向けてる間に女の子は居なくなってた。
 怪訝な顔で見る俺に対して。
「何だ? って言うか遥、勉強しないのか?」
 不思議そうな顔をして聞いてくる雅斗。
「しなくても大丈夫。それより、今の妹だよな?」
 俺は疑問に思ったことを口にする。
「そうだが……。」
「年、離れてないか? どう見ても小学生だよなぁ。」
「ん? あぁ、十離れてるからな。今、小学一年生。」
 俺の質問にも淡々と答える雅斗。
 へぇ~、小学一年生ねぇ。
 将来楽しみだな。嫌、違うよ今から囲っておかないと捕られるだろう。
 そうなれば、俺は……。
 って、何考えてるんだ俺。
 だけど、あの姿が目に焼き付いて仕方ない。
 彼女の笑顔が見たいと思ってしまうくらい、頭に残ってしまった。

 それから、毎日のように鞠山家に通った。

 亜耶の学校行事には全て参加し。
「亜耶からの伝言、 "来ないでくれ" だって」
 彼女が迷惑がってる事を雅斗から聞いていても迷わず行ってしまう。
 その時その時の表情を写真に納めたいと思うのは当然であろう(笑顔もだが悔しそうな顔も見たいと思うんだから仕方ないだろう)。
 疎まれても、俺の癒しとなってるので会わずにはいられない。
 一日会わないだけで、どうにかなってしまいそうな程だ。
 社会人になってからは、中々会えずにやっと時間ができても、最近では部活で忙しい亜耶に会えずすれ違ってばかりだ。


 だから、俺は鞠山会長(亜耶の祖父)に直接会い、亜耶のフィアンセとして名乗りを上げていたのだ。
 そして、ご両親には。
「亜耶が、高校を卒業したら、嫁に下さい。」
 と前以て伝えていた。

 俺の想いは、亜耶にしか向かないと自負しているのだから……。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

心の声が聞こえる私は、婚約者から嫌われていることを知っている。

木山楽斗
恋愛
人の心の声が聞こえるカルミアは、婚約者が自分のことを嫌っていることを知っていた。 そんな婚約者といつまでも一緒にいるつもりはない。そう思っていたカルミアは、彼といつか婚約破棄すると決めていた。 ある時、カルミアは婚約者が浮気していることを心の声によって知った。 そこで、カルミアは、友人のロウィードに協力してもらい、浮気の証拠を集めて、婚約者に突きつけたのである。 こうして、カルミアは婚約破棄して、自分を嫌っている婚約者から解放されるのだった。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。

あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。 ※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。  元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。  破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。  だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。  初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――? 「私は彼女の代わりなの――? それとも――」  昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。 ※全13話(1話を2〜4分割して投稿)

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

処理中です...