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 彼が堂々と宣言した後、教室までの道のりは、生暖かい視線と嫉妬や妬みの入り交じった視線が、私に突き刺さって来た。

 私は何もしていないのにこれは、居たたまれない。

 教室に着けば、クラスメートからの好奇な視線が押し寄せてくる。
 自分の席について、やっと気が抜けた。
 彼の席の周りは人だかりが出来ていて、此方に近付くことは容易ではなさそうだ。
 私は、そのまま自分の机に突っ伏した。

「おはよう、珠稀。朝から凄い噂だよ。」
 そう言ってきたのは、石村星香。入学式後のレクで同じ班になり意気投合。それから、仲良くさせて貰ってる。大学生の彼氏が居る。
「おはよう、星香。何時も早いね。」
 挨拶だけ返す。
 星香は、教室から私たちの事を見ていたのだろう。
 そして、まだあっちこっちで噂されている、私たちの事。どうしたら沈静するのやら、頭が痛いところではある。
「おはよう。星香ちゃん、珠稀ちゃん。何か、珠稀ちゃんの事があっちこっちで噂されてるよ。昨日、あんなに頑張って消したのに、再燃してる。って言うか拠り悪化してる。」
 元気な声で掛けてきたのは、山崎瑞歩。この子も星香と同じで、レクの時から仲良くさせてもらってる。
「珠稀からは言いづらいだろうから、私から話してあげる。」
 星香が瑞歩に説明を勝手出てくれて、ありがたかった。

 話を聞き終えた瑞歩が。
「ほぇ~。それ、直接見たかった。」
 と好奇心丸出しで口にする。
 あんな場面、二度とゴメンだよ。
 囚人環境で、宜しくないし……。
 それに恥ずかしすぎる。
 思い出したら、またもや顔が熱を持ち始めて、机の上が冷たくて気持ちいいなぁ、何て思ってしまう。
「あのときの珠稀は、見てられなかった。早く助け出してあげたかった。」  
 星香が私の頭を撫でながら、悔しそうに言う。
「ううん。そう思ってくれた事が、私は嬉しい。」
 私は、そう返す事しか出来なかった。


 その後も授業の間の短い休憩時間でさえ、私を見に教室に押し掛けてくる女性徒にうんざりしながら、文化祭が近い為に残って準備を進めていた。

 気付けば私が一人残っているだけで、皆は帰ったか、部活に行ってるのだろう。
 窓の外からは、部活の掛け声が聞こえてくる。
 切りの良い所まで進めて、少し休憩をしようと顔を挙げるとそこには見知らぬ美少女が居た。
 リボンの色が緑だから、三年生だろうと思われる。
 うちの学校は、ネクタイとリボンの色で学年を区別している(一年は赤、二年は青、三年は緑だ)。

「あんたが、長戸珠稀?」
 と不躾に聞いてきた。
 教室内は、私と彼女だけだから、ある程度予想付いたのだろう。
 彼女は、私を観察するように鋭い視線を向けながら頭の天辺から爪先まで何度も繰り返して見てくる。
 その行為に、不信感をつのらせていると。
「こっちが聞いてるのに無視するな。あんたが、長戸珠稀かって聞いてるだろ?」
 私が何も答えずに居たら、苛立った声で聞いてきた。
「人の名前を聞く前に自分の名前を名乗るのが常識だと思いますが、先輩。」
 若干声が上ずっていたが、何とか返せた。
 常識無い人と話す必要無いと思うんです、私は。
「私の事はどうだって良いの。その内分かると思うから。で、こんな地味子の何処に惹かれたんだ? 私の方が、断然に勝っているだろうが。快翔のヤツ見る目がないなぁ。」
 私を貶しながら、自画自賛している。
 しかも彼の事を名前で呼んでるのだから、相当親しいのだろう。
「なぁ、快翔と別れてくれないか?」
 唐突な言葉に呆然しつつ、そもそも別れるも何も、私たちまだ付き合っても居ないんだけど……。
「さもないと、どうなっても知らないから。今日は忠告しに来たんだ。次、二人が一緒の所を見たら、何するか分からないからな。」
 言いたい事だけを言って去って行った彼女。
 呆然と見送りながら、
 この場合はどうしたら良いのだろう?
 一方的に敵対視されても困るのに……。
 それに今の状況は、彼からの一方的なアプローチであって、私は返事を返していないのが現状だ。

 どう打開すれば良いのか、分からない。


 私の平穏な日常を返して欲しいよ。






  



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