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46話 死にたかった
しおりを挟む目が覚めると見知らぬ天井だった。
私は、一体何処に居るんだろう?
ゆっくりと視線を動かすと、点滴の袋に繋がれてる管が、自分の腕に刺さっている。
えーっと……。
お祖父様に反省室に入れられて、数日間飲まず食わずで居て、目が覚めたら、眩暈がしてそのまま意識が飛んだのか……。
更に視線を動かすと、成瀬が目を閉じて居た。
何で居るの?
ジッと見てると視線に気付いたのか、目を開けて此方を見てくる。
「幸矢!!」
と、部屋に似つかわしくない声で呼ばれる。
「成瀬くん、ここは?」
私が質問すれば。
「病院だ。」
って、簡潔に答えられたのだが、今にも泣き出しそうな顔をして此方を見ている。
何で、そんな顔をしてるんだろう?
不思議に思いながら。
「何で、居るの?」
と声を掛けると。
「何でって……。お前が倒れたって母親から連絡が来て、慌ててお前の母親と一緒に飛んできたんだよ。」
心配そうな顔をして私を見てくる。
母さんと?
「でも、よかった……。」
今度はホッとしたような顔をしている。
そして、簡易テーブルの上にあるナースコールを押していた。
成瀬くんが、ナースとのやり取りをして5分後位で担当医(?)が来て、二・三問の質問に答えて聴診器で確認して部屋を出て行く。
その間、成瀬くんは外に出て行った。
担当医と入れ替わりに成瀬くんが入って来た。その後ろに母さんの姿も会った。
「母さん、御免なさい。」
私は、頭を下げる。
母さんに心配掛けてしまったのが、悔やまれる。
「何で、謝るの幸矢。謝るのは、私の方よ。幸矢にばかり面倒なことを押し付けて御免なさい。」
って、母さんが頭を下げてきたのだ。
何で母さんが謝るの?
母さんは何も悪くないのに……。
「私が病弱のせいで、兄弟を生んであげられないが為に、こんな事になってるんだし。」
母さんの悲しい顔。
だって、それは仕方ない事だし、今更だと思うんだよね。
だけど、そんな悲しい顔をさせてるのが自分だと思うと自分が不甲斐なく思う。
「あのまま、死んだ方が良かったかも……。」
ポロリと口から出た言葉だった。
それを拾った成瀬くんが。
「馬鹿か!」
大声を出す。
「死んだ方が良かったなんて言うな!」
そう言いながら、私を抱き締める。
「そう言うけど、私、、また男に戻らないといけないのなら、死んだって構わなかったよ。」
もともとその覚悟で反省室に入ったんだから……。
「一体何があったんだ?」
成瀬くんが優しい声音で聞いてきた。
「幸矢。話してくれない。私たちにも解るように。」
母さんも、経緯を聞きたそうに口を開いた。
私は、静かに頷いた。
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