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35話 バレタ
しおりを挟む夏休みに入り、部活の合間に時間を見つけてバイトをするようになった。
母に負担をかけたくなくて……。
そんなある日。
部活もバイトのない日。
母と二人で家でのんびりと過ごしていた。
バーンッ!!
突然玄関のドアが勢い良く開いた。
見れば、黒ずくめの男が三人、土足のまま中に入って来た。
母は、動けずにビクビクしている。
私が、母を守らないと。
私は、彼らに向かって睨み付けると。
「何ですか? あなた方は。誰の許可を得て土足で踏み込んできたんですか?」
母を守るように前に立った。
すると。
「綾小路幸矢だな」
一人が、確認するように聞いてきた。
「そうですけど、あなた達は一体……。」
怪しげに彼らを見れば。
「お前の父親から頼まれて来たんだ。お前を連れ戻せと。」
父さんに……。
今更、何の用だろう。
それより、何で此処がバレたのだろう?
「私だけで良いんですね。だったら、母には手荒なことをしないでください。じゃなければ、私は行きません。」
私は、彼らに懇願するように言う。
「わかった。お前の母親には手を出さない。」
彼らのリーダー格が頷いた。
「幸矢……。」
母の弱々しい声が背後から聞こえてくる。
私は、振り返ると母の手をとって。
「お母さん、大丈夫だよ。私の事は良いから、自分の体調を治して……ね。」
母に笑顔でそう告げた。
心配させないように……。
「用があるのは、私だけなんですよね。」
再度威圧感たっぷり含んで聞けば。
「……あぁ。」
彼らは怯みながら一言答えた。
「わかりました。行きます。母には、絶対に手を出さないでください。」
私は、有無を言わせないように彼らと共に外に出た。
「幸矢……。」
母の弱々しい声が背後から聞こえてくる。
私は、振り向く事はしなかった。
母さん、ありがとう。
私、あの家に戻ります。
母さんの為にも……。
私は、黒塗りに車に乗せられた。
家に着くまでに時間がかかる。
私は、おもむろに携帯を取りだし。
ある人に電話を掛けた。
『はい…』
怪訝そうな彼の声。
「成瀬くん。今までありがとう、さようなら……。」
私はそれだけ言うと電話を切った。
その後、折り返しに電話がかかってくる。
私は、電源を落とした。
これから、起こりうることに向き合う為に……。
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