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しおりを挟む「思い出したのは良いが、どういう経緯で許嫁になったんだろうな……。」
自分で言うのは何だが、男勝りな私のどこに惚れ込んだんだって、思うんだが……。
「さぁな。って、お前パーティーで会ってると向こうは言ってたが、思い出せないのか?」
和成が、あの時の言葉を思い出したかの様に言う。
「それなんだが……、何度も思い出そうとしてるんだけど、パーティーって無理矢理参加で自分から望んで出てないから、いまいち印象ないんだよなぁ。それに、総代の思う男性に次から次へと顔合わせさせられるから、顔なんていちいち覚えて要られないんだよ。」
一回のパーティーで一人二人ならまだしも、十人から二十人弱に会わされ、何十回とのパーティー会えば、誰だって嫌になるだろう。
総代にとって、私は道具としか見られてないし、向こうは総代に気に入られようと私を誉めちぎってくるだけで、本質を見ようとはしない。だから、直ぐにその場から退場させていただくことになるんだけどね。その中には、強者も居るのは確かだけど……。一度会っただけで、顔まで覚えるなんて特技なんて、持ち合わせてないので(会社関係は別)ね。
まぁね、名家に生まれてしまったから、政略結婚しかできないのもわかってるんだけどさ……やっぱり、好きになったひとと結婚したいって思ってしまうわけで……。
「全然記憶に残ってないのよね。どうしたら良いのやら……。」
溜め息を漏らす。
本当に頭が痛くなる案件だわ。
「そういや、帰り際に社長に声をかけられて、言われたんだが……。」
言いにくそうにする和成。
何となくだが、わかった気がする。
「何よ? 勿体振らないで言いなさいよ!」
催促する。
「暫く休めってさ。有給休暇の消費も踏まえて、二週間。」
はぁ?
「え、冗談だよね。」
聞き返すが。
「冗談じゃない。オレも社長に聞き返したからな。」
マジか~。
「今抱えてるプロジェクトはどうするのさ?」
私が聞くと。
「オレに一任された。まぁ、元々がオレの企画だったしな。というわけで、明日から二週間休みな。」
和成から、強制休暇宣言された。
「ハァー。二週間家で何をしろと……。」
そう愚痴を溢せば。
「プチ旅行でも行ってこれば。」
和成の提案に暫く旅行もしてなかったことに気付き。
「そう言うなら、明日の早朝にでも旅立つわ。ということで、お暇します。」
それだけ言って席を立つ。
誘ってきたのは和成だし、支払いは任せても良いと思ったのだが。
「お前なぁ、自分の分ぐらい払えよ。」
と言い出した。
あぁ、こいつ昔っからそうだった。
余分な金を出すの何時も渋るんだよなぁ。
「和成の方が多く貰ってるんだから、それぐらい良いでしょ。」
そう返したら。
「お前さぁ、自分の立場わかってて言ってるのか?」
立場……ねぇ。
「私、親に一千も貰ってないので、一ヶ月の生活ギリギリです。」
嘘は付いてない。
付く必要もない。
大学卒業までの生活資金は出してもらえたが、その後は一千も貰ってないっていうか、自分から断った。
その言葉に和成が嘘だろって顔をする。
「マジでか? お嬢様なのに?」
驚いた顔のままで言う和成。
「その顔、面白いよ。会社ですれば、もっと下に慕われるかもね……。」
何て冗談めかして言えば、苦笑する和成。
「まぁ、あのマンションは予め買ってあったみたいだから、家賃代はないけど、その他もろもろは自分の給料からのやりくりだからね。ある程度の自重はしておかないと……。」
自分で稼いで生活する大変さを身を持って体験してるんだよな。
「はぁ~。わかった。今日はオレから誘ったんだし出しておく。」
溜め息を吐きつつも、そう言う和成に。
「ありがとう。ごちそうになります。」
笑顔で返した。
そんな時。
「なぁ。何で、昨日と違う男と居るんだ!」
と声が聞こえて、その方を見れば会いたくもない問題の男が居たのだ。
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