好きだから傍に居たい

麻沙綺

文字の大きさ
上 下
169 / 180

帰る場所…亜耶

しおりを挟む


 一端家に戻った私たち。

 自分の部屋に入り、学校で必要な物は通学鞄に詰め込んで、クローゼットからスーツケースを出して、ファスナーを悪戦苦闘しながら全開に開けて、着替えなどを詰め込んでいった。

 テキパキとは行かないが、必要な物lを何とか詰め込み終えた時。
 コンコン。
「亜耶、準備できた?」
 ノックと共に遥さんの声が聞こえてきた。
「うん、出来たよ。」
 そう返事を返すと。
「中に入るぞ。」
 と、ドアを開けて中に入って来た。
 こういう配慮、遥さんらしいと思う。
「この二つか?」
 遥さんが、スーツケースと通学鞄を指して確認するよう聞いてくる。
「うん。」
 私は頷く。
「運ぶな。少し休憩してから出るからな。」
「わかった。」
 私の返事を聞くと荷物を手にして部屋を出て行く。
 私は、改めて部屋を見渡してキッチンに移動した。

 そういや、冷蔵庫の物って何が残っていたっけ……。
 確認の為にドアを開けた。
 けど中身は、封の開いていない飲料のみで、他の物が何も入ってい無かった。
 あれ? 入院前は色々と入ってた筈だけど……。
 不思議に思っていたら。
「何やってるんだ?」
 遥さんの声にドキッと驚きながら。
「冷蔵庫の中、空っぽ。」
 と口にしたら。
「あぁ、それなら俺が片付けた。」
 平然な態度で言う。
 片付けた? って、一体どうやって?
 疑問に思ってると。
「冷凍かけれる物は冷凍にして、出来ないのは保冷袋に居れてもって行く事になったんだよ。お義母さんに相談したら、持ってきて良いって言ってくれたからさ。飲み物は流石に無理だから、流しに捨てたがな。」
 遥さんが説明してくれた。
 そうか、なら安心かな。
「ほら、ソファーに座ってな。今、紅茶淹れてやるから。」
 遥さんに促されて、リビングのソファーに移動する。


 ソファーに腰を下ろして、何だかホッとしている自分が居ておかしくなった。
 たった数日居なかっただけなのに、こんなに居心地善い場所だったんだと再認識した。
 ここに住むようになってから二週間弱経っただけなのにこの場所が自分の帰る場所なんだて改めて認識している事に自分でも驚いてしまう。
 慣れなんだろうが、本当に最近は色々有り過ぎて二週間しか住んでいないとは思えなくて、違和感なく過ごしてきたんだと思える。
「亜耶、どうしたんだ?」
 遥さんがグラスを手に戻って来て、私の様子を不思議そうな顔をして見ている。
「あのね。ここが、私の帰る場所なんだって、改めて感じてたの。」
 そう言葉にすれば、一瞬だけ驚いた顔をし、笑みを深めた遥さん。
「あぁ、そうだ。亜耶が帰って来る場所はここだ。俺と住むな。何でそう思ったんだ?」
 遥さんからグラスを受けとり、一口飲んでから。
「ソファーに座った時にね、ほっとしたの。そしたら、自分の居場所はここだって認識したの。」
 私の返答に遥さんが、嬉しそうな顔をする。
「そうか。ここは、亜耶にとっても居心地が良い場所になってるんだな。まぁ、俺も何だがな。」
 私の隣に座り、頭を撫でてくる遥さん。
 遥さんもこの空間を居心地が良いと思ってるのなら、それを維持していけるように努力しようと改めて決意したのだった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

【完結】やさしい嘘のその先に

鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。 妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。 ※30,000字程度で完結します。 (執筆期間:2022/05/03〜05/24) ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ 2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます! ✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼ --------------------- ○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。  (作品シェア以外での無断転載など固くお断りします) ○雪さま (Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21 (pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274 ---------------------

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

あなたの妻はもう辞めます

hana
恋愛
感情希薄な公爵令嬢レイは、同じ公爵家であるアーサーと結婚をした。しかしアーサーは男爵令嬢ロザーナを家に連れ込み、堂々と不倫をする。

処理中です...