好きだから傍に居たい

麻沙綺

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事件? 事故? 2…ユキ

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「亜耶!!」
 高橋先生の切羽詰まった声が廊下に響き渡る。
 亜耶ちゃんの側に行くと意識の確認をしだす。
 あたしもさっき確認したが、呼吸は止まってなかったから意識だけ飛んだみたい。
「大丈夫だ……。」
 ホッとしたような顔になり、あたしの方に向き直って。
「……で、何があった?」
 少し眉間に皺を寄せて、低い声が廊下に響く。
「この階段を降りようとした亜耶ちゃんの背中を、湯川くんが押さえている女子生徒が押してそのまま落ちたんです。その前から殺気の混ざった視線が亜耶ちゃんに付きまとっていて、あたしは心配で亜耶ちゃんを追ってたんです。」
 私は見たままの事、そして学食であった事を告げる。
 すると、高橋先生の背後からどす黒い何かが漂ってくる。その場の温度までが下がった気がします。
 さっきホッとして緩んだ緊張感がこんどは、訳が解らない悪寒がして体が微妙に振るえています。
 怖いです、ただそれだけなんですが、周りを見れば同じように腕を擦ってる子が何人も居たので、あたしだけじゃないんだとホッとします。
 高橋先生は、その怒気を纏ったまま女子生徒の方を向きます。

「お前が亜耶を突き落としたのか!!」
 高橋先生の低い怒声が廊下に響き渡る。
  
 物凄く怖いです。膝がガクガクいってます。

 あたしは、先生の後ろつまり背後に居るので顔を見ることはできませんが、周囲の生徒の顔が強ばってるのを見れば、相当怖い顔をしてるのだと思われます。
「ち、ちが…う……。あたし……じゃない。ただ……あの人……に……頼まれた……だけ……あたし……じゃない……。」
 彼女は矛盾を口にして居ることに気付いていないようだ。
 そんな中一人口を開いた。
「高橋先生。こいつは、姉の従僕で、多分姉に言われて、鞠山さんを……。」
 こんな冷気漂う中での発言する細川は、勇者じゃないだろうか、内容は別として……。
「……ゆかり嬢の……。透、そいつを理事長室に。細川、お前も一緒に行け。」
 高橋先生の指示で二人は女子生徒を担ぐように動き出す。

 先生には、 "あの人" が誰か分かったみたいだけど、それでもこれはしてはいけないことだと思う。
 いくら指示されたとしても。

 その時、外からサイレンの音が近付いて来た。
 そして、隊員を連れた龍哉くんが来た。

 隊員は、直ぐに亜耶ちゃんを担架に載せる。しかも慎重に。
「こちらの生徒のご家族に連絡は?」
 一人の隊員が聞いてきた。
「あぁ、彼女の家族は俺です。俺は、彼女の夫ですから。」
 高橋先生は堂々と口にした。
 その姿が、カッコイイって思った。
  
 自分は何一つ悪いことしてないって顔をして、亜耶ちゃんを自分の妻だと宣言するその姿が……。

 隊員は、一瞬瞠目したが、直ぐに切り替わり。
「一緒に来てください。」
 そう一言だけ告げ、担架に載せられた亜耶ちゃんと階段を降りて行く。
「龍哉、悪いが宮原先生にこの事を伝えておいて、あと、木村と一緒に理事長室へ行って、説明をして。透には、後で電話するって伝えておいてくれるか?」
 テキパキと指示を出す高橋先生。
 そして、亜耶ちゃんの後を心配そうについて行った。

「……と言うことなんで、梨花は教室に戻って、この事をクラスで話してくれ。俺と木村は職員室に行った後理事長室な。」
 龍哉くんの言葉に周りが動き出す。
 
「 えっ、あたしが理事長室に行くの?  無理、無理だよ。」
 ちゃんと説明できるか、不安だよ。
 龍哉くんが、青い顔をした梨花ちゃんに何やら伝えてるけど、そんなの気にならないくらい自分の事で一杯だ。

 龍哉くんは、あたしの不安に気付くこともなく。
「行くぞ、木村。」
 って、スタスタと歩き出すから、戸惑いながら歩を進める。

 職員室で宮原先生に事情を話、そのまま理事長室に足を運んだ。

 見たままを話終えて、教室に戻ったのは五限目の終わりだった。















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