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15、一緒に暮らして
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没頭したらいつか眠くなるかと始めてはみたものの、集中することができず、ただ時間を浪費したように感じだ。僕は一体何をやっているのだろうか。大きくため息を吐いて、もうリビングに戻ろうと振り返ると、いつの間にか後ろにいた拓真さんにぶつかった。
「えぇっ!す、すみません、気付かなくて」
「だ、大丈夫」
僕は急いで拓真さんから離れた。拓真さんはちょっと痛そうに鼻をさすっていた。
「あ、飲み物入りますか?」
「いや、大丈夫」
「じゃあ、フルシティ寝る時邪魔でしたか?」
「邪魔じゃない」
「あー…眠れませんか?」
拓真さんはコクリと頷いた。その仕草が控えめにいってもとても可愛く、僕の心を試しにかかってきている。
「じゃ、じゃあ、ホットココア飲みます?」
「い、いや…その…尊くんが嫌じゃなければ一緒に寝て欲しい…です」
緊張した面持ちでそう伝えてきたのは、きっと心のどこかで「断られるかも」と思っていたのだろう。それでも伝えてきてくれたってことは、少なからず僕を信頼してくれているから。だよね、拓真さん。
「嫌だと思ったらすぐに言ってください」
「抱きしめても、大丈夫ですか?」
「キスしても、大丈夫ですか?」
拓真さんは全てに小さく頷いた。僕は拓真さんを抱え額にキスを落とした。寝れずに色々考えてくれていたのか、さっきまでの否定的な拓真さんではなくなっていた。僕はそのままベッドに行き、拓真さんを優しく下ろした。そしてまた額にキスをすると、可愛く赤らんでいた。
「眠れるまで少しお話しませんか?」
「ありがとう、気遣ってくれて」
「違いますよ、僕も眠れないから話したいだけ」
「ありがとう」
「じゃあ僕の話、聞いてもらえますか?」
「うん」
「僕ね、親いないんですよ。正確には小さい頃じいちゃんに預けられて以来、会ってないってだけですけど。『お前は子供すぎるんだ、良い子に大人しくしていたら迎えにくる』って。今思えば、子供を黙らせるための体のいい言葉ですよね。」
拓真さんはいつの間にか自分のことのように辛そうな表情で僕を見つめていた。「辛かったね」とか「悲しいね」なんて上辺だけの言葉をかけてくるわけではなく、ただ何も言わずにだ。それが僕にとっては嬉しかった。
「だからね、子供扱いされたりするのが嫌だったりしたんですよね。今でもたまに思い出してはちょっと反発しちゃったり。だからかな、好きって言ってくれる人が本当になんでも許してくれるのか疑って意地悪したり悪戯したりして、試しちゃうんですよね。僕を見てって、やって後悔するくせにね。バカみたいでしょ。そんなんで人の愛情を測ってばっかりいたからかな…人はすぐに離れていくし、ある意味ヤバいやつ自分でも思います」
拓真さんも心当たりがあるのか、思い出して少し笑っていた。彼を笑わせられたなら、僕の恥ずかしい過去も話して良かったと思える。
「僕ちょっと変な態度取った時あるでしょ?あの時久々に母親のこと思い出してた…あんな変な態度取られたら、みんな面倒くさくなってさよならだよ、今まではね。拓真さんって思った以上にお人好しだし、僕を想像以上に好きで嬉しかったな…」
「そんなのこっちもそうだよ…」
拓真さんは手を伸ばして僕の頭を撫でてくれた。じいちゃんも母親も、今までの人も、誰も僕のことを撫でてくれたことはなかった。頭を撫でられることがこんなに温かな気持ちになるってこと、教えてくれたのは拓真さんだ。だから、この手を離したくないとも思っている。
「僕、拓真さんに謝らないといけないことがあるんです」
「急に改まってどうした?」
「僕もう、拓真さんのこと離してあげられないかも…」
「えぇっ!す、すみません、気付かなくて」
「だ、大丈夫」
僕は急いで拓真さんから離れた。拓真さんはちょっと痛そうに鼻をさすっていた。
「あ、飲み物入りますか?」
「いや、大丈夫」
「じゃあ、フルシティ寝る時邪魔でしたか?」
「邪魔じゃない」
「あー…眠れませんか?」
拓真さんはコクリと頷いた。その仕草が控えめにいってもとても可愛く、僕の心を試しにかかってきている。
「じゃ、じゃあ、ホットココア飲みます?」
「い、いや…その…尊くんが嫌じゃなければ一緒に寝て欲しい…です」
緊張した面持ちでそう伝えてきたのは、きっと心のどこかで「断られるかも」と思っていたのだろう。それでも伝えてきてくれたってことは、少なからず僕を信頼してくれているから。だよね、拓真さん。
「嫌だと思ったらすぐに言ってください」
「抱きしめても、大丈夫ですか?」
「キスしても、大丈夫ですか?」
拓真さんは全てに小さく頷いた。僕は拓真さんを抱え額にキスを落とした。寝れずに色々考えてくれていたのか、さっきまでの否定的な拓真さんではなくなっていた。僕はそのままベッドに行き、拓真さんを優しく下ろした。そしてまた額にキスをすると、可愛く赤らんでいた。
「眠れるまで少しお話しませんか?」
「ありがとう、気遣ってくれて」
「違いますよ、僕も眠れないから話したいだけ」
「ありがとう」
「じゃあ僕の話、聞いてもらえますか?」
「うん」
「僕ね、親いないんですよ。正確には小さい頃じいちゃんに預けられて以来、会ってないってだけですけど。『お前は子供すぎるんだ、良い子に大人しくしていたら迎えにくる』って。今思えば、子供を黙らせるための体のいい言葉ですよね。」
拓真さんはいつの間にか自分のことのように辛そうな表情で僕を見つめていた。「辛かったね」とか「悲しいね」なんて上辺だけの言葉をかけてくるわけではなく、ただ何も言わずにだ。それが僕にとっては嬉しかった。
「だからね、子供扱いされたりするのが嫌だったりしたんですよね。今でもたまに思い出してはちょっと反発しちゃったり。だからかな、好きって言ってくれる人が本当になんでも許してくれるのか疑って意地悪したり悪戯したりして、試しちゃうんですよね。僕を見てって、やって後悔するくせにね。バカみたいでしょ。そんなんで人の愛情を測ってばっかりいたからかな…人はすぐに離れていくし、ある意味ヤバいやつ自分でも思います」
拓真さんも心当たりがあるのか、思い出して少し笑っていた。彼を笑わせられたなら、僕の恥ずかしい過去も話して良かったと思える。
「僕ちょっと変な態度取った時あるでしょ?あの時久々に母親のこと思い出してた…あんな変な態度取られたら、みんな面倒くさくなってさよならだよ、今まではね。拓真さんって思った以上にお人好しだし、僕を想像以上に好きで嬉しかったな…」
「そんなのこっちもそうだよ…」
拓真さんは手を伸ばして僕の頭を撫でてくれた。じいちゃんも母親も、今までの人も、誰も僕のことを撫でてくれたことはなかった。頭を撫でられることがこんなに温かな気持ちになるってこと、教えてくれたのは拓真さんだ。だから、この手を離したくないとも思っている。
「僕、拓真さんに謝らないといけないことがあるんです」
「急に改まってどうした?」
「僕もう、拓真さんのこと離してあげられないかも…」
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