愛を注いで

木陰みもり

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14、お酒は飲んでも飲まれるな

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 少しずつ色々な種類のものを食べて飲んでをしているうちに、俺は結構な量の日本酒を飲んでしまっていたらしい。これはまずいと思った俺は、まだ誰にも迷惑をかけてないうちに、尊くんに連絡しようと外へ出た。
「悪い四乃、ちょっとトイレ行ってくるわ」
「二階堂さんフラフラですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
 俺は足取り軽やかに、個室を後にした。何となく早く尊くんの声が聞きたくて、足がふわふわしていた。
 外に出ると夏の夜風が気持ち良かった。酒で熱った身体をちょうど鎮めてくれるみたいで心地よく感じて、その風に当たりながら、俺は尊くんに電話した。
「もしもし、拓真さん?」
「おー…昨日からお世話になって申し訳ないんだけどさ…」
「何でも言ってください。あと申し訳ないなんて思わなくていいんですよ」
「はは、ありがと。迎えに…来てくれたり…する?」
「もちろん構いませんよ。飲みすぎちゃったんですか?」
「ん…飲みすぎた…だからもう歩けない…」
「すぐ迎えに行きますね」
「イケメン大好き…ありがと」
「そういう…」
電話越しで尊くんが何か言っていたけど、要件を伝え満足した俺はすぐ通話を切ってしまった。意識がなくなる前に店の場所と個室までのルートを尊くんに送った。やり切った俺はフラフラの足取りで個室に戻った。
「あれ、四乃もトイレか?」
戻ると個室に四乃の姿はなかった。
 そういえばまだ相談事も聞いてなかった。しかしここまで酔ってしまうと答えられないし、日を改めることを相談しよう。そう思いながら俺は机に突っ伏した。
 それにしても飲みすぎた。佐藤に忠告されたのに、結局飲みすぎてしまった。シェアして飲んでいた時、俺の倍以上の酒を四乃は飲んでいたにもかかわらず、顔色1つ変えずにまだまだいけるよう感じだった。その顔を見て飲んでいたせいか、俺もまだまだいける、なんて錯覚してしまっていたのだ。
 だんだんと頭痛が酷くなり、眠気も相まって、俺は全く周りを把握できていなかった。不意に誰かが後ろに近付いてきていたことも、無理やり押し倒されたことも、全てが終わって天井を見るまでは、自分に何が起こったのか把握できなかった。
 豆電球の光がやけに眩しく感じた。揺れる光の中、誰かが俺の上に乗っているのはわかった。だけど誰が乗っているかまでは分からなかった。四乃なのかと声をかけても返事はない。ただ逆光で顔の見えない男が何もせずに俺の上に跨っているだけの状況に、俺は恐怖を覚えた。
 動くこともできず、ただ早く尊くんが迎えに来ないか、四乃が戻ってこないか、そればかり考えていた。
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