愛を注いで

木陰みもり

文字の大きさ
上 下
57 / 75
12、お誘いに勇気は必要ですか?〜side 拓真〜

しおりを挟む
 結局カレーは2人で作った。まぁカレーなんて切って炒めて煮るだけで味だって普通にルウを使うだけで簡単な料理だしな。
「作りすぎたかな」
「今日から僕は毎日カレーですね…」
「あはは、悪いな」
「じゃあ食べに来てください。いつでも待ってますよ」
「そうだな、また来るわ」
夕方のことなんてまるで無かったかのように普通の会話。良かった、普通に話せて。でもちょっと切ないな。身体もずっと切ない。尊くんは何でもない顔しているのに、俺だけずっと顔は赤いし身体は今でも触ってほしいと刺激を求めていた。
 俺ってこんなに性に対して貪欲だっただろうか。熱った身体を無理やり抑え込んで、俺は何食わぬ顔で彼の隣に立つ。それだけでも背徳的で余計に意識してしまっていた。

「…まさん、拓真さん!聞いてますか?」
「え…ごめん、聞いてなかった」
「もうさっきから生返事ばっかり」
「悪い、もう1回話してくれるか」
「しょうがないですね。フルシティは……」
カレーは味がほとんどしなかった。子猫の話も途中から全然覚えていない。ただずっと、尊くんの口へと運ばれるスプーンを目で追っていた。少しからそうにTシャツをパタパタさせる仕草が、その度に見える鎖骨が、食事中なのに俺をさらに欲情させた。
「…拓真さん!顔赤いですけど大丈夫ですか?」
「え、あ、うん。大丈夫大丈夫。ちょっとカレーが辛くて」
「僕は辛いの好きでしたけど、拓真さんには辛すぎました?」
「いや、俺も美味しかったから」
「良かった。じゃあ片付けはしておくので、お先にお風呂どうぞ」
着替えを渡され、背中を押され、あっという間に俺はリビングからバスルームに移動させられてしまった。ご丁寧にさっきコンビニで買った下着もしっかり持たせてくれている。
「左からリンス、シャンプー、ボディソープです。湯船も張ってあるのでゆっくり入ってきてください」
「あ、ありがとう」
ふふんと楽しそうに笑いながら尊くんはキッチンに戻っていった。
「下着だけカバンの上に置いておいて正解だったな」
呟きながら俺は来ていた服を脱ぎ、丁寧に畳む。脱ぐたびに俺は少し気が重かった。風呂から出たら、尊くんが入って、出たら一緒にアイスを食べて、その後、誘って、さっきみたいに断られたらと思うと気が重くなっていく。
 とりあえずシャワーを浴びて身体を洗い、湯船に浸かって考えを巡らすことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

孤独な戦い(1)

Phlogiston
BL
おしっこを我慢する遊びに耽る少年のお話。

嫌がらせされているバスケ部青年がお漏らししちゃう話

こじらせた処女
BL
バスケ部に入部した嶋朝陽は、入部早々嫌がらせを受けていた。無視を決め込むも、どんどんそれは過激なものになり、彼の心は疲弊していった。 ある日、トイレで主犯格と思しき人と鉢合わせてしまう。精神的に参っていた朝陽はやめてくれと言うが、証拠がないのに一方的に犯人扱いされた、とさらに目をつけられてしまい、トイレを済ませることができないまま外周が始まってしまい…?

a pair of fate

みか
BL
『運命の番』そんなのおとぎ話の中にしか存在しないと思っていた。 ・オメガバース ・893若頭×高校生 ・特殊設定有

愛して、許して、一緒に堕ちて・オメガバース【完結】

華周夏
BL
Ωの身体を持ち、αの力も持っている『奏』生まれた時から研究所が彼の世界。ある『特殊な』能力を持つ。 そんな彼は何より賢く、美しかった。 財閥の御曹司とは名ばかりで、その特異な身体のため『ドクター』の庇護のもと、実験体のように扱われていた。 ある『仕事』のために寮つきの高校に編入する奏を待ち受けるものは?

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

処理中です...