愛を注いで

木陰みもり

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2、一途な恋心

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「ふふ、痛いよコタ!離してって。」
「なに笑ってんだ、気色悪いな。」
そう言って僕の鼻から手を離した琥太郎こたろうの顔は、心なしか少し満足気だった。本当に素直じゃないやつ。

「それで、豆買ってくんだろ?」
「いや、財布持ってきてない。しかも喫茶店開けっ放しだった。」
テヘッと舌を出して笑う僕に、琥太郎の渾身のゲンコツが降ってきた。言葉にもならない強烈なゲンコツだ。
「イッーーーー!」
「バカかお前、猪突猛進すぎるだろ!さっさと店戻れ。鍵もかけずに出てくるなんて…」
「殴らなくても…」
「呆れて言葉も出んわ…とりあえずさっさと帰れ、そんでもって貴重品確認して、俺に即刻電話しろ。いいな。」
「なんで電話?」
何故、琥太郎に電話をしないといけないのかと聞き返したら、今度は頭を鷲掴みにされグラグラと揺さぶられた。
「な・に・ご・と・も!なかったという報告、待ってるからな!」
「わ、わかったから、揺らさないで~」
「早く行けー!」
そう叫び、琥太郎は僕を店から追い出した。
「心配性なやつ」そう呟き、電話でも怒られないように早足で店へ戻る。
帰り道は僕の気持ちを表しているかのような、爽やかな雨上がりの空をしていた。

店に戻り貴重品をチェックし、琥太郎に電話をする。無事報告も終え、晴れやかな気持ちで開店準備を進める。
もう「優男さん」を追うのはやめよう、偶然会った時また気持ちが溢れるならその時考えよう。そう気持ちを整理し、この日を境に「優男さん」を探すのはやめた。

梅雨はもうすぐ明けそうだ。梅雨が明けたらちょうど開店なんてできたらいいな、そんなことをあの日思ったものだ。
だが開店準備をのんびりし過ぎたせいで、開店は遅れた。そんな中、思いもよらない来客によって、あの日大切に宝箱にしまった想いが溢れ出したことは少し先の話。

カランカラン――

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