愛を注いで

木陰みもり

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2、一途な恋心

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そのあと「優男さん」は、にこっと笑いコーヒー豆を買って、「ではまた」と元気よく店を出ていった。
また、会えるのだろうか――
「ではまた」その言葉がずっと脳裏に留まって離れない。優しい響き。
ぼーっと「優男さん」が去って行った扉を眺めながら呆けていると、不意に頭を思い切り叩かれた。
「いっっったっ、何すんの!」
「何すんのじゃねぇ。メガネ返せ!たく…」
怒りながら乱暴に僕からメガネを剥ぎ取るこの男は、このコーヒー豆専門店の店長で僕の唯一の幼馴染『三葉みつば琥太郎こたろう
ここまで無視して申し訳ないと思う一方で、唯一心を許せる友なためついついぞんざいに扱ってしまう。気の置けるよい友だ。
「ごめんて。今度お店手伝うよ。暇そうなお店だけど」
「舐めんな、もうコーヒー豆売らないからな。」
「そんなこと言わないでよコタ~。可及的速やかに行動に移さないといけないことが起きてたんだって。あと暇なのは事実じゃん」
「はぁ、でなに、お前はあの客が好きなわけだ。」
「好き?」
今まで背けていた自分の感情を急に突きつけられ、思わず目を丸くし琥太郎を凝視する。
「は?無自覚ってやつか?別に気付いてなかったなら今のなしな。忘れろ」
「えっ、無理だよそんなの!でも好きとかじゃないよ。あの人すごくお人好しなんだ。それでちょっと興味を持って話してみたかっただけ。実際話してみたら本当に優しさの塊だってもう満足。それに男に好意を持たれたら気持ち悪いだけでしょ。」
まるで自分に言い聞かせるように、言い訳を並べた。言葉にするたびに胸はズキズキと痛み、鼻の奥がツンとし、目の奥が熱くなる。
そんな僕を見て琥太郎は深いため息を吐いた。
「性別とか別にどうでもいい時代だろ。まぁ赤の他人なわけだし、この先偶然会いましたーなんてそうそうないだろうしな。一時の興味ってやつなんだろ。」
そう言いながら、琥太郎は俺の鼻をギュッとつまんだ。その衝撃で思わず僕は変な声を出してしまった。
「んなっ!」
「はは、マヌケだな。」
マヌケな顔にしたのは琥太郎のくせに、相変わらず嫌味なやつだ。だがこの断定にも近い言い方と粗雑な扱いは、僕の心を幾分か楽にしてくれた。そうだ、もう会わないかもしれない相手にうじうじしても仕方がない。きっと好きなのは確かなのだ。また出会った時に同じ気持ちになるなら、その時に考えればいい。今はこの気持ちを大切に宝箱にしまっておこう。今はそれでいい。そう思わせてくれた琥太郎には感謝しかない。本当にいい友人だ。
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