5 / 75
1、一目惚れと恋の味
⑤
しおりを挟む
聞き返そうとした途端、彼はまた矢継ぎ早に話を続けた。
「向かいの路地で雨の日に捨て猫に傘あげてるの見てました。少し先の横断歩道で、点滅信号を渡りきれないおばあちゃんを背負って渡ったこともありますよね?それも見てました。最初は優しい人だなって思いました。ただそれだけ……でも2つ先の信号のコーヒー豆専門店で、コーヒー豆を真剣に選んでたあなたを見て声を掛けて色々教えた時、すごく喜んでくれて、僕を温かい気持ちにしてくれました。好きなことに対して突っ走る僕の話を長々と聞いてくれました。楽しかった……あんなに好きなこと話せるのは初めてで、嬉しくて、好き……好き……」
こんな息を切らしながら……俺のことを――
この可愛い生き物を抱きしめたくてたまらなくなって、次の瞬間には思いっきり抱きしめていた。
何が起きたのか分からないと目を丸くしながらパチパチしている。本当に可愛いと思う。
「俺も、君のこと好きだよ。コーヒー注ぐ姿がカッコよくて、好きなことを目をキラキラさせながら話してくれるところ、夢中になると割と周り見えなくなるし、いたずら好きだと思ったのはいたずらじゃなかったけど……自分の行いですぐ他人を傷付けたって思い込んで自分を傷付ける。でも今回は君が悪いわけじゃなかったんだ。俺が、その……好きかもって気付いて、男にこんな気持ち向けられても迷惑だと思って去ろうとした。ごめん。」
俺からこんな話が出るなんて思わなかったのだろう。いまだに、ありえないという顔で呆気に取られている。
そんな彼の手を取り、自分の胸に当てる。
「こんなにドキドキしてるんだよ。嘘じゃない。」
「嘘……じゃない……」
そう呟くと、わっと大粒の涙をこぼしながら泣きじゃくった。
「よしよーし、嘘じゃない。またここにも来る。君の話もいっぱい聞くよ。」
頭を撫でながら、カウンターの椅子に座らせる。目を逸らすために下を向いていて気付かなかったが、ずいぶん唇を噛んでいたようだ。少し血が滲んでいる。告白なんて勇気のいることそう簡単なことではない。相当の思いをもって告げてくれたのだと思うと胸の奥底から温かい気持ちが湧き上がってきた。
一頻り泣いた彼は、目を赤くしながら嬉しそうに目を細めて笑って、隣に座り直した俺の肩にそっと寄りかかってきた。
「嬉しいです。同じ気持ちだったなんて。夢じゃないですよね?」
「夢じゃないよ。俺も夢じゃないかって思ったけどね。」
そう言って俺も彼に寄りかかる。
ゆるやかな時の流れを感じながら、今この瞬間が現実なんだと確認し合うように、彼の髪の毛を指ですいたり、赤くなった目元をそっと指の腹で撫でたり。彼は少し大胆な性格のようで、俺の頬に手を添えチークキスをしたかと思うと、唇に触れ形を確かめるように左端から右端へと親指の腹を優しく動かす。
「向かいの路地で雨の日に捨て猫に傘あげてるの見てました。少し先の横断歩道で、点滅信号を渡りきれないおばあちゃんを背負って渡ったこともありますよね?それも見てました。最初は優しい人だなって思いました。ただそれだけ……でも2つ先の信号のコーヒー豆専門店で、コーヒー豆を真剣に選んでたあなたを見て声を掛けて色々教えた時、すごく喜んでくれて、僕を温かい気持ちにしてくれました。好きなことに対して突っ走る僕の話を長々と聞いてくれました。楽しかった……あんなに好きなこと話せるのは初めてで、嬉しくて、好き……好き……」
こんな息を切らしながら……俺のことを――
この可愛い生き物を抱きしめたくてたまらなくなって、次の瞬間には思いっきり抱きしめていた。
何が起きたのか分からないと目を丸くしながらパチパチしている。本当に可愛いと思う。
「俺も、君のこと好きだよ。コーヒー注ぐ姿がカッコよくて、好きなことを目をキラキラさせながら話してくれるところ、夢中になると割と周り見えなくなるし、いたずら好きだと思ったのはいたずらじゃなかったけど……自分の行いですぐ他人を傷付けたって思い込んで自分を傷付ける。でも今回は君が悪いわけじゃなかったんだ。俺が、その……好きかもって気付いて、男にこんな気持ち向けられても迷惑だと思って去ろうとした。ごめん。」
俺からこんな話が出るなんて思わなかったのだろう。いまだに、ありえないという顔で呆気に取られている。
そんな彼の手を取り、自分の胸に当てる。
「こんなにドキドキしてるんだよ。嘘じゃない。」
「嘘……じゃない……」
そう呟くと、わっと大粒の涙をこぼしながら泣きじゃくった。
「よしよーし、嘘じゃない。またここにも来る。君の話もいっぱい聞くよ。」
頭を撫でながら、カウンターの椅子に座らせる。目を逸らすために下を向いていて気付かなかったが、ずいぶん唇を噛んでいたようだ。少し血が滲んでいる。告白なんて勇気のいることそう簡単なことではない。相当の思いをもって告げてくれたのだと思うと胸の奥底から温かい気持ちが湧き上がってきた。
一頻り泣いた彼は、目を赤くしながら嬉しそうに目を細めて笑って、隣に座り直した俺の肩にそっと寄りかかってきた。
「嬉しいです。同じ気持ちだったなんて。夢じゃないですよね?」
「夢じゃないよ。俺も夢じゃないかって思ったけどね。」
そう言って俺も彼に寄りかかる。
ゆるやかな時の流れを感じながら、今この瞬間が現実なんだと確認し合うように、彼の髪の毛を指ですいたり、赤くなった目元をそっと指の腹で撫でたり。彼は少し大胆な性格のようで、俺の頬に手を添えチークキスをしたかと思うと、唇に触れ形を確かめるように左端から右端へと親指の腹を優しく動かす。
1
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
孤狼のSubは王に愛され跪く
ゆなな
BL
旧題:あなたのものにはなりたくない
Dom/Subユニバース設定のお話です。
氷の美貌を持つ暗殺者であり情報屋でもあるシンだが実は他人に支配されることに悦びを覚える性を持つSubであった。その性衝動を抑えるために特殊な強い抑制剤を服用していたため周囲にはSubであるということをうまく隠せていたが、地下組織『アビス』のボス、レオンはDomの中でもとびきり強い力を持つ男であったためシンはSubであることがばれないよう特に慎重に行動していた。自分を拾い、育ててくれた如月の病気の治療のため金が必要なシンは、いつも高額の仕事を依頼してくるレオンとは縁を切れずにいた。ある日任務に手こずり抑制剤の効き目が切れた状態でレオンに会わなくてはならなくなったシン。以前から美しく気高いシンを狙っていたレオンにSubであるということがバレてしまった。レオンがそれを見逃す筈はなく、シンはベッドに引きずり込まれ圧倒的に支配されながら抱かれる快楽を教え込まれてしまう───
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる