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30.居場所
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「最初から自分が番だって言えよ」
「俺は勇大の本音を知りたかったんだ。半分事故みたいな形で番って、朝になったらお前は逃げた。嫌われてるかもしれないと探りを入れたんだ。そのあとは、お前が『好きでもない奴と番った』なんて言うから……」
「あれは!」
勇大は北沢から身体を離して、ばっと上を向いた。どうしても北沢の目を見て言いたかった。
「お前が番だなんて知らなかったから。俺は社長を好きになりたいのにさ、番がいたら、ダメだろ? それが、悔しくて……」
「勇大」
「へっ?」
北沢が急に真面目な顔をするから、ドキッとした。この高鳴る心臓の音が、すぐそばにいる北沢にバレてしまうのではないかと恥ずかしくなる。
「勇大は、いつ俺を好きになったんだ?」
「えっ? あー……わかんねぇ。気がついたらなんか、社長のことばっかり考えてて、一緒にいると楽しいしさ、いつだろう……」
具体的にいつ恋に落ちたのかはわからない。でも、考えれば考えるほど一目惚れに近かったんじゃないかという気持ちになってくる。そんなことを言ったら北沢が調子に乗りそうだから勇大は言葉を濁した。
「俺は二度お前に恋をした。番ったときが一度目、それからお前を見つけ出して再会して、本当のお前をゆっくり知りながら恋に落ちた。出会いは突然だったが、俺はいつの瞬間も勇大のことを好きだったよ」
北沢からの額へのキスに、勇大は顔を赤らめる。さっきあんなに淫らに交わっていたくせに、一度冷めてしまうとほんの少しの触れ合いも恥ずかしくてたまらない。
「なんでそんな恥ずかしいこと平気で言えんの……」
「好きだから」
恥ずかしげもなく好きと言われて、北沢に至近距離で見つめられて、勇大は居た堪れない。
うるさい心臓の音が、どれだけ北沢のことを好きか勇大に伝えてくる。
自分でも呆れるほど好きだ。どうしてこんなに好きになったのかわからないくせに、北沢しか愛せない。こんなに人を好きになることはないと思う。
「社長。俺の恋人になって」
勇大は北沢の右手を握り、誘うように指を絡ませた。北沢はピクリと反応する。
「俺には社長しかいない。社長としかできない身体だよ? だから、俺のものになってよ。そうじゃないと俺、寂しくて死んじゃう」
勇大の言葉に、北沢は信じられない様子で目を見開いた。でもすぐにニマニマと口角を上げ、微笑む。
「当たり前だろ。恋人になろう。そのために俺は勇大を探して、俺なりに猛アプローチをかけたんだ。俺の気持ちをここまで奪っておいて、今さら俺から逃げられると思うなよ」
北沢が唇を近づけてくる。腰を抱かれ、身体を引き寄せられる。
「ぅ、んっ……」
北沢と誓約を交わすようなキスをする。最初は軽く、次第に深く。
心から好きだ。この気持ちにひとつの曇りもない。
「勇大。俺にとってもお前は最初で最後の番だ。ずっと一緒にいよう」
北沢の言葉のひとつひとつが心にじんと響く。大袈裟じゃなくて、この人さえそばにいてくれれば生きていけると思えた。
安堵のあまりに涙が溢れそうになり、勇大は必死で堪える。番解除され、一生ひとり身でいることを覚悟していたのに、最高の番がすぐ目の前にいる。その形のいい唇で、愛を囁き、将来を約束してくれた。
「泣いていい。俺の前で泣かないで、どこで泣くんだよ。これからは泣きたくなったら俺を呼べ。勇大の味方はここにいる」
北沢に背中を撫でられ、堰を切ったように涙が溢れる。
「うあぁぁ……っ!」
こんなに全力で泣いたのはいつぶりだろう。
勇大が泣いているあいだ、北沢は何も言わずにただ抱きしめてくれた。
決して嫌な涙じゃなかった。泣くたびに心がスーッと軽くなるような涙だった。
「俺は勇大の本音を知りたかったんだ。半分事故みたいな形で番って、朝になったらお前は逃げた。嫌われてるかもしれないと探りを入れたんだ。そのあとは、お前が『好きでもない奴と番った』なんて言うから……」
「あれは!」
勇大は北沢から身体を離して、ばっと上を向いた。どうしても北沢の目を見て言いたかった。
「お前が番だなんて知らなかったから。俺は社長を好きになりたいのにさ、番がいたら、ダメだろ? それが、悔しくて……」
「勇大」
「へっ?」
北沢が急に真面目な顔をするから、ドキッとした。この高鳴る心臓の音が、すぐそばにいる北沢にバレてしまうのではないかと恥ずかしくなる。
「勇大は、いつ俺を好きになったんだ?」
「えっ? あー……わかんねぇ。気がついたらなんか、社長のことばっかり考えてて、一緒にいると楽しいしさ、いつだろう……」
具体的にいつ恋に落ちたのかはわからない。でも、考えれば考えるほど一目惚れに近かったんじゃないかという気持ちになってくる。そんなことを言ったら北沢が調子に乗りそうだから勇大は言葉を濁した。
「俺は二度お前に恋をした。番ったときが一度目、それからお前を見つけ出して再会して、本当のお前をゆっくり知りながら恋に落ちた。出会いは突然だったが、俺はいつの瞬間も勇大のことを好きだったよ」
北沢からの額へのキスに、勇大は顔を赤らめる。さっきあんなに淫らに交わっていたくせに、一度冷めてしまうとほんの少しの触れ合いも恥ずかしくてたまらない。
「なんでそんな恥ずかしいこと平気で言えんの……」
「好きだから」
恥ずかしげもなく好きと言われて、北沢に至近距離で見つめられて、勇大は居た堪れない。
うるさい心臓の音が、どれだけ北沢のことを好きか勇大に伝えてくる。
自分でも呆れるほど好きだ。どうしてこんなに好きになったのかわからないくせに、北沢しか愛せない。こんなに人を好きになることはないと思う。
「社長。俺の恋人になって」
勇大は北沢の右手を握り、誘うように指を絡ませた。北沢はピクリと反応する。
「俺には社長しかいない。社長としかできない身体だよ? だから、俺のものになってよ。そうじゃないと俺、寂しくて死んじゃう」
勇大の言葉に、北沢は信じられない様子で目を見開いた。でもすぐにニマニマと口角を上げ、微笑む。
「当たり前だろ。恋人になろう。そのために俺は勇大を探して、俺なりに猛アプローチをかけたんだ。俺の気持ちをここまで奪っておいて、今さら俺から逃げられると思うなよ」
北沢が唇を近づけてくる。腰を抱かれ、身体を引き寄せられる。
「ぅ、んっ……」
北沢と誓約を交わすようなキスをする。最初は軽く、次第に深く。
心から好きだ。この気持ちにひとつの曇りもない。
「勇大。俺にとってもお前は最初で最後の番だ。ずっと一緒にいよう」
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安堵のあまりに涙が溢れそうになり、勇大は必死で堪える。番解除され、一生ひとり身でいることを覚悟していたのに、最高の番がすぐ目の前にいる。その形のいい唇で、愛を囁き、将来を約束してくれた。
「泣いていい。俺の前で泣かないで、どこで泣くんだよ。これからは泣きたくなったら俺を呼べ。勇大の味方はここにいる」
北沢に背中を撫でられ、堰を切ったように涙が溢れる。
「うあぁぁ……っ!」
こんなに全力で泣いたのはいつぶりだろう。
勇大が泣いているあいだ、北沢は何も言わずにただ抱きしめてくれた。
決して嫌な涙じゃなかった。泣くたびに心がスーッと軽くなるような涙だった。
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