67 / 69
二月・三月 親衛隊は承認していれば『推し』に選ばれたとき通知がくるルール
エンディング⑨.1
しおりを挟む
待ってくれ。これはいったいどういう状況なのだろう。
「吉良、今日は来てくれてありがとう、嬉しいよ」
クラスの委員長・白石は微笑みながら吉良の右耳に軽く触れるキスをする。
「マジかよ、三人でデートなんてサイッコー!」
白石の親友で陽キャの玄野は、テンションが爆上がりしているのか、勢い余って吉良の左頬にキスをする。
嬉しそうなふたりはさておき、吉良は戸惑っている。
これは卒業制作のための買い出しだ。決してデートなんかじゃない。
卒業のための仕事決めをしたときに、たまたま白石、玄野のふたりと一緒に卒業制作準備班になっただけだ。
吉良が一番変に思っているのは、自分が常に真ん中にさせられること。白石と玄野は親友なのだからふたり並べばいいのに、真ん中のポジションは常に吉良だ。
「あのさ、これ、ただの買い物だから、これ以上俺にキスするのやめて……」
「あっ、悪ィ! つい、見るとしたくなっちゃう……」
玄野が素直に謝ってくれるのはいいが、吉良の内心は「普通見ただけですぐにキスなんかしたくならないだろ」とモヤモヤしている。
陽キャの玄野は、テンションが上がると、男でも女でも誰彼構わずキスをするのだろうか。
「俺も。玄野がしたぶんよりも一回でも多くしたいだけ」
優等生白石、学校の成績を張り合うのはいいが、こんな平凡な男にキスをする回数なんて張り合ってどうする!?
ふたりの行動の意味がわからない。
吉良にキスをしても何も嬉しくないだろうに。
「とにかく、俺、恥ずかしくて歩けねぇから、道端でキスしないで……」
ふたりとも、なるべくひと目のないときにしているつもりなのだろうが、さっきのは通行人に見られた。こっちを見ていて「あっ!」と何か言いたげな驚いた顔をしていたから。
「ごめん、吉良。じゃあキスじゃなくて腕組んで歩こっか」
白石が吉良の右腕をとり、腕を絡ませてきた。
「俺も! 白石だけなんておかしいだろ! ここは平等にいこうぜ!」
吉良の左腕は玄野に掴まれる。
——なんだよ、コレ、俺、悪いことして取り押さえられて連行される犯人かよ。
絶対におかしい。左右の腕を掴まれて、歩かされて、これじゃGメンに現行犯逮捕された万引き犯みたいだ。
結局、白石と玄野、ふたりにがっつりマークされながら買い物するハメになった。
卒業制作のための買い物を終え、寮に帰る前に、三人でちょっとだけ寄り道をする。今はドリンクスタンドに寄って、各々飲み物を買い、テラスにある長いベンチで並んで座り、ひと息ついているところだ。
「白石は何飲んでんの?」
白石の飲んでいる碧いフォトジェニックな飲み物が気になって、白石の手元を覗き込んだ。
「オーロラティーエイド」
「なにそれ、美味い?」
見た目からまったく味が想像できない。すると白石は「ひと口飲む?」とストローの先を吉良に向けてきた。
「あ、いいの?」
遠慮なくストローに口をつけて謎の飲み物・オーロラティーエイドを飲む。実は、めっちゃ爽やかな柑橘風味の紅茶に似た飲み物だった。
「うっま、いいな、俺すげぇ甘いやつ選んじゃったかも……」
吉良が選んだのは、ホットチョコだ。生クリームも盛り盛りで、半分くらいは美味しく飲めたのにちょっとだけ味に飽きてきた。
「じゃあ俺のと交換する?」
吉良の目の前に、玄野が自分の飲んでいたフルーツティーを差し出してきた。フルーツティーは吉良の好きな飲み物で、ホットチョコよりも味がさっぱりしそうだ。
「玄野、いいのか……? これ、結構甘いけど」
「ああ。だってそれ、吉良の味がするやつたろ?」
「んんんっ?」
「間違えた。気にすんな! いーよ、そっちちょうだい」
玄野は吉良のホットチョコを奪い取り、吉良飲んでいた蓋の飲み口に口をつけて飲んだ。
「あっま!」
玄野が声を上げるのも無理はない。このホットチョコは予想外に甘いのだ。
「いいよ、玄野……」
「いや。いけるいける。俺さ、まぁまぁ甘いの好きだから」
そんなことを言うだけあって、玄野は吉良の残りのホットチョコを難なく飲み切ってしまった。
「ありがとな、交換してくれて」
「全然。でもこれ、なんか口直ししたいな……吉良、ちょっといい?」
「へっ?」
玄野が吉良の肩を掴んで吉良の身体を自分に向けさせる。そのまま甘ったるい唇を、吉良の唇にさらりと自然に近づけてきた。
「吉良、今日は来てくれてありがとう、嬉しいよ」
クラスの委員長・白石は微笑みながら吉良の右耳に軽く触れるキスをする。
「マジかよ、三人でデートなんてサイッコー!」
白石の親友で陽キャの玄野は、テンションが爆上がりしているのか、勢い余って吉良の左頬にキスをする。
嬉しそうなふたりはさておき、吉良は戸惑っている。
これは卒業制作のための買い出しだ。決してデートなんかじゃない。
卒業のための仕事決めをしたときに、たまたま白石、玄野のふたりと一緒に卒業制作準備班になっただけだ。
吉良が一番変に思っているのは、自分が常に真ん中にさせられること。白石と玄野は親友なのだからふたり並べばいいのに、真ん中のポジションは常に吉良だ。
「あのさ、これ、ただの買い物だから、これ以上俺にキスするのやめて……」
「あっ、悪ィ! つい、見るとしたくなっちゃう……」
玄野が素直に謝ってくれるのはいいが、吉良の内心は「普通見ただけですぐにキスなんかしたくならないだろ」とモヤモヤしている。
陽キャの玄野は、テンションが上がると、男でも女でも誰彼構わずキスをするのだろうか。
「俺も。玄野がしたぶんよりも一回でも多くしたいだけ」
優等生白石、学校の成績を張り合うのはいいが、こんな平凡な男にキスをする回数なんて張り合ってどうする!?
ふたりの行動の意味がわからない。
吉良にキスをしても何も嬉しくないだろうに。
「とにかく、俺、恥ずかしくて歩けねぇから、道端でキスしないで……」
ふたりとも、なるべくひと目のないときにしているつもりなのだろうが、さっきのは通行人に見られた。こっちを見ていて「あっ!」と何か言いたげな驚いた顔をしていたから。
「ごめん、吉良。じゃあキスじゃなくて腕組んで歩こっか」
白石が吉良の右腕をとり、腕を絡ませてきた。
「俺も! 白石だけなんておかしいだろ! ここは平等にいこうぜ!」
吉良の左腕は玄野に掴まれる。
——なんだよ、コレ、俺、悪いことして取り押さえられて連行される犯人かよ。
絶対におかしい。左右の腕を掴まれて、歩かされて、これじゃGメンに現行犯逮捕された万引き犯みたいだ。
結局、白石と玄野、ふたりにがっつりマークされながら買い物するハメになった。
卒業制作のための買い物を終え、寮に帰る前に、三人でちょっとだけ寄り道をする。今はドリンクスタンドに寄って、各々飲み物を買い、テラスにある長いベンチで並んで座り、ひと息ついているところだ。
「白石は何飲んでんの?」
白石の飲んでいる碧いフォトジェニックな飲み物が気になって、白石の手元を覗き込んだ。
「オーロラティーエイド」
「なにそれ、美味い?」
見た目からまったく味が想像できない。すると白石は「ひと口飲む?」とストローの先を吉良に向けてきた。
「あ、いいの?」
遠慮なくストローに口をつけて謎の飲み物・オーロラティーエイドを飲む。実は、めっちゃ爽やかな柑橘風味の紅茶に似た飲み物だった。
「うっま、いいな、俺すげぇ甘いやつ選んじゃったかも……」
吉良が選んだのは、ホットチョコだ。生クリームも盛り盛りで、半分くらいは美味しく飲めたのにちょっとだけ味に飽きてきた。
「じゃあ俺のと交換する?」
吉良の目の前に、玄野が自分の飲んでいたフルーツティーを差し出してきた。フルーツティーは吉良の好きな飲み物で、ホットチョコよりも味がさっぱりしそうだ。
「玄野、いいのか……? これ、結構甘いけど」
「ああ。だってそれ、吉良の味がするやつたろ?」
「んんんっ?」
「間違えた。気にすんな! いーよ、そっちちょうだい」
玄野は吉良のホットチョコを奪い取り、吉良飲んでいた蓋の飲み口に口をつけて飲んだ。
「あっま!」
玄野が声を上げるのも無理はない。このホットチョコは予想外に甘いのだ。
「いいよ、玄野……」
「いや。いけるいける。俺さ、まぁまぁ甘いの好きだから」
そんなことを言うだけあって、玄野は吉良の残りのホットチョコを難なく飲み切ってしまった。
「ありがとな、交換してくれて」
「全然。でもこれ、なんか口直ししたいな……吉良、ちょっといい?」
「へっ?」
玄野が吉良の肩を掴んで吉良の身体を自分に向けさせる。そのまま甘ったるい唇を、吉良の唇にさらりと自然に近づけてきた。
76
お気に入りに追加
812
あなたにおすすめの小説
父が腐男子で困ってます!
あさみ
BL
父子家庭に育った尾崎リョウは16歳の誕生日に、若くてイケメンの父、宗親(ムネチカ)に腐男子である事をカミングアウトされる。
趣味に文句は言わないと思うリョウだったが、宗親のBL妄想はリョウの友人×リョウだった。
いつでも誰といても、友人×リョウで妄想されては聞かされるリョウは大迷惑。
しかも学校にいる美少年をチェックしては勧めてくる始末。
どう見ても自分と釣り合わない優等生や、芸能人の美少年まで攻キャラとして推してくる。
宗親本人は腐男子であるだけで、恋愛対象は美女だという事で、自分勝手にリョウだけを振り回す毎日。
友人達はみんな心が広く、宗親の趣味を受け入れたり、面白がったりで、今までよりもリョウの家に集まるようになる。
そんな中、宗親に感化されたかのように、自分も腐男子かもしれないと言いだす友人や、リョウの事を好きになったとストレートに伝えてくる友達まで現れてしまう。
宗親の思い通りにはなりたくないと思うリョウだが、友人達の事も気になりだして……。
腐男子の父親に振り回される、突っ込み系主人公総受けBLラブコメ。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
身の程なら死ぬ程弁えてますのでどうぞご心配なく
かかし
BL
イジメが原因で卑屈になり過ぎて逆に失礼な平凡顔男子が、そんな平凡顔男子を好き過ぎて溺愛している美形とイチャイチャしたり、幼馴染の執着美形にストーカー(見守り)されたりしながら前向きになっていく話
※イジメや暴力の描写があります
※主人公の性格が、人によっては不快に思われるかもしれません
※少しでも嫌だなと思われましたら直ぐに画面をもどり見なかったことにしてください
pixivにて連載し完結した作品です
2022/08/20よりBOOTHにて加筆修正したものをDL販売行います。
お気に入りや感想、本当にありがとうございます!
感謝してもし尽くせません………!
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
薫る薔薇に盲目の愛を
不来方しい
BL
代々医師の家系で育った宮野蓮は、受験と親からのプレッシャーに耐えられず、ストレスから目の機能が低下し見えなくなってしまう。
目には包帯を巻かれ、外を遮断された世界にいた蓮の前に現れたのは「かずと先生」だった。
爽やかな声と暖かな気持ちで接してくれる彼に惹かれていく。勇気を出して告白した蓮だが、彼と気持ちが通じ合うことはなかった。
彼が残してくれたものを胸に秘め、蓮は大学生になった。偶然にも駅前でかずとらしき声を聞き、蓮は追いかけていく。かずとは蓮の顔を見るや驚き、目が見える人との差を突きつけられた。
うまく話せない蓮は帰り道、かずとへ文化祭の誘いをする。「必ず行くよ」とあの頃と変わらない優しさを向けるかずとに、振られた過去を引きずりながら想いを募らせていく。
色のある世界で紡いでいく、小さな暖かい恋──。
乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます
syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね???
※設定はゆるゆるです。
※主人公は流されやすいです。
※R15は念のため
※不定期更新です。
※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m
好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった
碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。
壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。
白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。
壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。
男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。
だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。
ノンケ(?)攻め×女装健気受け。
三万文字程度で終わる短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる