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七月 親衛隊に転校生はその翌日から加入するルール

5.

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「水李葉……」

 初めてだ。こうやって誰かから好きになってもらったのは。

「わかった。水李葉。俺、お前とどうなりたいのか考えてみる。俺は水李葉のことは好きだけど、水李葉の好きはきっと恋人とか、キスしたりとか、そ、そう言う意味なんだよな……」

 言ってて恥ずかしくなるが、きっとそういう事なんだろう。

「だったらごめん。部屋に帰れよ水李葉。俺はお前と一緒になんか寝られない」

 水李葉は、静かに吉良の言葉を聞いてくれている。

「気軽にキスもしたくない。お前の気持ちに真面目に答えたいから……」
「……わかった。いいよ。俺は吉良が俺のことを好きになってくれるように頑張るよ。俺は吉良のこと、いつまでも好きだから。明日からは好きと言えないけど、忘れないで。俺は吉良が大好きだよ。俺と付き合って欲しい。恋人にしたい。一生一緒にいるって吉良と約束したい」

 水李葉は真っ直ぐに言葉をぶつけてくる。でもそれに応えることなんて出来ないから、吉良には返す言葉がない。

「吉良。そんなに悩まないで。もっと軽い気持ちで俺と付き合ってくれてもいいよ? 好きになれるかもで付き合うことに決めるのもアリだから」

 水李葉は笑顔だ。

「とりあえず、俺の気持ちは吉良に伝わったみたいで安心した」

 水李葉は、満足したみたいで「おやすみ」と手を振り部屋を出ていった。





 水李葉がいないなった途端に、緊張の糸が切れたのかドッと疲れが押し寄せてきた。
 吉良はベッドに倒れ込む。
 そして頭の中は水李葉のことばかり。

 水李葉と、付き合う?! あいつと恋人同士になって、そしたら、キスしたり抱き合ったり……するのか……するんだよな……。

 水李葉はすごく真剣だった。きっと吉良さえOKすれば本当に恋人同士になるんだろう。

 告白なんてされた事もないし、突然のことで、水李葉を受け入れることも拒絶することもできなかった。


「吉良……?」

 倒れ込んでる吉良の背後から、楯山が心配そうに声をかけてきた。

「楯山……。俺、どうしたらいい……?」

 寝返りを打つようにして振り返り、楯山の顔を見る。困った時は楯山だ。楯山はさっきの水李葉との一件を目の前で見ていたし、楯山に相談するのが一番いい。

「水李葉の言う通り、とりあえず付き合ってみたら俺も水李葉のこと、そういう意味で好きになれるのかな……」
「えっ……。吉良……お前、まさか水李葉と……」
「水李葉はこんな俺を好きになってくれたみたいだし、正直なところ俺、どうしたらいいのかわからないから……」

 水李葉のことは嫌いじゃない。だったら水李葉の気持ちに沿うのもいいのかもしれない。

「いや、でもさ、でも、真面目に返事をするんじゃなかったのか?!」
「そうだ……。そうだよな。水李葉のことをちゃんと好きになってからじゃないとOKしちゃダメか……」


「吉良……」

 楯山は吉良のすぐそばまで来て、今にも泣きそうな顔をしている。

「水李葉のこと、好きにならないでくれ……。お前がそうやって水李葉のことを考えてるのを見てるだけで既に耐えられない。これから少しずつあいつに惹かれてくお前をそばで笑って見守るなんて俺には無理だ。もっと無理なのは、とりあえず水李葉と付き合うことにしたお前が、あいつにいいように抱かれたりキスされたり……そんな事になったら俺は……俺こそどうしたらいいんだよ……」

 楯山は当事者の吉良よりも苦しそうだ。そこまで親身になってくれなくてもいいのに。

「俺をみくびるな。いいようになんてされねぇよ」

 まったく楯山は心配症だな。

「ありがとな。楯山」

 話を聞いてくれて親身になってくれた楯山に礼を言い、ふと時計を見るともう0時を過ぎている。

「吉良。お前の親衛隊がまたひとり増えたな……」

 楯山も時計を見て、ぽつり呟く。

「知らねぇ。おやすみ」

 吉良は考えるのをやめて、ベッドの中に深く潜り込んだ。
 
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