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四月 親衛隊は推しに選ばれるまでは想いを伝えてはいけないルール
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神宮寺は、川上と同室だ。だが、部屋には川上の姿はなかった。
神宮寺は吉良が部屋に入った後、ドアを閉めた。そして「適当に座れ」と言われたが、勉強机とベッドしかないこの部屋でどうするんだと迷い、とりあえず神宮寺のベッドの端に座ることにした。
「おい、吉良っ!」
早速の怒号に「はいっ!」と身体がビクッと反応してしまう。
「あんなところで倉木と二人きりになるなっ。あいつ、涼しい顔してお前の肩に手を回そうとしてたんだぞ!」
そうなのか……?
吉良はそんなことには全く気が付かなかった。
「倉木の野郎、俺には触るなとか言いやがって、自分はなんなんだよ……クソッ、腹立つな!」
「そのくらいで、怒るなよ……」
別に肩くらい、構わないんじゃないのか。吉良にはなぜそこまで神宮寺が怒っているのかわからない。
「お前が部屋にいないから、見回りに行って正解だったよ」
そういえば点呼の時間だったか。寮長としての仕事はなかなか大変そうだ。
「そうだ、吉良。お前は楯山と同室だろ?」
神宮寺は吉良の隣に座り、コソコソと小声で問いかけてきた。
「ああ。そうだけど……」
「楯山から、何か聞かなかったか? 川上とのこと」
「え……?」
神宮寺は二人のことについて何か知ってるのか……?
「いや、何も聞いてない……」
楯山は吉良には何も言わなかった。ただ、吉良が勝手に二人が良い感じになってるシーンを目撃しただけだ。
「あの二人、最近怪しいんだよな……」
「何が?」
「あ、いや……こっちの話なんだけどさ。吉良、とにかくあの二人には気をつけろよ」
「気をつけろ? 一体何を言ってるんだよ……」
「なんで楯山と吉良が同室なんだよ……。ああクソっ! お前が心配で堪らない。楯山がお前に何かしたらすぐに俺を呼べ。いつでも飛んでいくから」
神宮寺は何を言ってるんだ……?
「楯山はいい奴だ。俺に悪いことなんてするような奴じゃないよ」
「まさか、吉良……楯山のことを好きになったとかじゃないよな?!」
「は?! やめてくれ! そんなことあるわけない!」
一瞬ドキリとした。今日まさにそうなのかもと思ったばかりだったから。
「はぁー、良かった。それだけはマジ勘弁。お前が楯山のものになるなんて想像したくもない」
まぁね。男同士ですから。想像したくもないだろうな。
「な、なぁ。吉良は好きな人とか、いないのか……?」
「え……いや、俺は……」
そう聞かれてなぜか最初に浮かんだのは楯山だが、楯山には川上がいるし、吉良のこの感情だってもしかしたら勘違いかもしれない。
「俺にはそんな人いないよ」
だから、そう答えた。
「マジで! じゃあさ、俺のことは? 嫌いじゃない……?」
「うん……まぁ……」
普通に神宮寺はいい奴だと思う。
「じゃ、じゃあさ、俺と楯山が部屋を入れ替わるってのはどうだ? 俺と吉良が同室で、楯山と川上を一緒の部屋にするんだ」
ああ、なるほど。
神宮寺は楯山と川上の仲に気付いているようだ。だからこそ、恋人同士になった二人を同室にしてやりたいという寮長としての配慮なのか。
「俺は神宮寺と同室でも構わないよ。その方が楯山達も喜びそうだよな……」
「本当か?! 吉良が俺と同室でもいいって言ってくれるなんて夢みたいだよ。俺、ずっとお前と同室になりたかったんだ。部屋に戻ったら隣に吉良がいるなんてそんな最高シチュ他にねぇよ」
これは吉良に「余り物」感を感じさせないためのリップサービスなのだろう。寮長は皆への配慮が必要だ。
「早速、楯山達に言ってくるっ」
神宮寺はやけに嬉しそうだ。
そこへ、部屋に入ってきたのは川上だった。
「お! 川上! ちょうどいいところに」
「何が? え?! なんで吉良がここに?! ちょっと待てよ神宮寺、お前、吉良と二人きりだったのか?!」
川上は、なんでそんなに驚いているんだ……?
「ああそうだよ。今だけじゃない。これから毎日ずっとそうなる」
「は? どういう意味?」
「吉良が、俺と同室になってもいいと言ってくれたんだ」
「はぁ?! 嘘だろ?!」
川上はかなり驚いている。
「おいっ! 吉良、何かの間違いだよな? なんでお前、神宮寺なんかと……」
「俺は部屋を代わっても構わないと思ってるよ。俺と神宮寺、川上と楯山の部屋の方が川上達だって良——」
「ダメだ! 絶対にダメに決まってる! 吉良、お前、神宮寺を信用し過ぎだぞ!」
川上はものすごく怒ってる。何でだ……?
「おい、川上。邪魔するなよ。吉良が良いって言ってくれたんだから、諦めろよ。そもそもなんで吉良の同室がずっと楯山なんだよ。最初から決まってたとはいえ、不公平すぎないか?」
「だったら俺と吉良が同室になる」
「は? お前こそ危険だろ」
「お前に言われたくないな」
どうしたんだ、川上は。川上は恋人の楯山と同室になれた方が都合が良いんじゃないのか……?
「吉良、俺はお前が神宮寺と同室だなんて絶対に許さない。だから吉良も断れよ」
川上はなんだか必死だ。川上にも良かれと思って了承したのに……。
「わかったよ」
「おいっ! 吉良っ! 川上の一言でさっきの話を無かったことにするなよ!」
うわ、今度は神宮寺に怒られる。
「もう勝手にしてくれよ……」
俺はどうしたらいいんだよ……。
言い合う神宮寺と川上。はぁ、全くなんなんだ……。
二人の言い争いが落ち着いた頃、ふと吉良の脳裏に浮かんだこと。川上に、楯山とのことを訊ねてみようというアイデアだ。
「なぁ、川上。あのさ……」
「吉良? どした?」
「ちょっと、お前に訊きたいことがあるんだけど……」
「ああ。なんでも訊けよ。何?」
かなりプライベートなことなので、神宮寺の前では話せないと思った。
「あ、あの……川上と二人きりで話がしたいんだけど……」
「え……? 吉良?」
川上が信じられないといった表情をしている。
「俺と二人きりがいいのか……?」
「うん……ちょっとだけ……。じ、神宮寺が悪いわけじゃない。ちょっと話が混み入ってるだけで……」
「ちょっと待ってくれよ……。俺、心の準備が出来てない……。ヤバ……悶絶……」
川上はなんだか様子が変だが、対して神宮寺は吉良を睨みつけてくるので、「違う、別に神宮寺を邪険にしてるんじゃなくてっ」とこちらを宥めるのに必死になる。
「吉良が言うなら仕方ない……。俺はこの部屋を出てくが、廊下にいる。話が済んだらすぐに呼べよ」
怖っわ。そうだよな……一人だけ出て行けと席を外されたら誰だっていい気はしないよな……。
「ごめん、神宮寺……。ありがとう……」
申し訳ないなと謝ったら、「いいよ、吉良はいい子だな」と頭をぽんぽんされた。
神宮寺はちょっとだけ機嫌を直してくれたみたいだ。
神宮寺は吉良が部屋に入った後、ドアを閉めた。そして「適当に座れ」と言われたが、勉強机とベッドしかないこの部屋でどうするんだと迷い、とりあえず神宮寺のベッドの端に座ることにした。
「おい、吉良っ!」
早速の怒号に「はいっ!」と身体がビクッと反応してしまう。
「あんなところで倉木と二人きりになるなっ。あいつ、涼しい顔してお前の肩に手を回そうとしてたんだぞ!」
そうなのか……?
吉良はそんなことには全く気が付かなかった。
「倉木の野郎、俺には触るなとか言いやがって、自分はなんなんだよ……クソッ、腹立つな!」
「そのくらいで、怒るなよ……」
別に肩くらい、構わないんじゃないのか。吉良にはなぜそこまで神宮寺が怒っているのかわからない。
「お前が部屋にいないから、見回りに行って正解だったよ」
そういえば点呼の時間だったか。寮長としての仕事はなかなか大変そうだ。
「そうだ、吉良。お前は楯山と同室だろ?」
神宮寺は吉良の隣に座り、コソコソと小声で問いかけてきた。
「ああ。そうだけど……」
「楯山から、何か聞かなかったか? 川上とのこと」
「え……?」
神宮寺は二人のことについて何か知ってるのか……?
「いや、何も聞いてない……」
楯山は吉良には何も言わなかった。ただ、吉良が勝手に二人が良い感じになってるシーンを目撃しただけだ。
「あの二人、最近怪しいんだよな……」
「何が?」
「あ、いや……こっちの話なんだけどさ。吉良、とにかくあの二人には気をつけろよ」
「気をつけろ? 一体何を言ってるんだよ……」
「なんで楯山と吉良が同室なんだよ……。ああクソっ! お前が心配で堪らない。楯山がお前に何かしたらすぐに俺を呼べ。いつでも飛んでいくから」
神宮寺は何を言ってるんだ……?
「楯山はいい奴だ。俺に悪いことなんてするような奴じゃないよ」
「まさか、吉良……楯山のことを好きになったとかじゃないよな?!」
「は?! やめてくれ! そんなことあるわけない!」
一瞬ドキリとした。今日まさにそうなのかもと思ったばかりだったから。
「はぁー、良かった。それだけはマジ勘弁。お前が楯山のものになるなんて想像したくもない」
まぁね。男同士ですから。想像したくもないだろうな。
「な、なぁ。吉良は好きな人とか、いないのか……?」
「え……いや、俺は……」
そう聞かれてなぜか最初に浮かんだのは楯山だが、楯山には川上がいるし、吉良のこの感情だってもしかしたら勘違いかもしれない。
「俺にはそんな人いないよ」
だから、そう答えた。
「マジで! じゃあさ、俺のことは? 嫌いじゃない……?」
「うん……まぁ……」
普通に神宮寺はいい奴だと思う。
「じゃ、じゃあさ、俺と楯山が部屋を入れ替わるってのはどうだ? 俺と吉良が同室で、楯山と川上を一緒の部屋にするんだ」
ああ、なるほど。
神宮寺は楯山と川上の仲に気付いているようだ。だからこそ、恋人同士になった二人を同室にしてやりたいという寮長としての配慮なのか。
「俺は神宮寺と同室でも構わないよ。その方が楯山達も喜びそうだよな……」
「本当か?! 吉良が俺と同室でもいいって言ってくれるなんて夢みたいだよ。俺、ずっとお前と同室になりたかったんだ。部屋に戻ったら隣に吉良がいるなんてそんな最高シチュ他にねぇよ」
これは吉良に「余り物」感を感じさせないためのリップサービスなのだろう。寮長は皆への配慮が必要だ。
「早速、楯山達に言ってくるっ」
神宮寺はやけに嬉しそうだ。
そこへ、部屋に入ってきたのは川上だった。
「お! 川上! ちょうどいいところに」
「何が? え?! なんで吉良がここに?! ちょっと待てよ神宮寺、お前、吉良と二人きりだったのか?!」
川上は、なんでそんなに驚いているんだ……?
「ああそうだよ。今だけじゃない。これから毎日ずっとそうなる」
「は? どういう意味?」
「吉良が、俺と同室になってもいいと言ってくれたんだ」
「はぁ?! 嘘だろ?!」
川上はかなり驚いている。
「おいっ! 吉良、何かの間違いだよな? なんでお前、神宮寺なんかと……」
「俺は部屋を代わっても構わないと思ってるよ。俺と神宮寺、川上と楯山の部屋の方が川上達だって良——」
「ダメだ! 絶対にダメに決まってる! 吉良、お前、神宮寺を信用し過ぎだぞ!」
川上はものすごく怒ってる。何でだ……?
「おい、川上。邪魔するなよ。吉良が良いって言ってくれたんだから、諦めろよ。そもそもなんで吉良の同室がずっと楯山なんだよ。最初から決まってたとはいえ、不公平すぎないか?」
「だったら俺と吉良が同室になる」
「は? お前こそ危険だろ」
「お前に言われたくないな」
どうしたんだ、川上は。川上は恋人の楯山と同室になれた方が都合が良いんじゃないのか……?
「吉良、俺はお前が神宮寺と同室だなんて絶対に許さない。だから吉良も断れよ」
川上はなんだか必死だ。川上にも良かれと思って了承したのに……。
「わかったよ」
「おいっ! 吉良っ! 川上の一言でさっきの話を無かったことにするなよ!」
うわ、今度は神宮寺に怒られる。
「もう勝手にしてくれよ……」
俺はどうしたらいいんだよ……。
言い合う神宮寺と川上。はぁ、全くなんなんだ……。
二人の言い争いが落ち着いた頃、ふと吉良の脳裏に浮かんだこと。川上に、楯山とのことを訊ねてみようというアイデアだ。
「なぁ、川上。あのさ……」
「吉良? どした?」
「ちょっと、お前に訊きたいことがあるんだけど……」
「ああ。なんでも訊けよ。何?」
かなりプライベートなことなので、神宮寺の前では話せないと思った。
「あ、あの……川上と二人きりで話がしたいんだけど……」
「え……? 吉良?」
川上が信じられないといった表情をしている。
「俺と二人きりがいいのか……?」
「うん……ちょっとだけ……。じ、神宮寺が悪いわけじゃない。ちょっと話が混み入ってるだけで……」
「ちょっと待ってくれよ……。俺、心の準備が出来てない……。ヤバ……悶絶……」
川上はなんだか様子が変だが、対して神宮寺は吉良を睨みつけてくるので、「違う、別に神宮寺を邪険にしてるんじゃなくてっ」とこちらを宥めるのに必死になる。
「吉良が言うなら仕方ない……。俺はこの部屋を出てくが、廊下にいる。話が済んだらすぐに呼べよ」
怖っわ。そうだよな……一人だけ出て行けと席を外されたら誰だっていい気はしないよな……。
「ごめん、神宮寺……。ありがとう……」
申し訳ないなと謝ったら、「いいよ、吉良はいい子だな」と頭をぽんぽんされた。
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