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    サプライズプレゼント4

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「嬉しい……冬麻からペアデザインのネックレスをもらえたことも嬉しいし、俺が欲しがってたことに冬麻が気づいてくれたことも、冬麻が俺とペアのものを身につけてくれることも、全部、全部嬉しい……」

 ふと久我の顔を見ると、外なのに本当に涙ぐんでいて、冬麻は驚いた。
 久我ならなんでも持っているし、欲しいものを買うお金も十分に持っている。だからプレゼントなんて喜ばないかなと少し不安に思っていたから、まさかこんなに喜んでもらえるとは思わなかった。


「俺も安心しました。久我さんが誰かからもらったアクセサリーを着けていたら、ちょっと、嫌です……」
「それって、冬麻が俺を自分だけのものにしたいってこと?」
「うっ……」

 久我に言われて言葉に詰まる。自分は久我に束縛しないでくださいと言っているくせに、自分はどうなんだ、と突っ込まれているようだ。

「そんなものを俺が身に着けるわけがないだろう? そもそもアクセサリーは受け取らない。全部お断りだ。俺を縛っていいのは冬麻だけ。冬麻なら俺を雁字搦がんじがらめにしてくれていい。『一秒も離れないでください』って言われたら本当にずっとそばにいる。俺の人生で冬麻よりも大事なものは何もないんだ。冬麻に縛りつけられたら本望だよ」

 やばい。久我の目がやばい。久しぶりにこのヤンデレ臭がただよう目で見つめられた。

「冬麻……冬麻……」

 やばいやばい。完全ヤンデレモードに突入している。

「久我さんっ、落ち着いてくださいっ。あー、えーっとえーっと、桜っ、見ましょうか!」

 冬麻が久我をもとに戻そうとしているのに、久我は「今すぐ冬麻に触れたい……」とぐいぐい迫ってくる。

 桜の木の陰とはいえ、こんなにたくさんの人がいるのにイチャイチャモードはありえない。

「そうだ! ネックレス! 久我さんに着けてあげますね。少し屈んでくださいっ」

 冬麻は自分のぶんのネックレスを素早く首にかけて、次は背の高い久我にかけるために、ネックレスの留め具を外して準備する。

「いいの? 冬麻に着けてもらえるなんて、光栄だな」

 久我は冬麻の背の高さに合わせて屈み、じっと待っている。
 冬麻は久我の正面からゆっくりと首にネックレスを回し、首の後ろで留めた。

「少し向きを直します」

 留め具が綺麗に首の後ろになるように、ネックレスチェーンを回して整える。その間、久我は冬麻にされるがままだ。

「できました」

 久我の胸元に、冬麻が買ったネックレスが光っている。この姿が無事に見られて嬉しく思う。

 いろいろ誤解があって思っていたのと違うサプライズ演出になってしまったが、これはこれでサプライズになったかもしれない。



「これでお揃いですね」

 冬麻はネックレスを首にかけた状態で、久我に身体を寄せ、ネックレスのモチーフを久我のネックレスに近づけて、模様を繋げる。ふたり身体を寄せ合えば、首に下げたままでもピタッと模様を繋げることができる。

「ありがとう冬麻」

 あっと思ったときには、久我にキスをされていた。一瞬の隙をついた素早いキスで、唇を奪われてしまった。

「あ! こらっ、ちょっと久我さんっ! だ、誰かに見られてたら……!」

 久我はキスをしてすぐに冬麻から離れたが、一瞬とはいえ、誰か見ていたかもしれない。こんなところでキスなんて、めちゃくちゃ恥ずかしい。

「もし見られてたら、責任を取って冬麻と入籍する」

 んん……? それは、久我の思うツボなのではないだろうか。それを許したら責任を取りたくて仕方がなくて、街中でキスされまくることになってしまうのではないか。

「だって可愛い。たまらなく大好きだ。一緒にいればいるほど、どんどん好きになる」

 そんなことを久我は臆面もなく言ってくるから、冬麻はタジタジだ。
 いつもこうだ。久我に散々好き好き言われて、冬麻が恥ずかしくて耳まで真っ赤になり完全ノックアウトさせられる。


 ——やられっぱなしじゃダメだ!

 サプライズ、サプライズ……と久我を驚かせるような言葉を必死で考える。
 いつも、好きだと言われても「そういうこと言うのやめてくださいっ!」とかありきたりなことしか言えないから、今日こそ。


「久我さん」

 冬麻は背伸びをして久我の耳元に唇を寄せた。

「今夜、抱いてください」

 ——これでどうだっ!

 冬麻が渾身のサプライズな言葉を久我に浴びせたのに、久我の反応が返ってこない。もしかして、周りが賑やかでよく聞こえなかったのだろうか。

「……冬麻」

 久我の抑揚のない、低い声。もしかしてふざけすぎだと怒ったのだろうか。

「すまない。もう我慢の限界だ。家に帰ろう」
「えっ?」

 急に久我に腕を引っ張られ、歩いてきた道をそのまま家の方向に向かって歩かされる。

「夜まで待ちきれない。デートは中断して、家で一度イチャイチャ休憩しよう」
「はぁっ?」

 違う。全然違う。夜だって言ったのに、なんで今すぐ!?



 その後、冬麻は家に入った途端、玄関で久我に食われることとなる……。



 ——番外編『サプライズプレゼント』完。
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