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72.独占欲
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「久我さん。俺のこと好きですか?」
夜の情事を終えたあと久我が冬麻を抱き締めてきたので、冬麻はその抱擁を受け入れながら久我に訊ねる。
「うん。大好き」
久我は迷いなく答える。
「俺は、これからもずっと久我さんの一番でいられますか?」
「もちろん。俺が冬麻を嫌いになることなんて絶対にない。ずっと冬麻を好きでいる」
久我は冬麻の身体をさらに強く抱き締めてきた。
「俺、久我さんのその言葉、信じてます。だから久我さんは結婚していいですよ」
「冬麻?!」
久我が慌てて冬麻の顔を覗き込んできた。
「遠波さんにプロポーズしたらどうですか? ホテルの令嬢さんでもいいです。久我さんなら絶対に上手くいきますよ」
「ちょっと待って、意味がわからない。なんで俺は冬麻が好きなのに他の人と結婚しなきゃいけないの?」
「久我さんは普通の人じゃないです。イケメンだし、仕事の才能もあるし、お金持ちだし、優しくて気遣いもできて、そんな人の相手が俺だけなんてもったいないです。ステキな女の人と結婚して、優秀な遺伝子を子供に引き継いだほうがいいんじゃないですか?」
「冬麻……」
「家族を大切にしてくれてもいいですから、俺のことも忘れずに時々構ってください。で、俺に会うときはいつも『冬麻が一番だ』って言ってください。そしたら俺は頑張れますから」
きっと久我なら冬麻のことをないがしろにすることなんてない。会いたいと言えばきっと会いに来てくれるはずだ。
「遠波さんも、久我さんに誰か恋人がいるんじゃないかって勘づいてました。梶ヶ谷さんにも俺のせいですぐにバレちゃいましたし、いつか全部バレてしまう前に、久我さんが遠波さんと結婚しちゃえばいいんですよ。そしたらそれ以上は誰も詮索したりしませんって」
遠波と久我をシェアしていけばいい。遠波の存在は冬麻を隠してくれる。久我が望むなら実の子を持つこともできる。
「冬麻にそんな酷いことを言わせてるのは俺? 俺が悪かったんだよね?」
久我は冬麻の肩に触れた。
「俺、冬麻の願いはなんでも叶えてあげたいと思ってたけど、他の人と結婚しろっていうのは無理だ。できない。他の人と関係を持って子供を作れも無理だ。冬麻以外の人とする気なんてない」
結婚してもいいと自分で言っておきながら、久我にそれを否定されて嬉しいと思うなんて、すごく面倒くさい性格だ。
「ごめん冬麻。謝るよ。俺が冬麻を不安にさせた。彼女には二度と会わない。だから冬麻のそばにいさせて」
まただ。遠波に二度と会わないと言われてやっぱり嬉しいと思っている。
なんて嫌な恋人なんだろうと冬麻は自己嫌悪に陥る。
「それだけじゃ足りない? 俺の予定は秘書になってから全部冬麻は把握できてるわけだし、あとは、俺に首輪をつける?」
久我に言われて気がついた。これはきっと独占欲だ。
結婚してもいいだなんて思ってもみないことを言って久我の気持ちを試すような真似をして……。
さっき「冬麻が許してくれるなら俺は結婚したい。冬麻には新しい家を買うからこのマンションを出て行ってくれる? 結婚しても時々冬麻に会いに行くね」と久我に言われたらショックで泣きだすくせに。
「久我さん……っ!」
冬麻は久我に抱きついた。
いつの間にこんなに好きになってたんだろう。それこそ最初は久我に執着されてたはずなのに、気がついたら冬麻のほうが久我がいないと駄目になっている。
「冬麻は可愛い。俺、本当に冬麻のこと大好きだ」
久我に上を向かされたあと、唇にキスをされる。
「安心して。俺の全部を冬麻にあげるから」
久我は再び冬麻にキスをした。
夜の情事を終えたあと久我が冬麻を抱き締めてきたので、冬麻はその抱擁を受け入れながら久我に訊ねる。
「うん。大好き」
久我は迷いなく答える。
「俺は、これからもずっと久我さんの一番でいられますか?」
「もちろん。俺が冬麻を嫌いになることなんて絶対にない。ずっと冬麻を好きでいる」
久我は冬麻の身体をさらに強く抱き締めてきた。
「俺、久我さんのその言葉、信じてます。だから久我さんは結婚していいですよ」
「冬麻?!」
久我が慌てて冬麻の顔を覗き込んできた。
「遠波さんにプロポーズしたらどうですか? ホテルの令嬢さんでもいいです。久我さんなら絶対に上手くいきますよ」
「ちょっと待って、意味がわからない。なんで俺は冬麻が好きなのに他の人と結婚しなきゃいけないの?」
「久我さんは普通の人じゃないです。イケメンだし、仕事の才能もあるし、お金持ちだし、優しくて気遣いもできて、そんな人の相手が俺だけなんてもったいないです。ステキな女の人と結婚して、優秀な遺伝子を子供に引き継いだほうがいいんじゃないですか?」
「冬麻……」
「家族を大切にしてくれてもいいですから、俺のことも忘れずに時々構ってください。で、俺に会うときはいつも『冬麻が一番だ』って言ってください。そしたら俺は頑張れますから」
きっと久我なら冬麻のことをないがしろにすることなんてない。会いたいと言えばきっと会いに来てくれるはずだ。
「遠波さんも、久我さんに誰か恋人がいるんじゃないかって勘づいてました。梶ヶ谷さんにも俺のせいですぐにバレちゃいましたし、いつか全部バレてしまう前に、久我さんが遠波さんと結婚しちゃえばいいんですよ。そしたらそれ以上は誰も詮索したりしませんって」
遠波と久我をシェアしていけばいい。遠波の存在は冬麻を隠してくれる。久我が望むなら実の子を持つこともできる。
「冬麻にそんな酷いことを言わせてるのは俺? 俺が悪かったんだよね?」
久我は冬麻の肩に触れた。
「俺、冬麻の願いはなんでも叶えてあげたいと思ってたけど、他の人と結婚しろっていうのは無理だ。できない。他の人と関係を持って子供を作れも無理だ。冬麻以外の人とする気なんてない」
結婚してもいいと自分で言っておきながら、久我にそれを否定されて嬉しいと思うなんて、すごく面倒くさい性格だ。
「ごめん冬麻。謝るよ。俺が冬麻を不安にさせた。彼女には二度と会わない。だから冬麻のそばにいさせて」
まただ。遠波に二度と会わないと言われてやっぱり嬉しいと思っている。
なんて嫌な恋人なんだろうと冬麻は自己嫌悪に陥る。
「それだけじゃ足りない? 俺の予定は秘書になってから全部冬麻は把握できてるわけだし、あとは、俺に首輪をつける?」
久我に言われて気がついた。これはきっと独占欲だ。
結婚してもいいだなんて思ってもみないことを言って久我の気持ちを試すような真似をして……。
さっき「冬麻が許してくれるなら俺は結婚したい。冬麻には新しい家を買うからこのマンションを出て行ってくれる? 結婚しても時々冬麻に会いに行くね」と久我に言われたらショックで泣きだすくせに。
「久我さん……っ!」
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いつの間にこんなに好きになってたんだろう。それこそ最初は久我に執着されてたはずなのに、気がついたら冬麻のほうが久我がいないと駄目になっている。
「冬麻は可愛い。俺、本当に冬麻のこと大好きだ」
久我に上を向かされたあと、唇にキスをされる。
「安心して。俺の全部を冬麻にあげるから」
久我は再び冬麻にキスをした。
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