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68.上書き ※

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「俺ね、梶ヶ谷と冬麻がふたりでいるとき、どんな様子なのかをどうしてもこの目で見てみたかった。もしかしたら冬麻はあいつに言い寄られて嫌々誘いに付き合ってるだけかもしれないとも思ったし、案外冬麻のほうが梶ヶ谷に夢中になってるのかもしれないし、全部は俺の思い違いで、ただの友人関係の可能性もあった。ふたりの関係性がわからなかったからそこを確認したかったんだ」
「そうだったんですか……」
「冬麻があいつと仲良く話をする姿をみても邪魔したりはしない、冷静でいようと決めてたんだ。それが……」

 久我は右手で顔を覆い、苦悩の表情を浮かべる。

「GPSの動きを確認していたら、家に帰ったはずの冬麻が外出した。こんな時間からどこに行くんだと思ってたら、ありえないことに行き先はホテルだった。それを見たとき、俺の理性が全部飛んだ」

 やばい。そのときのことを思い出しているのか、久我の形相は未だかつてないくらいに恐ろしく、負のオーラが立ち込めているような……。


「仕事どころじゃない。他の何も考えられなくて、ぶち壊してやる、絶対に許さないってホテルに乗り込んでったんだ」

 久我は冬麻の行動を浮気だと思ったのかもしれない。冬麻のほうから梶ヶ谷に会いにホテルに出向いているのだから、そう思われても仕方のない状況だった。だから梶ヶ谷のもとから冬麻を奪還したあとも、無言のまま、浮かない顔をしていたのか。



「ふたりが部屋に入る前に止められたら、冬麻のここに痕なんてつけさせなかったのに……」

 久我はシャツの上から冬麻の肩に触れた。そこは梶ヶ谷にキスの痕をつけられたところだ。
 さっきホテルにいたとき冬麻の服が乱れていたから、久我がそれを直してくれたときに気付かれたのだろう。

「他には……? あいつに触られた……?」
「す、少しだけ……ぜっ、全然そんな……」

 冬麻の脳裏にあの嫌な記憶が蘇ってくる……梶ヶ谷の手で、身体のあちこちを撫で回されて、耐えなきゃと思っているのに嫌で嫌でしょうがなくて——。

「ごめん!」

 久我は突然、冬麻をきつく抱き締めてきた。

「変なこと聞いた。もう聞かない。冬麻が震えてる……」

 久我に言われて気がついた。冬麻は平静を装っているつもりだったが、身体が震えていたみたいだ。
 久我は苦しいくらいに抱き締めてくる。冬麻の震えがとっくに収まっても、ずっと。

「久我さん……お願いがあるんです……」
「なに? どうしたの……?」
「あの……久我さん、俺のこと抱いてくれませんか……?」
「え!!」

 久我は信じられないといった様子で、冬麻の顔を眺めている。

「駄目ですか? 俺、久我さんにいっぱいして欲しいんです。痕は消えないけど、汚いものはシャワーでちゃんと流してきますから、そしたら俺のこと、抱いてくれますか? それとも、この身体じゃ気持ち悪いですか……?」

 他の男のキス痕をつけている身体など見たくもないだろう。気持ち悪いと目を背けられても仕方がないとわかっている。


「……俺が洗い流す」

 久我は冬麻の背中と膝の裏に腕を滑り込ませてきた。

「行くぞ冬麻。全部忘れさせてやる」

 久我は軽々と冬麻の身体を持ち上げ、バスルームへと連行した。





「はぁっ……んっ……」

 冬麻は自分がおかしくなってしまったのかもしれないと思った。
 求めても、求め足りない。いっそ溶けて久我とひとつのものになってしまいたいと思うくらいだ。

 激しく唇を奪われたあと、身体中を愛撫され、たくさんの場所にキスをされた。
 そのあといつものように久我と繋がって互いの欲を吐き出し合ったのに、まだ冬麻の身体は熱を帯びている。

「あっ、待って……すごい……はぁっ……」

 達したあとの過敏になった身体を攻められ、冬麻はさっきからものすごく感じてしまっている。

「次、ナカでイってみて」

 久我は冬麻の中の気持ちがよくなる部分に指で絶妙な刺激を与えてきた。

「あっ、あっ……!」

 久我には冬麻の身体の全部を掌握されている。冬麻の好きな体位や、感じる場所。なにも言わなくても冬麻のして欲しいことを久我には見透かされていて、惜しみなく久我はそれを冬麻に与えてくる。

「あっ……だめっ……もうイッ……! あぁ……っ!」

 前への刺激なしに後ろだけでイかされる。全身に甘い電流のようなものを感じて冬麻がピクピク身体を震わせていると、その身体を久我が抱き締めてきた。
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