70 / 124
58.初恋 ※
しおりを挟む
「久我さんの初恋はいつだったんですか?」
「初恋?!」
「はい。これ読んでたら、なんか気になって……」
久我に『初恋』という文字が表紙に書かれた本を見せた。寝る前に冬麻はリビングのソファで初恋をテーマにした本を読んでいて、久我に初恋の話を聞いてみようかなと思い立ったのだ。
「俺の初恋は冬麻だよ」
久我は冬麻のすぐ隣に座り、冬麻の膝を撫でてきた。
「もう! そういうのはいいですから。幼稚園の先生とか、中学校の同級生とか、俺に出会う前に何かないんですか?」
久我が冬麻と出会ったのは二十歳のときだったと聞いた。冬麻としてはそれ以前の久我の恋愛遍歴を聞いてみたかった。
「ない。恋愛とかよくわからなかったな。俺と陽向が生きていくことだけで精一杯だったから」
「そっか。久我さん、陽向くんの面倒をずっとみてたんでしたね……。でも、モテたでしょ?」
学生時代の久我もきっとかっこよかったに違いない。それで特定の相手がいなかったのなら、モテモテだったのではないか。
「俺のそんな話、聞きたい?」
「はい。すごく」
隣に座る久我に視線をむけると、久我は「冬麻が知りたいなら」と微笑んだ。
「今はもう慣れたけど、出会った人に俺はほとんど好意を持たれるんだ。学生のときは修学旅行の班が同じだとか、一緒に学級委員をやったとか、そんなことだけですぐに告白された」
久我と修学旅行で京都の街を観光して歩いたり、放課後ふたりきりで委員会活動をしていたら、久我に惚れてしまうかもしれない。
「仕事を始めてからもそうだ。こっちは真面目にビジネスの話をしているのに、まともに取り合ってもらえない。質問はありますかって聞くと俺のプライベートのことばかり聞かれて辟易したよ」
たしかに。こんなに仕事ができてかっこいい人に出会えることなんて滅多にない。仕事そっちのけで婚活にはしりたくなる気持ちもわからなくもない。
「みんなに好かれる久我さんに選んでもらえた俺は幸せ者ですね」
冬麻が久我の肩に寄りかかると、久我は冬麻の背中に腕を回して冬麻を抱き寄せた。
「違う。俺が冬麻に選んでもらえたんだ。冬麻とこうしていられる時間が一番幸せだ」
たまらないといった様子でぎゅっと抱き締められる。久我はいつもいい匂いがする。この人のそばにいるとすごく安心する。
「久我さん、ファーストキスはいつだったんですか?」
久我の腕の中で身体を回して、冬麻は久我の膝の上にまたがる体勢で、久我の表情を伺う。
「え?!」
「それも聞きたいです。言うと俺は久我さんです。久我さんからされたのが、初めてでした……」
久我と初めてキスをしたとき冬麻は二十歳だった。初めてが男同士のキスで、そのあとも冬麻は久我以外の人とそういったことはしていない。
「今日の冬麻はどうしたの? 俺の話なんて聞いてもつまらないでしょ?」
「久我さんは、俺とするよりも前に、他の人とキスしたことあるんですか……?」
久我はあのとき三十歳。二十歳だった冬麻とは違い、いろんな色恋沙汰は既に経験済みだったのではないか。
恋人はいなくとも、一夜限りの行きずりの相手やセフレ。風俗、それに性接待——。
「ないよ。ない。その話はおしまい」
久我は何かを振り払うように首を横に振り、それからいきなり冬麻の唇にチュッとキスをする。
「俺には冬麻だけ」
久我はそのまま冬麻の唇を何度も奪う。
「待っ……んっ……はぅ……」
久我にもっと話を聞きたかったのに、久我に唇を塞がれてしまい、それは叶わなかった。
キスをしながら久我が冬麻の下半身に手を触れた。
「あっ……」
服の上からでも、敏感なところを撫でられるとそこがどんどん反応を示してくる。
「冬麻。ここでしてもいい?」
久我にそう囁かれ、羞恥で顔がほてってくる。リビングは明るいし、広すぎてそういうことをするにはなんだか落ち着かない。
そう思っているのに、久我の手が服の中に侵入し、久我が肌を撫でると冬麻の身体は何かを期待する。久我の巧みなテクニックで性感帯を攻められるとつい吐息が漏れる。
「昨日、散々苛めたから、ここはやめておこうか」
久我の指が冬麻の後孔に触れた。そこに触れられるといつも身体がビクッと震える。
「いえ、大丈夫です……」
久我に酷くされたことなと一度もない。昨日みたいに激しくされてもたまにはいいのにな、と思うくらいだ。
「無理しない。そういうことしなくても、冬麻のことちゃんと気持ちよくしてあげるから」
冬麻が久我の上にまたがってマウントをとっていたのに、呆気なく久我に返された。
ソファの上に押し倒され、下に履いていたものをすべて剥ぎ取られる。久我は冬麻の下半身に顔を埋め、冬麻のそれを口に含んだ。
「あっ、駄目っ……はぁん……」
いつもそうだ。久我主導で、冬麻は久我の手によって快楽に沈められていく——。
「初恋?!」
「はい。これ読んでたら、なんか気になって……」
久我に『初恋』という文字が表紙に書かれた本を見せた。寝る前に冬麻はリビングのソファで初恋をテーマにした本を読んでいて、久我に初恋の話を聞いてみようかなと思い立ったのだ。
「俺の初恋は冬麻だよ」
久我は冬麻のすぐ隣に座り、冬麻の膝を撫でてきた。
「もう! そういうのはいいですから。幼稚園の先生とか、中学校の同級生とか、俺に出会う前に何かないんですか?」
久我が冬麻と出会ったのは二十歳のときだったと聞いた。冬麻としてはそれ以前の久我の恋愛遍歴を聞いてみたかった。
「ない。恋愛とかよくわからなかったな。俺と陽向が生きていくことだけで精一杯だったから」
「そっか。久我さん、陽向くんの面倒をずっとみてたんでしたね……。でも、モテたでしょ?」
学生時代の久我もきっとかっこよかったに違いない。それで特定の相手がいなかったのなら、モテモテだったのではないか。
「俺のそんな話、聞きたい?」
「はい。すごく」
隣に座る久我に視線をむけると、久我は「冬麻が知りたいなら」と微笑んだ。
「今はもう慣れたけど、出会った人に俺はほとんど好意を持たれるんだ。学生のときは修学旅行の班が同じだとか、一緒に学級委員をやったとか、そんなことだけですぐに告白された」
久我と修学旅行で京都の街を観光して歩いたり、放課後ふたりきりで委員会活動をしていたら、久我に惚れてしまうかもしれない。
「仕事を始めてからもそうだ。こっちは真面目にビジネスの話をしているのに、まともに取り合ってもらえない。質問はありますかって聞くと俺のプライベートのことばかり聞かれて辟易したよ」
たしかに。こんなに仕事ができてかっこいい人に出会えることなんて滅多にない。仕事そっちのけで婚活にはしりたくなる気持ちもわからなくもない。
「みんなに好かれる久我さんに選んでもらえた俺は幸せ者ですね」
冬麻が久我の肩に寄りかかると、久我は冬麻の背中に腕を回して冬麻を抱き寄せた。
「違う。俺が冬麻に選んでもらえたんだ。冬麻とこうしていられる時間が一番幸せだ」
たまらないといった様子でぎゅっと抱き締められる。久我はいつもいい匂いがする。この人のそばにいるとすごく安心する。
「久我さん、ファーストキスはいつだったんですか?」
久我の腕の中で身体を回して、冬麻は久我の膝の上にまたがる体勢で、久我の表情を伺う。
「え?!」
「それも聞きたいです。言うと俺は久我さんです。久我さんからされたのが、初めてでした……」
久我と初めてキスをしたとき冬麻は二十歳だった。初めてが男同士のキスで、そのあとも冬麻は久我以外の人とそういったことはしていない。
「今日の冬麻はどうしたの? 俺の話なんて聞いてもつまらないでしょ?」
「久我さんは、俺とするよりも前に、他の人とキスしたことあるんですか……?」
久我はあのとき三十歳。二十歳だった冬麻とは違い、いろんな色恋沙汰は既に経験済みだったのではないか。
恋人はいなくとも、一夜限りの行きずりの相手やセフレ。風俗、それに性接待——。
「ないよ。ない。その話はおしまい」
久我は何かを振り払うように首を横に振り、それからいきなり冬麻の唇にチュッとキスをする。
「俺には冬麻だけ」
久我はそのまま冬麻の唇を何度も奪う。
「待っ……んっ……はぅ……」
久我にもっと話を聞きたかったのに、久我に唇を塞がれてしまい、それは叶わなかった。
キスをしながら久我が冬麻の下半身に手を触れた。
「あっ……」
服の上からでも、敏感なところを撫でられるとそこがどんどん反応を示してくる。
「冬麻。ここでしてもいい?」
久我にそう囁かれ、羞恥で顔がほてってくる。リビングは明るいし、広すぎてそういうことをするにはなんだか落ち着かない。
そう思っているのに、久我の手が服の中に侵入し、久我が肌を撫でると冬麻の身体は何かを期待する。久我の巧みなテクニックで性感帯を攻められるとつい吐息が漏れる。
「昨日、散々苛めたから、ここはやめておこうか」
久我の指が冬麻の後孔に触れた。そこに触れられるといつも身体がビクッと震える。
「いえ、大丈夫です……」
久我に酷くされたことなと一度もない。昨日みたいに激しくされてもたまにはいいのにな、と思うくらいだ。
「無理しない。そういうことしなくても、冬麻のことちゃんと気持ちよくしてあげるから」
冬麻が久我の上にまたがってマウントをとっていたのに、呆気なく久我に返された。
ソファの上に押し倒され、下に履いていたものをすべて剥ぎ取られる。久我は冬麻の下半身に顔を埋め、冬麻のそれを口に含んだ。
「あっ、駄目っ……はぁん……」
いつもそうだ。久我主導で、冬麻は久我の手によって快楽に沈められていく——。
79
お気に入りに追加
1,007
あなたにおすすめの小説
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
【R18】らぶえっち短編集
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)
R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。
※R18に※
※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。
※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。
※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。
※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
【R18】お嫁さんスライム娘が、ショタお婿さんといちゃらぶ子作りする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
前話
【R18】通りかかったショタ冒険者に襲い掛かったスライム娘が、敗北して繁殖させられる話
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/384412801
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
壁の花令嬢の最高の結婚
晴 菜葉
恋愛
壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。
社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。
ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。
アメリアは自棄になって家出を決行する。
行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。
そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。
助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。
乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。
「俺が出来ることなら何だってする」
そこでアメリアは考える。
暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。
「では、私と契約結婚してください」
R18には※をしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる