8 / 33
十二才 院外学習と盗賊団
03
しおりを挟む
暗闇が空間を支配し、天空に浮かぶ月や星空が輝く夜。
合同学年主任に率いられた院外学習の集団は、近場の村に学院名義で宿をとっていた。
宿泊人数が多いため、一校で数か所の宿をとっていた。
その中の休憩室。
「盗賊団は、こんな闇夜ではなく昼間に活動をおこなっていたらしいよ。
人さらいもおこなっていたらしいね」
教師の言葉にキリュウは唾を呑み込んだ。
隣のカエアは頭から青ざめているようだった。
それを聞いている最中に彼のそでを彼女は引っ張った。
「私もさらわれていたかなあ?
ねえどう思う?」
カエアがキリュウの尋ねた。
彼は、両肩をすぼめて手を上げた。「そんなわけないだろう」と同時に言うのも忘れることもなく。
その意見を聞いたカエアは小さく泣き始めた。
「泣いても誰も動かないよ」
その言葉を聞くと彼女はキリュウ目を正面から見つめた。
いや睨みつけた。
キリュウは目を睨み返すしたが、圧迫感に負けたのか視線をそらした。
彼の視界にボウたち三人が、悪ふざけをしているのが見えた。
それ以外の同級生たちは思い思いに過ごしている。
この学院は同学年内で同じ校舎に三学級あった。
一学級十数人。
カエアの隣に彼女と仲良しの子が来て一緒に会話しているようだった。
担任は休憩室でゆっくりと座っているいるようだった。
彼の傍らにキリュウは歩いていった。
「おや、キリュウさん。
個室に戻るのかい?」
彼は担任の前の椅子に座った。暫くすると隣に背の高いザマが笑顔になりながら隣に座った。
「よおキリュウ。
明日の向かう場所はどこだか知ってっか?」
キリュウは上下の唇を結びつけた。
それから胸をそらして答える。
「資料館だよね。
昔の生活の情報を展示しているんだよ、ね」
キリュウは腕を組み頷きながら、脚を組んだ。
ザマの視線を受け止めた。
ザマは、彼の様子を見ていたからか、徐々に目つきが変わってきた。
「ちっ、分かってんのか」
ザマは椅子から立ち上がると、自分の親分の方に歩いて行った。
「先生、じゃあ僕は個室に戻ります」
キリュウは、担任に声をかえると席を立った。
学院の院外学習の集団は、都市ポロポロに戻ってきた。
太陽が真上にあるころに着いた。
生徒たちは、合同学年主任の案内に従いながら大きな料亭に入った。
そこで一通り食事を楽しむと資料館に向かった。
資料館は、庶民の生活を展示しているスペースに大きく場所をとっていた。
キリュウたちは先日と同じ班に分かれて内部を探索して歩いていく。
展示内容は、生活用具や服飾、さらにはブルライドン地方の産業構造などだった。
庶民の生活展示で、盗賊団にさらわれた子供もいたらしいとなっていた。
彼らも教育され団員になっていたらしい。
付属した展示スペースでは、襲撃してきた竜の姿が描き出されていた。
キリュウはその竜の様子を見つめる。
鱗に覆われた頭部につながる太い首。
胴体から巨大な蝙蝠のような皮膜のはられた四枚の翼。
さらに強靭そうな脚とものを動かすのが得意そうな腕。
長い尾は周囲に展開している戦士たちを弾き飛ばしたりした。
一頭ずつ異なった息などを吐くことができた。
伝説では竜では、この竜は嵐を吹き荒らすことができたそうだった。
「なあ、ヒーネン。
あの竜の顎は蛇のように大きく開くようだね」
キリュウは隣の生徒に声をかけた。
しかし、返事がなく彼は振り向いた。
隣には彼にとって幼馴染のカエアが隣にいた。
「あれ、ヒーネンは?」
「彼は、他の班員と一緒に文章をよく読んでいるわ。
キリュウ君と違って、竜の能力や体躯には興味がないみたいだから」
彼は、彼女が指差す方角に顔を向けた。
他の班員の男女五人はひと塊となっているようだった。
そちらの方に歩いていく。
彼の気配に気づいたのか班長のヒーネンが振り向いた。
キリュウの頭には、カエアも含めた六人は庶民の生活の方に興味があるように想像された。
「つまんないもの見てるんだな」
キリュウは小さくぽつりと言った。
夕方を微妙に過ぎた帰宅道。
カエアと一緒に帰るキリュウ。
曇りで覆われた天候のため、周りが薄暗くなってきていた。
都市の住人は、帰宅の路につく人にもちらほら行き交う。
「それじゃあ、キリュウ君。
また明日ね」
明日は普段通りに学院の登校日であった。
数名の生徒が学年全体の前で発表する機会もあるであろう。
キリュウは太陽の沈む間際の薄朱色に染まった雲を背に立つカエアを見た。
容姿の輪郭がうっすらと浮かび上がっていた。
いつも見ているより可愛く彼は思えた。
「ああ。また明日な」
彼女の家系が経営している診療院に併設された自宅の扉に手をかけたカエア。
彼女は笑ったが扉を閉めて中に入っていった。
ひとり残されたキリュウは、息を吐くと空を見上げた。
今は秋。
街路樹などが木の実などを一斉につけ始めた頃であった。
合同学年主任に率いられた院外学習の集団は、近場の村に学院名義で宿をとっていた。
宿泊人数が多いため、一校で数か所の宿をとっていた。
その中の休憩室。
「盗賊団は、こんな闇夜ではなく昼間に活動をおこなっていたらしいよ。
人さらいもおこなっていたらしいね」
教師の言葉にキリュウは唾を呑み込んだ。
隣のカエアは頭から青ざめているようだった。
それを聞いている最中に彼のそでを彼女は引っ張った。
「私もさらわれていたかなあ?
ねえどう思う?」
カエアがキリュウの尋ねた。
彼は、両肩をすぼめて手を上げた。「そんなわけないだろう」と同時に言うのも忘れることもなく。
その意見を聞いたカエアは小さく泣き始めた。
「泣いても誰も動かないよ」
その言葉を聞くと彼女はキリュウ目を正面から見つめた。
いや睨みつけた。
キリュウは目を睨み返すしたが、圧迫感に負けたのか視線をそらした。
彼の視界にボウたち三人が、悪ふざけをしているのが見えた。
それ以外の同級生たちは思い思いに過ごしている。
この学院は同学年内で同じ校舎に三学級あった。
一学級十数人。
カエアの隣に彼女と仲良しの子が来て一緒に会話しているようだった。
担任は休憩室でゆっくりと座っているいるようだった。
彼の傍らにキリュウは歩いていった。
「おや、キリュウさん。
個室に戻るのかい?」
彼は担任の前の椅子に座った。暫くすると隣に背の高いザマが笑顔になりながら隣に座った。
「よおキリュウ。
明日の向かう場所はどこだか知ってっか?」
キリュウは上下の唇を結びつけた。
それから胸をそらして答える。
「資料館だよね。
昔の生活の情報を展示しているんだよ、ね」
キリュウは腕を組み頷きながら、脚を組んだ。
ザマの視線を受け止めた。
ザマは、彼の様子を見ていたからか、徐々に目つきが変わってきた。
「ちっ、分かってんのか」
ザマは椅子から立ち上がると、自分の親分の方に歩いて行った。
「先生、じゃあ僕は個室に戻ります」
キリュウは、担任に声をかえると席を立った。
学院の院外学習の集団は、都市ポロポロに戻ってきた。
太陽が真上にあるころに着いた。
生徒たちは、合同学年主任の案内に従いながら大きな料亭に入った。
そこで一通り食事を楽しむと資料館に向かった。
資料館は、庶民の生活を展示しているスペースに大きく場所をとっていた。
キリュウたちは先日と同じ班に分かれて内部を探索して歩いていく。
展示内容は、生活用具や服飾、さらにはブルライドン地方の産業構造などだった。
庶民の生活展示で、盗賊団にさらわれた子供もいたらしいとなっていた。
彼らも教育され団員になっていたらしい。
付属した展示スペースでは、襲撃してきた竜の姿が描き出されていた。
キリュウはその竜の様子を見つめる。
鱗に覆われた頭部につながる太い首。
胴体から巨大な蝙蝠のような皮膜のはられた四枚の翼。
さらに強靭そうな脚とものを動かすのが得意そうな腕。
長い尾は周囲に展開している戦士たちを弾き飛ばしたりした。
一頭ずつ異なった息などを吐くことができた。
伝説では竜では、この竜は嵐を吹き荒らすことができたそうだった。
「なあ、ヒーネン。
あの竜の顎は蛇のように大きく開くようだね」
キリュウは隣の生徒に声をかけた。
しかし、返事がなく彼は振り向いた。
隣には彼にとって幼馴染のカエアが隣にいた。
「あれ、ヒーネンは?」
「彼は、他の班員と一緒に文章をよく読んでいるわ。
キリュウ君と違って、竜の能力や体躯には興味がないみたいだから」
彼は、彼女が指差す方角に顔を向けた。
他の班員の男女五人はひと塊となっているようだった。
そちらの方に歩いていく。
彼の気配に気づいたのか班長のヒーネンが振り向いた。
キリュウの頭には、カエアも含めた六人は庶民の生活の方に興味があるように想像された。
「つまんないもの見てるんだな」
キリュウは小さくぽつりと言った。
夕方を微妙に過ぎた帰宅道。
カエアと一緒に帰るキリュウ。
曇りで覆われた天候のため、周りが薄暗くなってきていた。
都市の住人は、帰宅の路につく人にもちらほら行き交う。
「それじゃあ、キリュウ君。
また明日ね」
明日は普段通りに学院の登校日であった。
数名の生徒が学年全体の前で発表する機会もあるであろう。
キリュウは太陽の沈む間際の薄朱色に染まった雲を背に立つカエアを見た。
容姿の輪郭がうっすらと浮かび上がっていた。
いつも見ているより可愛く彼は思えた。
「ああ。また明日な」
彼女の家系が経営している診療院に併設された自宅の扉に手をかけたカエア。
彼女は笑ったが扉を閉めて中に入っていった。
ひとり残されたキリュウは、息を吐くと空を見上げた。
今は秋。
街路樹などが木の実などを一斉につけ始めた頃であった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる