警護者キリュウ

どらんくうざ

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十二才 院外学習と盗賊団

03

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 暗闇が空間を支配し、天空に浮かぶ月や星空が輝く夜。

 合同学年主任に率いられた院外学習の集団は、近場の村に学院名義で宿をとっていた。
宿泊人数が多いため、一校で数か所の宿をとっていた。
その中の休憩室。

「盗賊団は、こんな闇夜ではなく昼間に活動をおこなっていたらしいよ。
人さらいもおこなっていたらしいね」

 教師の言葉にキリュウは唾を呑み込んだ。
隣のカエアは頭から青ざめているようだった。
それを聞いている最中に彼のそでを彼女は引っ張った。

「私もさらわれていたかなあ?
ねえどう思う?」

 カエアがキリュウの尋ねた。
彼は、両肩をすぼめて手を上げた。「そんなわけないだろう」と同時に言うのも忘れることもなく。
その意見を聞いたカエアは小さく泣き始めた。

「泣いても誰も動かないよ」

 その言葉を聞くと彼女はキリュウ目を正面から見つめた。
いや睨みつけた。
キリュウは目を睨み返すしたが、圧迫感に負けたのか視線をそらした。

 彼の視界にボウたち三人が、悪ふざけをしているのが見えた。
それ以外の同級生たちは思い思いに過ごしている。
この学院は同学年内で同じ校舎に三学級あった。
一学級十数人。
 カエアの隣に彼女と仲良しの子が来て一緒に会話しているようだった。
担任は休憩室でゆっくりと座っているいるようだった。
彼の傍らにキリュウは歩いていった。

「おや、キリュウさん。
個室に戻るのかい?」
 彼は担任の前の椅子に座った。暫くすると隣に背の高いザマが笑顔になりながら隣に座った。

「よおキリュウ。
明日の向かう場所はどこだか知ってっか?」

 キリュウは上下の唇を結びつけた。
それから胸をそらして答える。

「資料館だよね。
昔の生活の情報を展示しているんだよ、ね」

 キリュウは腕を組み頷きながら、脚を組んだ。
ザマの視線を受け止めた。
ザマは、彼の様子を見ていたからか、徐々に目つきが変わってきた。

「ちっ、分かってんのか」

 ザマは椅子から立ち上がると、自分の親分の方に歩いて行った。
「先生、じゃあ僕は個室に戻ります」

 キリュウは、担任に声をかえると席を立った。

 学院の院外学習の集団は、都市ポロポロに戻ってきた。
太陽が真上にあるころに着いた。
 
 生徒たちは、合同学年主任の案内に従いながら大きな料亭に入った。
そこで一通り食事を楽しむと資料館に向かった。

 資料館は、庶民の生活を展示しているスペースに大きく場所をとっていた。

 キリュウたちは先日と同じ班に分かれて内部を探索して歩いていく。
展示内容は、生活用具や服飾、さらにはブルライドン地方の産業構造などだった。
庶民の生活展示で、盗賊団にさらわれた子供もいたらしいとなっていた。
彼らも教育され団員になっていたらしい。

 付属した展示スペースでは、襲撃してきた竜の姿が描き出されていた。

 キリュウはその竜の様子を見つめる。

 鱗に覆われた頭部につながる太い首。
胴体から巨大な蝙蝠のような皮膜のはられた四枚の翼。
さらに強靭そうな脚とものを動かすのが得意そうな腕。
長い尾は周囲に展開している戦士たちを弾き飛ばしたりした。
一頭ずつ異なった息などを吐くことができた。
伝説では竜では、この竜は嵐を吹き荒らすことができたそうだった。

「なあ、ヒーネン。
あの竜の顎は蛇のように大きく開くようだね」

 キリュウは隣の生徒に声をかけた。
しかし、返事がなく彼は振り向いた。
隣には彼にとって幼馴染のカエアが隣にいた。

「あれ、ヒーネンは?」

「彼は、他の班員と一緒に文章をよく読んでいるわ。
キリュウ君と違って、竜の能力や体躯には興味がないみたいだから」

 彼は、彼女が指差す方角に顔を向けた。
他の班員の男女五人はひと塊となっているようだった。
そちらの方に歩いていく。

 彼の気配に気づいたのか班長のヒーネンが振り向いた。
キリュウの頭には、カエアも含めた六人は庶民の生活の方に興味があるように想像された。

「つまんないもの見てるんだな」

 キリュウは小さくぽつりと言った。

 夕方を微妙に過ぎた帰宅道。
カエアと一緒に帰るキリュウ。
曇りで覆われた天候のため、周りが薄暗くなってきていた。
都市の住人は、帰宅の路につく人にもちらほら行き交う。

「それじゃあ、キリュウ君。
また明日ね」

 明日は普段通りに学院の登校日であった。
数名の生徒が学年全体の前で発表する機会もあるであろう。
キリュウは太陽の沈む間際の薄朱色に染まった雲を背に立つカエアを見た。

容姿の輪郭がうっすらと浮かび上がっていた。
いつも見ているより可愛く彼は思えた。

「ああ。また明日な」

 彼女の家系が経営している診療院に併設された自宅の扉に手をかけたカエア。
彼女は笑ったが扉を閉めて中に入っていった。
ひとり残されたキリュウは、息を吐くと空を見上げた。
今は秋。
街路樹などが木の実などを一斉につけ始めた頃であった。
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