悪役とは誰が決めるのか。

SHIN

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通じ会う想い

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 ドランとアイリスが居なくなった客間で、私は声をあげずに時おりしゃくりあげながら、エルの胸の中で泣いていた。エルは優しい手つきで私の背を撫でて落ち着かせてくれる。

 こうしていると、感情が高まり泣いたことが段々と恥ずかしくなってきた。
 さらには、エルに愛する人と言われた事にそれが本心かそれとも私を助けてくれる為の嘘なのか確認するのが怖くて、顔を見せなくて良いこの状況に甘んじている。



「お嬢、このままで良いから聞いてくれる?」
「……。」
「ユーリ、私は君を愛している。ドランがいるから諦めて居たが、ユーリに前世の話を聞いたとき歓喜した。」
「……。」
「酷い男と思われるかもしれないが、私は貴女が婚約破棄されるという事を聞いて本当に嬉しかったんだ。」



 確かに私は、エルに前世の記憶を持っていることを伝えた時に、婚約破棄の事も伝えてあった。
  その時からエルが吹っ切れたような表情をしてたのは、そういう事であったのか。



「貴女を私の手で幸せにしたい。」



 そんなのずるいわ。



「わ、私もエルを幸せにしたいわ。」



 きっと酷い顔をしている私にエルは見惚れる様な甘い笑みを浮かべて、優しく恥ずかしがる私にキスを落とした。








「それにしてもあの女は何を考えているんだか。」
「エル、怒っているの?」
「当然。」


 エルが落ち着いた私を膝の上に乗せて、手を腰に回して拘束している。
 抵抗などする気は無いが恥ずかしいのはかわりなくつい、飲み物に手を伸ばしてしまう。

 そうそう、我が家の有能な侍女が隙をみて軽い軽食と飲み物を用意してくれたんです。その時はエルとの姿に微笑ましい表情をされてしまいました。
 きっと、夜には父にも話がいっちゃうわね。ううっ。


 軽食をつまみながらエルを覗きみると、エルは少しむっとした表情をしていた。先程の会話から本当にアイリスにイラついているのがわかる。



「あの女、最初からユーリを悪役扱いして……。」
「まあ、原作では悪役令嬢と言われてましたしね。」
「そもそも、その原作を聞いても私には悪役令嬢とは思えない。」



 そうなのです。
 それは、私も思っていたこと。
 前世ではユーリは悪役令嬢と呼ばれていましたがそれは一部の者でした。その一部以外では私は『お人好し令嬢』と呼ばれていました。

 よくよく考えてください、悪役令嬢わたしのいちゃもんや苛めの結果、主人公アイリスが成長し周りに認められてゆくのです。
 それって、私が恨まれても良いという想いでアイリスが公爵令嬢になれるように指導している様じゃないですか。

 だから、お人好し。

 他の物語の多くの悪役令嬢だって踏み台になって主人公を成長させてるし、悪役令嬢ってなんで言われてるのかしらね。たしかに、命を奪おうとする悪役令嬢もいるけどさ。

 でも、私は違うわ。


「彼女も転生者だと思うわ。」
「ああ、悪役令嬢って叫んでたからね。」
「彼女も本当にドランと結婚するなら色々と手を打てば良いのに。」
「そういえば、ユーリの苛めってどんなのがあった?」


 そうねぇ。
 
 まずは、挨拶やマナーが出来ないことを詰って、次にダンスや貴族達の名前を知らないのを馬鹿にしたわ。
 それから、楽器の1つも出来ない事や国々の言葉が分からないことを哀れんで見せるはず。

 他にも細々とあったけど、どれも貴族になるなら必要なことよね。


「確かに、貴族になるにはそれぐらいは出来ないとな。マナーや挨拶にしては今時の平民は出来るものも多いが。」
「彼女、できなかったわね。」
「公爵夫人が反対なされるのもわかるよ。」
「公爵夫人は最後の砦だから。」
「たしか、あの女が色んな国々の集まる大会で優勝して、スピーチするんだっけ。」
「そうよ、そこで大国の言葉でスピーチして優勝トロフィーを公爵夫人に渡して私は負けを認めるのよ。役目が終えたってことだと思うけど。」


 今考えるとやっぱりユーリってばお人好しだわ。 

 大会はあと1ヶ月後に行われる。
 それまでに自分から行動を起こすかしら。あの感じでは想像はつかないけど。

 しかもこの大会、私も出るのよね。

 あらこれって対決?
 やだなぁ、関わり合いたくないのに。でも、国から選ばれた者だからボイコットも出来ないし。というか、彼女はそもそも出れるのかしらね。





  
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