この記憶、復讐に使います。

SHIN

文字の大きさ
上 下
12 / 31

魔法

しおりを挟む



 金と聞いてリドリーさんが悲鳴のような声をあげた。
 確か金は東の国の特産品で、世界に出回るまでに税金などで高騰する。
 でも、一律の料金でないと混乱が起きるからちゃんと規約がある。

 なので、たまに金山が発見されると大騒ぎ。高値なものは高値なのだ。
 もしも、抽出できれば国益として利用できるかも知れない。


「でも、どの質量でどのくらい出るかは分からないし、毒だし。」


 加熱したり、その物質の化学式が狂うだけで毒ガスが発生する。金を抽出することで化学式が変わり毒ガスが排出するかも知れないのだ。その毒ガスは僅かでも致死量だと聞いた気がする。


「それは、ちょっと不味いわね。」
「取り敢えず、金のことは言わないで兄貴に言っておく。もう、体調不良の奴がいたら調べないと。」
「それが良いわ。」


 数日見ていて分かったが、こういう時、イェシルの対応は迅速だ。
 普段はこちらがどうにかしないといけない程に気力の無さそうな人なのに、懐にいれた人が何かあるとめんどそうでは有るが守る様な人なのかなと観察していれば分かる。
 陰口を叩く人はそれを知らないなんて勿体ない。



「魔法と言えば、お前はどうなんだ?」
「私ですか?」
「ああ。」
「使った事も、何の属性があるかも分からないです。」


 調べる儀式の前に人質として扱われてたから、結局知らないのよね。
 嫌がらせかやらされていた掃除とかも、周りの魔法を使う侍女とは違って自力でやれって言われてたし。監視がいたから下手に優しくしてくれた人にはこんな状況は言えなかったからな。


「イェシル、確か鑑定できたはずよね。」
「プロには劣るがな。」
「やってあげたら?信頼はもうされてるだろうし。」


 やって頂けるならやって欲しい。

 リドリーさんの話では人を鑑定するには契約して鑑定するのと信頼して鑑定するのがあるらしい。
 契約して鑑定する方法はよく一定の年齢で行う調べる儀式の時に用いられ、契約書が必要で契約書の一ページにステータスが浮かび上がる。信頼して鑑定するのは、契約書は要らずお互いの頭の中にステータスが浮かび上がるらしい。


「初めてだし、何かしらアドバイスもできるでしょ。」
「はい。イェシル殿下なら平気です。アドバイスを貰えるなら嬉しいです。」


 何なら、この事変が終わったら何かの生け贄にでもなります。

 そう言えば、頭を抱え込むイェシル殿下と可愛そうな者を見るようなリドリーさん。

 この話は後で詳しくしようと肩を捕まれて熱弁された後、イェシル殿下と両手を握り、鑑定をして貰うことになった。

 ゆっくりと呼吸を大きく深くする。
 イェシル殿下の熱がこちらに浸透してくるかのように身体がポカポカとしてくる。


「『鑑定』」


ヒィスナ・クロエラ(18)

 転生者

魔力100/100
HP     50/100

魔法:属性 火 水 風 無
          生活魔法LEVEL1 解体LEVEL1 分析LEVELMax


 頭に浮かんできたのは、以上の事だった。
 攻撃手段の魔法が無いのは、その様な生活をしてこなかったからだと後から聞いた。

 本当かどうかは分からないが、イェシル殿下の今の鑑定レベルだとこれぐらいが限度だという。
 でも、この世界で初めて魔法らしい魔法に触れた気がして嬉しい。


「これで、目標が決まったわね。この2ヶ月で美貌を磨きつつ、魔法も磨くわよ。勿論マナーもね。」


 私が協力するわ。

 と、自信満々なリドリーさん。
 その言葉に、部屋の主以上にくつろいでいたフィシゴが待ってましたとばかりに、何かのリストを持ってくる。


「どうせなら、精霊族のあいつらにも協力させろ。」
「了解っす。」
「なら、私はあの根暗にでも協力して貰おうかしら。」
「あの男なら持参で城にいるぞ。」
「あら、じゃあ、東の国と海の国のあの子にも手紙を送りましょ。」



 あの、当事者である私が追い付いてないのですが。









 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

毒姫の婚約騒動

SHIN
恋愛
卒業式を迎え、立食パーティーの懇談会が良い意味でも悪い意味でもどことなくざわめいていた。 「卒業パーティーには一人で行ってくれ。」 「分かりました。」 そう婚約者から言われて一人で来ましたが、あら、その婚約者は何処に? あらあら、えっと私に用ですか? 所で、お名前は? 毒姫と呼ばれる普通?の少女と常に手袋を着けている潔癖症?の男のお話し。

〖完結〗二度目は決してあなたとは結婚しません。

藍川みいな
恋愛
15歳の時に結婚を申し込まれ、サミュエルと結婚したロディア。 ある日、サミュエルが見ず知らずの女とキスをしているところを見てしまう。 愛していた夫の口から、妻など愛してはいないと言われ、ロディアは離婚を決意する。 だが、夫はロディアを愛しているから離婚はしないとロディアに泣きつく。 その光景を見ていた愛人は、ロディアを殺してしまう...。 目を覚ましたロディアは、15歳の時に戻っていた。 毎日0時更新 全12話です。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

悪役令嬢に転生したけど記憶が戻るのが遅すぎた件〜必死にダイエットして生き延びます!〜

ニコ
恋愛
 断罪中に記憶を思い出した悪役令嬢フレヤ。そのときにはすでに国外追放が決定しており手遅れだった。 「このままでは餓死して死ぬ……!」  自身の縦にも横にも広い肉付きの良い体を眺め、フレヤは決心した。 「痩せて綺麗になって楽しい国外追放生活を満喫してやる! (ついでに豚って言いやがったあのポンコツクソ王子も見返してやる‼︎)」  こうしてフレヤのダイエット企画は始まったのだった…… ※注.フレヤは時々口が悪いです。お許しくださいm(_ _)m

〖完結〗容姿しか取り柄のない殿下を、愛することはありません。

藍川みいな
恋愛
幼い頃から、完璧な王妃になるよう教育を受けて来たエリアーナ。エリアーナは、無能な王太子の代わりに公務を行う為に選ばれた。 婚約者である王太子ラクセルは初対面で、 「ずいぶん、平凡な顔だな。美しい女なら沢山居るだろうに、なぜおまえが婚約者なのだ……」と言った。 それ以来、結婚式まで二人は会うことがなかった。 結婚式の日も、不機嫌な顔でエリアーナを侮辱するラクセル。それどころか、初夜だというのに 「おまえを抱くなど、ありえない! おまえは、次期国王の私の子が欲しいのだろう? 残念だったな。まあ、私に跪いて抱いてくださいと頼めば、考えてやらんこともないが?」と言い放つ始末。 更にラクセルは側妃を迎え、エリアーナを自室に軟禁すると言い出した。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 架空の世界ですので、王太子妃が摂政である王太子の仕事を行っていることもサラッと流してください。

わたくしは貴方を本当に…

SHIN
恋愛
『婚約を解消する。』 貴方はその言葉にどれだけの重みがあるのか知っていますか? わたくしが今まで貴方を支えるために学んだことが、その言葉ひとつで消え去るのです。 わたくしが血反吐を吐きながらやってきた事はその隣に居る少女のお蔭で無駄になったのですね。 良いですわ。わたくしは貴方の幸せを願ってますので。 真実の愛に目覚めたらしい王子殿下にフラレた元婚約者少女はどうなるの! たまに第三者視点が入ります。

処理中です...