224 / 245
残り幾日かの狂騒曲
一寸の光り
しおりを挟むあたしは、とあるエルフの国で生まれた。
エルフは自然と生き自然と友になりて自然の地で生を終えると言われている。それが我々にとって幸せなことなのだと。
そんな国の中で生きていくにはあたしと母は異質な存在である。
あたしの父は誰かは知らないがエルフの国の誰かだという。母はたまたまこの国に行商に来ていたただの人間だった。どこに惹かれたのかわからないが二人はあたしを生み出した。
他のエルフとは異なる短い、だけども普通の人よりは長い耳に、エルフが得意とする精霊魔法は使えないが精霊とは対話できる。
何事も中途半端で嫌になる。
他とは異質の存在を排除しようとするのはどこの国も同じ事。中途半端なアタシは格好のいじめの標的だった。嘲り笑い暴力も日常的にされた。だからこそアタシは魔法を諦め剣を鍛えた。
自分の身長よりも重い剣も扱えるようになれば周りの目は嘲りから恐怖に変わってゆくのが分かる。
成長したあたしが選んだのはクレイモアで本来の両手剣である物を片手で軽く扱えるまでになっていた。そうしてあたしはエルフの国から去る。勿論、報復はきちんとさせてもらった。今頃あたしは指名手配されていることだろう。
それからしばらくたったある日。
運命の出会いをすることになった。
精霊と対話して目的のモンスターを退治しようとしていた時だ。精霊達が急に怯え始め逃げ出した。その逃げ出す方向と反対の方に向かって進むと、とても神秘的な男が居た。
それがムラキ様との出会いだった。
ムラキ様との出会いは一筋の光の様であたしに知らない世界を見せてくれた。精霊や魔素など必要の無い魔法の様な物、あたしとは正反対の静の動作の格闘術。何よりもムラキ様が探していると言う人物はお姫様の様に輝いているのに戦いの時にだけ見せるその冷たい瞳が見惚れるほど美しかった。
彼女はいろんな『コトワリ』というのに雁字搦めで大変なのだという。ならば救って差し上げなければ。
ムラキ様はどうやら組織を作っているらしい。世界を変える大事な計画のための組織だ。
もしかしたらその組織に入ればあの方に直接会えるかもしれない。あたしは迷わずムラキ様に仲間にしてほしいと伝えて仲間になった。世界中に我々の仲間がいる。
いよいよ、世界を変える計画を実施していると待ち焦がれたあの方に会った。
人魚の国の海で計画のための要を作ろうと魔獣の封印された場所に来ていた。都合よくパーティーなんてしていたから簡単に忍び込めた。だけども要を作るための石がたまたまパーティーを途中で抜けてきた人魚に奪われた。
結局は取り戻せなかったけどあの方、シシリー様に会えたからもう良いわ。石を奪われてしまったのであまり行きたくなかったけどドラゴンの住むとある火山に行くことになってしまったけどあの方に生で、しかもあんなに間近で触れ合えるなんて感激。
そして今も目の前で立ち塞がる二人の姿をみて笑いがとまらない。
一人はよく知らない男だけど、もうひとりはあたしの待ち望んでいたあの御方。なんでこんなところにいるか知らないけどとても幸運だ。
その姿は変装のつもりかの男物の装備で身を固めていた。水の中であったときは動きづらいからだと思っていたけどそうね、麗しの女性が仲間と離れて生きてきたら変装もするはずだ。
「はじめまして。ムラキの手下さん。」
「な、何を‥…。」
「誰だ貴様!」
「やめろ!ムラキ様の探し人だ!」
確かに今はフードを被っているからわからないのかもしれないそう思ってフードを外すもその反応は芳しくない。事情を知らないお供がざわざわとしている。いったいどういうことなのか。
予想通り、女は目に見えて動揺している。
数分前、音の国に入る前に決着をつけたほうが良いと話になった時、コウにぃから初めてあったフリをしろと言われた。あれ程までにシシリーを慕っている様な感じなら似た人物が二人も居たら、しかも一度会っているのに会ってないふりをすれば動揺し制しやすくなると。
フードを外されようが前回はシシリーとして会っているので何も反応を返さないようにした。どうやら全員がムラキの探し人であるシシリーの顔を知っているわけでは無さそうだ。確かに魔の森の男もしらなかったようだしな。
「シシリー様、ご冗談は‥…。」
「シシリー?ああ。義妹の事か。そういえば、ムラキに悩んでいたな。」
「ストーカー?それに妹って。」
「あれ、ムラキに聞いてないのかい?ディーレクトゥスは養子にした子供と同い年の子が居るって。それに僕も母にそっくりだから自然と双子の様だろ?」
「まさか。」
「こちらはそのシシリーの婚約している男さ。」
「そろそろ結婚でもいいがな。」
いやいや、それは僕が困る。いや、有りか?
それは置いといて、話していくうちに色々と理解してきた女は鋭い目つきでコウにぃを睨んできた。
背にあるクレイモアを手に取ろうとしたところで異変に気が付いた様だ。そう。ただ単に話していた訳ではない。彼らの周りに話しているうちに暗器を仕込ませてもらったのだ。
彼女を動揺させたのもその仕込みに気づかれると困るから。
僕は手を彼らに見せつけて握りしめた。
それが合図となり周辺の地面から銀色に輝く針が彼らを襲いかかる。
0
お気に入りに追加
368
あなたにおすすめの小説
悪役とは誰が決めるのか。
SHIN
恋愛
ある小さな国の物語。
ちょっとした偶然で出会った平民の少女と公爵子息の恋物語。
二人には悪役令嬢と呼ばれる壁が立ちふさがります。
って、ちょっと待ってよ。
悪役令嬢だなんて呼ばないでよ。確かに公爵子息とは婚約関係だけど、全く興味は無いのよね。むしろ熨斗付けてあげるわよ。
それより私は、昔思い出した前世の記憶を使って色々商売がしたいの。
そもそも悪役って何なのか説明してくださらない?
※婚約破棄物です。
拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです
熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。
そこまではわりと良くある?お話だと思う。
ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。
しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。
ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。
生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。
これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。
比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。
P.S
最近、右半身にリンゴがなるようになりました。
やったね(´・ω・`)
火、木曜と土日更新でいきたいと思います。
一家処刑?!まっぴら御免ですわ! ~悪役令嬢(予定)の娘と意地悪(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。
この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。
最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!!
悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
その科学は魔法をも凌駕する。
神部 大
ファンタジー
科学が進みすぎた日本の荒廃。
そんな中最後の希望として作られた時空転移プログラムを用い歴史を変える為に一人敵陣に乗り込んだフォースハッカーの戦闘要員、真。
だが転移した先は過去ではなく、とても地球上とは思えない魔物や魔法が蔓延る世界だった。
返る術もないまま真が選んだ道は、科学の力を持ちながらその世界でただ生き、死ぬ事。
持ちうる全ての超科学技術を駆使してそんな世界で魔法を凌駕しろ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる