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青い光のスヴェトリナー
僕と兄上と最後の記憶
しおりを挟むムラキの配下との一戦を交えてから数日。
僕達は国に帰って早々に教会で魔神達と会っていた。そして奴らが執拗に気にしていた一見宝石にしか見えない石を見てもらったのだ。
まじまじと石を観察する紫暗の顔は曇り宜しくない。僕と戯れている六花に短く声をかけると石をこちらに投げやった。その石を軽くキャッチすると光に翳してこちらも唸り声を上げて困ったような顔をした。
側に控えるカトレア様もどことなく居心地が悪そうだ。
めったに見られないその姿は事の重大さを物語っている。
「これは本当にヤバいかもね。」
「六花が珍しく真面目に言うほどとてつもない代物と言うことだな。」
「酷いなぁ。もう。」
「一体どういうものか教えてほしいのだけど。」
僕達ではこれがどのように作用するのかわからなかった。
ムラキと同じ術式を使う僕でも『異界』『転移』など断片的な物が読めるだけだ。恐らくムラキがこの世界にいた事の理由でもあるとは思っていたのだが。
そもそもあいつがこの世界に何故いるのかも不明だ。自意識過剰では無いが僕にとっての悪い影響を持つ者をこの人方は世界に受け入れる訳は無いと思うのだけど。ムラキの特殊能力か?
「そうだね。これは世界を繋げる術式さ。」
「世界を繋げる‥…。」
これは予想だけどと六花が口を開いた。
ムラキの目的はこの世界と僕が前の人生を生きていた世界を繋げる事であろう。だけど魔神の支配下のあるこちらの世界に鑑賞するには気づかれずになおかつ膨大な力が必要となる。一箇所で力を溜めるのは溜めている間に計画がバレル可能性がある。なので要を複数用意しもともと膨大な魔力があるとこ、またはあってもおかしくないところで発動させた。
あの魔の森での配下の行動的にはそんな感じであろう。
恐らく向こうの世界でもそんなふうにムラキの仲間が動いて居る。もしも、このまま繋がってから気づいていたら、いくら魔王達と神達を統べる魔神達でも塞ぐのに数日はかかり混乱を極めていた。今の段階で気づけたことは幸いだと言っていた。
「こちらも対処をするが、奴らの事は‥…。」
「僕の最後の記憶ですね。」
「シンリ‥…。」
「僕の最後の記憶にムラキとその背後の者が有るんでしょ。」
「知っていたか。」
「コウにぃの隠し事なんて丸わかりだよ。」
記憶の数を聞いた時点で何かを隠していたのは知っていたし、それが僕にとっての辛い記憶なのもなんとなく分かっていた。しかもその記憶にはムラキ達が居るというのも奴らの言動から推察していた。兄上は迷っていたようだけど前にも言ったけどそれも僕を作り上げている一つだから。
「僕は大丈夫だよ。」
「‥…分かっている。お前は強い。」
最後の記憶にはムラキとその背後にいる人物の事がある。一体彼らとの関係はどんなものだったのか知らないけど、彼らを迎え撃つには記憶を取り戻しておいたほうが良いと判断しているなら取り戻すまでだ。
「記憶の欠片が使われた魔道具が何処にあるのかはずっと追っていた。」
そう宣言した兄上の顔は決意したものの顔つきだった。前に辛い記憶についての話をしてきたときの捨てられた狼(NOT 子犬)の様な表情ではない。
父上達はこの2つの世界をつなげるという行為の対処と向こうの神への様子を探ったりするらしい。本来は手出しはしないのが理だけど流石に今回は世界をつなぐという喧嘩を売られた様な状態なので動くようだ。もしも繋げるならどのぐらいまで進んでいるかもわからないので早急に動く事にしようとの事だ。
僕ならば最小限の手筈で行うだろうから陰陽道の様式で5箇所か、安定性の摂理からの3箇所のどちらかだと思っている。遭遇したのが2箇所だが1箇所は術者が死んでいてもう1箇所は石はこちらの手の内だ。そのまま頓挫すれば万々歳だけど、あの女は予備の場所と言っていたし、最初は宝石だと思って放置してしまったことも気にかかる。人は怨念で動けると失念していた。
「まあ、とりあえず記憶を回収しておいで☆」
「場所は何処だ?」
「愚者の国だ。」
「ここから馬で3日位の場所だね。」
にこやかに魔神達が送り出してくれる。
目的が分かれば行動あるのみ。
教会から出て直ぐに旅支度を開始する。海の国から帰ってきてすぐだったので母様が可愛らしい顔を歪めて泣いているのを宥めながら、どうしても行かないといけないことを伝える。父様もろくに家族で過ごせないのにむっとしているが、大切な家族のいるこの世界の為に行かないといけない。
どうにか家を出ると家の前に馬に最低限の荷物を積んだ兄上が待っていてくれた。どうやら兄上のところもバルスさんやアキさんに足止めされそうになったようだが振り切ってきたようだ。
まあ、公爵家当主が放浪していたら困るよね。帰ったらそっちもフォローしないとか。
馬、モンスターとかに襲われない様に正確には魔獣の一種なんだけどそれに跨り、街の中ではゆっくりと街の外に出たら思いっきり走り出した。
目指すは愚者の国である。
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