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海の国と泡と消えゆく想い

僕と海の国のパーティー

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 あの後イリヤが空気を読まずに登場して来たが優秀な侍女達によりおさめられていた。屋敷の一部を抜いた人達が着飾ったアクアとフェンを無事にペアで屋敷から出させてくれたのであの二人は大丈夫だろう。
 イリヤにはウォルターを貸し出し僕とバルスさんは、アクアの両親にとある計画を話した後にパーティーに向かった。

 パーティーの開始まであと一時間はあるというのにもうすでに多くの人魚達が集まっている。人魚達にも色々な種族が居る。さめタコにウツボなど見ていて楽しい人魚達だ。その中にポリプスさんを見つけた。
 流石は海の国の魔女様。威厳を感じる姿に色っぽい仕草で周りの視線が釘付けだ。こちらに気付くと気軽に手を振ってくれたが、その行動に僕達を睨みつける男どもが何人かいる。
 苦笑いをしながら手を振り返すとこちらに寄ってきた。

そのドレスはシースルの素材でよくよく見ると豊満なボディのシルエットが見えるといった代物。この間は地上に居たときの服装で確認はできなかったが人魚なので足は海洋生物なのだがそれが8本に分かれている。彼女は蛸の人魚の様だ。だが実物の足は薄っすらとしか見えない。どうやら透明の蛸らしい。



「こんばんは。」
「やっぱり来たんだね。」
「王様に招待されてしまったんで。」


 あとはアクアとフェンの進展が気になってます。なんて事は大体的に言えないけど。


「その魔法はこの間のとは違うね。」
「流石はバルスさんの先生ですね。そうです。人間の身体は脆いですから保護する魔法を使ってます。」
「なるほど。それで身体のふやけを守っているんだね。」


 まじまじと僕達にかけられている魔法を見ている。流石は先生か。
 暫く僕達の身体を好きに眺めた後に満足したのか見るのをやめて隣に並んだ。良いように人よけにもされているように感じるが魅惑の女性が隣にいるのも悪くわない。

 暫くは談笑しながら周りの観察をしていると、疲弊しているように見えるウォルターがエスコートしているイリヤと仲睦まじいラメール夫妻、そして耳を真っ赤にして照れているアクアをエスコートしているフェンを見つけた。

 よくよく見ると人間達も増えて来ているようで水中でも時間を測れる道具をチラチラと定期的に見ているようだ。
 ふと、その人間の中に見知った様な人を見かけた気がしたが改めて見回してもあの人はいないようなので似た人と見間違えたかもしれない。

 そしていよいよ始まりの音楽が会場を包み込んだ。

 盛大なタツノオトシゴのラッパの音と共に登場したのは威圧感たっぷりの王様の姿。今度はちゃんと頭上で金に輝く王冠に手入れをしたのか海の中でももふもふな真っ白な髭を撫でながら片手に金の三叉の槍を手にしている。

 髭を撫でていた手を上げると音が止む。


「この度、祭りの際に得られなかった加護が女神様から贈られた。」


 その言葉に事前にある程度は聞いていたとはいえザワザワと少しだけ騒がしくなるがそれを咳払いで王は治めた。


「今年度も加護のお陰で海は穏やかに作物は豊富になるだろう。それを祝い今宵パーティーを開く事となった。皆で楽しもうぞ。」


 王の手にいつの間にか握られたグラス。
 それを天井に向けて掲げると皆も習って王の挨拶と共に配られていたグラスを掲げる。その後にグラスの中身を飲むのだが。


「これってお酒のゼリー?」
「シンリくんは飲んだふりにしましょう。未成年なので。」
「うん。」
「おや、使者殿は未成年だったのかい。この酒は海の国の特産でね。成人になったら飲みにおいで。」


 匂いも一口だけ飲んだ味も甘みがあって美味しかった。不思議な事に海の国での料理にしろ飲み物にしろ海自体の塩辛さは感じないと言うことだ。勿論そこらへんに生えているワカメを食べれば塩っぱいが。


「人間と交わってから美食の人魚が増えたからね。改良されているのさ。」
「おお!友人の息子よ。久しいな。」


 ポリプスさんが説明をしてくれている脇で、王への挨拶が始まっている。別に加護が来てよかったねと祝うだけで良いと思うけど習わしなのかな。
 そんな王への挨拶は王と親しいもの位が高い順と、なっているのだが位の順の前にフェンが挨拶をしていた。その隣には状況を把握出来ていないアクアもいる。どうやらフェンの父親は海の国の王とかなり親しい間柄の様だ。


「お久しぶりです。父には無理を言って私が参加させて頂きました。こちらは私の想い人であるアクアでし。」
「アクア・ラメールです。我が王にご挨拶申し上げます。」
「おお。ラメール家の長女だな。だが、人と人魚か。」
「私はこの身を捧げても彼女の側にいる予定です。勿論彼女を悲しませないように努力して朽ちる事なく側にと考えています。」


 人の子と人魚との悲愛は王様も知っている事。それで憐れみの目を二人に向けたが二人はもう迷いはないといった様子で笑いあった。どうやら屋敷を出てからお互いの思いをぶつけ合って意志が固まったようだ。そんな二人を見て王も何かを察したみたいで良きかな良きかなと二人を応援するように肩を叩く。
 そして、会場に向かって大声を出した。


「今宵はもう一つ良きことがあった。殴り合いもよくした我が友人の息子がこのアクア嬢と婚約するようだ。人と人魚の架け橋として彼等を応援したい。」


 王の宣言に人魚達がザワザワ。それもそうだ今までそんなカップルが居てもその生き方や身体の構造の違いによって成就しても死に別れたりと悲惨な過去を知っているのだ。

 人間の方はあのクローデット商会のヤンチャがあんなに礼儀正しい姿の方に驚いていた。


「我々は彼等の奇跡を暖かく見守っておこう。」


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