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勇者という存在がもたらすもの
僕の快適観光
しおりを挟む「これが御守。」
「はい。身体の害する不協和音が聞こえない様に持っている人に加護が付きます。」
まあ、正確には逆の原理なのだけどね。術に当てはめた例の魔法を発動すると加護が発生する。その加護に対する対価はなにかというとこの謎の不協和音なのだ。そうすることでこの御守が発動している限りは対価として吸収してしまうので不協和音の影響は受けないのだ。
原理を簡単に説明すれば思いもよらなかったと言うような顔をされてしまった。デバフを対価にしようと考えること自体思いつかなかった様だ。
僕としては自分の身に掛かるものすべてが対価の対象だと認識しているから不思議でも何でもないけどね。
「認識の違いというものか。」
「そうかも。取りあえず試しに複数作ったから屋敷の方にも渡してください。出来れば使用した日としない日での違いなどの報告書も欲しいです。」
「承知した。こちらへの心遣い感謝する。」
じゃらじゃらと御守をクラウスさんに渡すと早速屋敷の人に渡しに向かってくれた。クラウスさんが戻ってくる前に僕とコウにぃにはイヤーカフ型の御守にしてみた。特別製である。
他にも試しに作った試作品は空間魔法にしまってある。このあと色んな人の使い心地を参考に改良をしていく予定だ。ちなみに発動する加護というのは気分向上の加護だ。加護の性質は御守の調整で変えることができる。まあ、加護と言っても試験に受かりますようにとか安心して旅行ができますようになんていうささやかな思いの叶うかかなわないか気持ち次第のおまじないのようなものである。
保護の加護でも良いのだけどあくまでもメインなのは対価として不調が怒らないことだ。それだけでも普通ならこの御守持っていると気分が良いわってなってくれると思うのだよね。
「お待たせした。是非とも報告を書かせていただく。」
「うん。改良したいからお願いします。」
「うむ。」
クラウスさんも戻ってきたのでいざ観光へいこう。
今日の予定は人族の住み分けのところにあるギルドに寄って僕達の所在を伝えた後に少し観光してから、獣人の方へ移動して兄上希望の黒檀細工の工房に見学をしに行く。出来れば武器屋とかも見に行きたいけど、しばらくはこの国で観光を楽しむ予定なので急いではいない。
ラウルス侯爵家もしばらくは滞在して欲しいと言っていたしのんびりと楽しむぞ。
移動は馬車だと仰々しいので徒歩で行こうと思っていたら結構街は広いからとクラウスさんが馬車を持ってきた。ギルドに借りている僕達の馬車は侯爵家の担当の人が丁寧に整備しているようで魔獣もその扱いには命令は聞かずとも御満悦の様で良かった。
馬車に乗り込んでみると僕と兄上がまだ小柄とはいえクラウスさんの巨体で馬車はギュウギュウである。大きな身体をできる限り縮こませて乗っているクラウスさんが少し可愛く見えて来た。
「クラウスさん。」
「なんだね。」
「お膝の上に乗っても良いかな?」
アキさん、シス兄、コウにぃの三人と膝の上に僕を乗せたクラウスさんが対面に座った方が楽そうだ。お世話になっているクラウスさんをあんな姿にして乗せときたくないしね。
クラウスさんは勿論と返事を返して恐る恐る僕を持ち上げて膝の上に乗せる。まるで壊れ物でも扱うかの手付きに苦笑いしながら眼の前のジト目の三人を宥めながら出発した。確かに3人の誰かに膝の上に乗せて貰えば良かったのかもしれない。
「乗り心地は悪くないかね。」
「はい。でもいきなり膝の上に乗せるよう言ってすみません。帰りは‥…。」
「移動中も帰りも是非とも乗ってくれ。」
「へえ?」
「ほお。」
「私の顔は自分でも分かっているが怖い。子供など初対面は泣きわめくのだ。ましてや膝の上に乗せた事など一度も無いのだ。」
クラウスさんの要望にシス兄とコウにぃが反応したが、続く言葉にそうだろうなと納得する。お世話になっているしこれぐらいは僕は構わないのだけど。
チラッと眼の前の三人の顔色をうかがうとシブい顔をしているけど大丈夫そうだ。僕は普通の子供ではないからクラウスさんの顔がどうのでは泣きはしない。それでも良いのなら膝に乗せて下さい。
「済まないな。エリシス。弟を借りるぞ。」
「まあ、下級生にも泣かれて落ち込んでたもんな。今日だけだぞ。」
「ありがとう。まずはギルドだったか。」
「ええ。所在を伝えないといけないので。」
これも冒険者の仕事の一つ。別の国に来てしばらく滞在する際はギルドに報告しないといけないのだ。
もしもギルドのランクが高い人が必要になったときやこの人じゃないととなったときに場所がわかっていれば支援の連絡が出来るのだ。何より生存確認の証拠にもなる。
たまに森にこもって修行する人も居るけど3年以上連絡が無いと捜索隊が結成されるという噂を聞いた。その際は途轍もなく恥ずかしいことが起こるらしい。
「頭痛や違和感は大丈夫か。」
「うん。僕は無いよ。」
「俺もだ。」
「とりあえずはその御守は効いているんだな。」
「どうだろう。」
たまたま今日は影響していない可能性はあるためしばらくは様子を見たいところだ。
それでも耳の奥のキーンと言う音はしなくなったように感じる。街は相変わらず騒騒しいのだけど不愉快ではない。
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