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春の訪れと新入生
僕と一仕事の後のブレイクタイム
しおりを挟む貴族が絡んでいた国の令嬢誘拐事件に片が付いた。助け出した令嬢を親元に返し、泣きながら再会を果たす姿に満足だ。
たまに忌々しそうにしている保護者もいたが、そういう令嬢にはそういう方々が保護されている保護所の場所を密かに教えておく。
今回、あまりにも尻尾がつかめない集団がいたので囮として協力させて貰った。夕方の人気の無いところに行ってウロチョロし、ただのナンパや絡んできた男達を私服姿の騎士団が〆ての繰り返しの数日だった。
やっとそれらしき男にアジトまで連れて来られたら、精霊や不思議な物が見えるアキンドさんと精霊の世界で修行中の身のノアさんに協力してもらって、連れて来られたアジトの場所を精霊によって案内させた。
精霊たちの情報で攻め込んで来たことを知って牢屋の入り口の方にいれば、人質に取るのは入り口付近のか弱い僕って事さ。
他の人を危険に晒すのはいい気分じゃないしね。まさかウォルターも来てるとは思わなかったわ。油断していた所はあとで修行してもらいましょうかね。
「シシリー様ご協力感謝します。」
「アキさん久しぶり。それと化粧も飾りも服も替えたから今はシンリだよ。」
「はい。それにしても美しかったです。」
「アキさんは最初っからそれだよね。」
相変わらずフード付マントで、僕に対して何やら神聖なものとでも対話するかのようにキラキラと指した目で見つめてくる。珍しい精霊眼持ちのため隠すためにフード付なのかなって思っていたけどどうやら、目よりも髪が嫌なのだと聞いたことがある。
確かに、アキさんの髪を見たことがないな。人形の国でも隣国に行ったときもフード、または騎士の仮面をつけていた気がする。
多分、この国で精霊眼を持つぐらい神から加護があるのだから全身が顕になったらイケメンだと思うのだけどな。
「ウォルター、アキさんの全身見たことある?」
「騎士団の者は結構見てますよ。」
「どんな感じ?」
「‥…良い意味で人外?」
「‥…ウォルター。」
「ひっ!」
ヒソヒソとウォルターとお話をしていたら、春風のように爽やかな笑顔でウォルターの肩に手を置いた。そしたらウォルターの顔が一瞬で、そうまさにどうやったらそんなにすぐに変わるのって位一瞬で真っ青になった。
前にダンジョンに潜ったときも怯えてたけど、いったいアキさんには何が あるのか。
「そういえば、飛び級制度で卒業はしないのですね。」
「あ、ああ。ちょっとやることができちゃって。」
「やること?」
「うん。それで冒険者にも登録もしたいんだよね。」
「冒険者ですか。」
そう。他国に行くのに冒険者に登録しておくと何かと便利なのに気がついた。学園で基礎も習ったし親からも許可が出たので早速登録しておきたいのだ。というのは建前で本当はコウにぃが王位継承の破棄が正式に発表されるからだ。だいぶ発表が決まってから色々とやることがあって伸びてしまったがやっと、発表することが掲示板に乗っていた。
その後の活動の枝分かれに冒険者等を考えている彼が早めに登録しといた方が楽そうだと判断したのだろう。結構乗り気であった。
他にも商人やら何やら考えていたようだがどちらにしろ冒険者ギルドに登録しといたほうが良いとなったのだ。
「でしたら明日お供しましょうか?」
「え、良いの?」
「はい。冒険者ギルドに知り合いが居ますので簡単に済ませさせますよ。」
「特別扱いはいらないので他の人と一緒で大丈夫です。」
「はい。わかってます。」
いや、分かっていないな。
キラキラとエフェクトが掛かっている姿に力になるぞという気合が見える。
まあ、横槍みたいな形になってしまったら注意すれば良いか。
ウォルターは僕達の様子をちらっとみてそっとその場から逃亡した。本当に何があったのだろうか。
残された我々に周りの騎士達がなにか意味合いの含んだ目でこちらを見ている。
それは嫉妬というか哀れんでいる様な目線だ。つぶやきの全ては拾えないが、どうやら明日の冒険者ギルドの運命を嘆いているような感じである。
「アキさんは冒険者ギルドに登録してあるの?」
「はい。騎士をやる前は冒険者として色々な国を回っていましたので。」
「へえ。あ、だから人形の国の時には護衛になったんだ?」
「もしかしたらそうかもしれないですね。」
ニコニコと機嫌の良いアキさん。最初の初心な感じは何処にいったのか。
まあついて来てくれるのならお願いしよう。
冒険者の登録もそうだが依頼のやり方なども教えてもらうのも良いだろ。職員の手を煩わせる位ならアキさんに聞いた方が他も本人も幸せそうだしな。
ちなみに令嬢を助けた場所は今後の犯罪防止のために取り壊させて貰う。攫われていたところは廃墟になっていた場所なので取壊されても問題ない。そして状況等は犯罪履歴として残して今後のために使われるそうだ。 どうせならその解体姿を見せてもらうためにここに居たのだが、明日の予定も決まったので後で兄上には伝えておこう。
建物中に魔法の核となるものが組み込まれて、後は責任者が合図を送れば煤塵へと変わるのだという。
今か今かと待ちながら持ってきていたお茶を、アキさんと二人でちびちびとのむ。
どうやら責任者はユーシアさんだったようで、遠くの方で爽やかな男前ぶりで手を上げて合図を送っていた。
その途端に建物が光り一瞬で跡形もなくなり、見晴らしが良くなった様に感じる。
建物がなくなると日当たりも良さそうだし畑とかにつかえそうなんて考えているなんて誰も思っていないだろう。
「明日は冒険者ギルドか。楽しみだなぁ。」
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