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精霊たちの秋祭り

僕と精霊達の秋祭り

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 祭りが始まり人々の活気が溢れている街は、徐々に闇が広がってきた。辺りが暗くなると蕪のランプの輝きがより一層際立ってゆく。
 祭りはこれからが本番だ。

 小さな子供たちが騎士や魔女の格好をして可愛らしい笑い声を上げている。
 その姿が微笑ましいと感じる辺りは歳をとったなとため息をつくのはこの国を治める皇帝陛下だった。

 街が一望できる場所で豊作の葡萄で作られた献上品の今年のワインに口をつける。舌に残る葡萄甘みと酸味の程よいバランスは良い出来だと後で太鼓判でも押しておこう。

 ふと対面で両手を使ってワイングラスを持つ、緊張している様な精霊王の御子に笑いかけて、グラスをテーブルに置くように伝える。


「緊張するなと言うのはこくであろう。コウランでも同席させれば良かったな。」
「いえ、すいません。今までの生活があれでしたので。これからを考えるなら慣れないとですね。」
「蛹から羽化覚醒すると聞いた。」
「はい。グランデも引退を思っていたから私が生まれたのですから、それに息子タオシャンの恋の土台になりたいですからね。」
「精霊王の孫でも凄いと思うがな。」


 それじゃあ、悔しいじゃないですかというノアがとても楽しそうな姿に、それ以上口を出さないことにする。
 皇帝陛下は生きている間にまさかの精霊王との繋がりが出来るとは思わなかった。本当にコウランが産まれて、シンリ殿と出会ってから驚かされる事が多い。


「はっはは。こちらでも親は大変そうだな。」


 いつの間にか皇帝陛下とノアとの間にもう一人現れた。周りの兵士が警戒するのを手で制し、立ち上がってお辞儀をする。ノアとよく似た姿は間違うことない精霊王だろう。


「はじめてお会いします。この国を治めさせて頂いている‥…。」
「堅苦しいのはなしにしよう。息子に会えたのは貴方が治めてくれたおかげでもあるだろう。」
「ありがとうございます。蜂蜜酒ミードと今年の出来の良いワインどちらがよろしいでしょうか。」
「では、ワインでも頂こうか。」


 大人3人の収穫祭はこれからが楽しい時となるだろう。




 一方僕と兄上は何故かアンナとタオシャンの背後を歩いている。ふたりきりのデートを楽しんで貰おうとしたのだが、どうもふたりきりになるといろんな年代のご令嬢が湧いてきてしまったり、なんか絡まれたりと邪魔者が出てくるのでイケメンだけど威圧感たっぷりの魔王様を借りだしたのだ。因みに僕もご令嬢に絡まれるが、母親似の微笑みで撃退できている。

 こういうのは今後も増えるだろうからタオシャンにはそのあしらい方を学んでもらって、アンナにも周りからの嫉妬や妬みを華麗にはぐらかしてもらわないとならない。
 アンナはカリナのときに色々と体験済だからあとは回避するためのマナーや経験だろうな。


「お二人を巻き込んですみません。」
「別に。僕はコウラン殿下のおかげでなれているから。魔王様に近寄りたい稀有なご令嬢も凄いよね。」
「おい。」
「そういえば、この収穫祭には精霊も来ているのでしっけ?」


 からかうつもりは無いが、実際にコウにぃは整いすぎていて真顔だと近寄りがたい印象がある存在だ。しかも前世昔から本人は男だろうと女だろうと来るもの拒まず去るもの追わずの人であったようだ。その話しをしていたのは誰だったかな。

 鉢合わせで喧嘩になったとしても興味をなくして、放って帰ってくるような人だ。
 今はまだそんなに荒れた生活をしていないが、もっと大人に近づいて同じ様になったらどうしようか悩み中だ。

 おっと、話しが明後日の方に行きかけた。
 アンナの言うとおり今夜は精霊達も参加をしている祭りだ。精霊王は多分皇帝陛下と居るだろうから来ているのはいつも魔法を手助けしてくれる皆んなかな。

 邪眼で見ると目の色が変わるので、今回はバルスさんに教わった方法にしよう。両手を変えて印を組みまじないを唱える。
 印の隙間から見えるのは人々に紛れて光り輝く玉と、小さな人の姿をした者たち、そして行き交う人々が通り過ぎる少し透けた人達だった。


「‥…。」
「流石はシンリだな。死者まで見えるか。」
「勝手に覗き込まないでください。」


 背後から人の頭に顎を載せて見てくるコウにぃを振り払う。一番僕に近い前で楽しそうに談笑する二人には今の言葉は聞こえて居なかったようでほっとする。死者まで見えるなんて分かったらなんかだめな気がする。


「あくまでこれは精霊が見えるなのにな。」
「あの時と同じ様にしてますのに見えませんわ。」
「あの時は精霊界だったからかもしれないよ。」
「そうですわね。残念だわ。」


 うん。バルスさんが教えたのは僕から見たらやっぱり不完全だったのか、わざとそう教えたのか。
 ニヨニヨといている(様に見える)兄上を小突きながら印を組むのをやめた。今日のお祭りにはだいぶ色々な存在者たちが、来ているようだ。
 
 兄上は僕の耳元に顔を近づける。
 いつもの事だから僕は気にならないけど、遠目で見ていた人達からは何故か黄色い声を頂いてしまった。やはり、皇帝妃だけではないのか。

 それはともかく兄上の企みには乗っても良いかな。

 そして僕はまた印を組む。
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