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王道?邪道?乙女なアレ
私の護衛と乙女のヒロイン
しおりを挟む『何でコイツなのよ!』
なんて白夜に言われてしまったけど、私の護衛には惶麟に付いてもらう事が多くなった。
本当は護衛なんて要らないのだけど、長期休みの間に襲われた噂を立てたのであの辺境伯が護衛をつけないなんてあり得ないとのことで。
カリナを観察して思ったのは、主に彼女と噂がある人物は優しい先輩、怖いけど頼りになるクールな先生、絶対的俺様殿下(本人否定)ときたらあと側に置きたいのは綺麗だけど野性的な従者かなって。
それなら、惶麟が最適でしょう。
と言うことで撒き餌です。惶麟は残念なイケメンだけど事情を説明しなくてもホイホイしてくれるはず。何気にああいうヒロインってダメ男に弱かったりするし。
なんて思って、惶麟を護衛としてつれるようにしたら、簡単に引っかかった。そのまま惶麟にはカリナと他の攻略者達がどうなっているか探ってもらい、カリナに絡まれるのが嫌で授業をサボり始めたコウにぃは私がどうにかした。
カリナの暴走は結構人目についていて、優しい先輩に居た婚約者は婚約破棄まで行きそうになってさめざめ泣いているのだとか。そんなにカリナが良いなんておかしな婚約者なんて捨てちゃえばと言ったら、目をパチクリさせて『そうよね。』と決意の目で呟いていた。
他にも目立ってはいないがカリナと交流のある人達は婚約者もいる人も居れば、カリナにゾッコンの子もいる。
それが色んな年齢なのは彼女の才能かも知れない。
「コウ様、今日はテストがあるので授業でましょう?」
「あんな簡単なもの出なくても良いと思うが。」
「一緒に飛び級制度を使う約束。」
「‥…はあ。今行く。」
私はコウにぃを迎えに元ダンジョンの入口だった物置に来ている。ここなら今まで閉鎖されていたから誰も来ないから、サボりには最適だったりする。たまに学園長がしょうがないですねと理由を知っているのでお茶菓子持参で現れたりして、話し合いとかをしている。
今日は流石にテストがあるので迎えに来たけど、優秀な記憶を持つ兄上は授業に出なくても大丈夫ではあるのだ。私が基礎をちゃんと知りたいとワガママさえ言わなければ、テストだけ受けてさっさと卒業していっただろう。
このテストは飛び級制度をするにあたっての目安でもある。一年間の大きなテストで毎回9割の正解を出さないと資格が剥奪されるらしい。
飛び級はしなくても今のうちに条件等をクリアしておくのに越したことはない。
最近はヤル気が出ていないコウにぃに飛び級制度を使えばカリナと離れられると言って一度はヤル気を出したけど、先輩もカリナが絡んでいるのを知ってまたヤル気を無くしたようだ。
「玄樹を俺の代理に使えば。」
「玄樹は今日は第3皇子といます。」
「そうか。」
ダルそうにのっそりと動くコウにぃの制服を引いて耳元に魔法の言葉でも投げかけておく。
「今日一緒に授業したら、帰ったら僕の秘伝の技を見せます。」
「ほう。」
「気にいると思いますよ。」
ヒソヒソと話していたら、気分が乗ったらしい兄上が教室まで素早く戻っていく。教室に入ろうとした所で多少足止めがあるが、今日は嫌な顔と舌打ちだけでいつもの席につく。
足止めと言うのは想像通り、カリナのことなんだがせくせくとコウ様に話しかける姿は小動物の様で可愛いといつの間にか出来ていた彼女を慕う者たちのグループの話しらしいと惶麟からの話だ。
今日は惶麟が私の護衛なので今の今までカリナの気を引いて貰っていた。兄上しかり人離れした顔立ちの惶麟が護衛対象の私よりも優先してくれるのでカリナはご機嫌である。本命らしき兄上に話し掛けては玉砕すると惶麟に慰めてもらってるのが目に入る。
流石の惶麟もカリナの行動には呆れて居るようで、その慰めの時の目は冷たい。
兄上にご執心の彼女はどうやら異世界の記憶を持つ転生者であるらしい。それが私達と同じところかは不明だが、たまに『ハーレムエンド』や『俺様殿下がいつ心を開くか』なんて呟いているようなので、似たような世界かもしれない。
休み明けからアプローチが酷くなったのは気になっていたが、どうやら男爵が皇帝陛下に目をつけられた様だ。というのも、男爵は金で爵位を持った様で貧困なとある男爵家に自らを養子とさせて爵位を継ぎ、好き放題今までしてきた様だ。
家系図におかしな所を見つけた皇帝陛下の命を受けた者たちが色々と情報を掴んでいるようでした。
だから、彼女は男爵がどうにかなる前にそこから救ってくれる人を探そうとしているのだろう。
そこまでを惶麟が彼女から聞き出した内容で分かったことだ。
ようは焦っているのだろう。
「タイムリミットはいつでしょうね。」
「次の長期休みまでじゃないか。」
「じゃあ、冬休みか。」
「その前に収穫祭のパーティがある。」
「ああ。乙女ゲーパーティでなにかするの好きだもんね。」
兄上はそれまでに彼女に落とされて私の敵になってしまうのですかね。
テストの答案用紙が回収されて、姿勢を解す為にバキバキと背伸びをしておく。
因みにテスト中はカンニング防止の為に惶麟は教室の外に追いやられる。
「俺がお前を見捨てると思うか。」
「まったく。」
「逆でもそうだろ。」
確かに、僕達は二人しか居ない存在だしね。
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