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キミダヨ
しおりを挟む「確かにわたくしは幼少の頃に師事していた方が魔族らしいです。その後に学園で。」
「では、最初の頃は大変だったでしょう。全く違ってて。」
「はい。魔力をこちらでは炎に捉えますけど、最初に教わった方は水の様にと教わって。」
「そこなのよ。炎の様に燃え盛るのと水の様に静かに。それがサーチに引っ掛からない理由よ。」
なるほど、炎のように激しい魔力の変動を常としていれば、魔力の変動を見ると言えど水の様に静かな魔力は感じにくいのかもしれません。
では、やはりこの件には魔族が絡んでいるのでしょうか。
いえ、あと一つ不明な種族が居ますね。
「もうひとつの神族はどうなんだ。」
そうなのです。
一概に魔族なんて決めつけていては駄目。可能性をいくつか予測するのが我々には必要なの。
でも、この場には神族なんて居ないのにレオは何故に。
「神族は光よ。カッと光ったりじわじわ照らしたりの人族、魔族の良いところどりね。」
「エリザベート様はご存知なんですね。」
「ふふ。まあね。」
自慢気に胸を張るエリザベート様はとても可愛らしいです。
ですが、これでは対応の仕方に迷ってしまいますわね。
おそらく、人族以外が絡んでいるのは間違いないでしょう。どう判断しましょうか。
「…何が起こってるか聞いていいか。」
これ以上はちゃんと説明した方が良いでしょう。
わたくしとレオはこれまでの事を時系列を追って説明しました。
始まりはあの男爵令嬢が現れたからかしら。
それから、わたくしから殿下が離れて行き、レオに出逢って婚約の解消があって。それに殺されかけたり、断罪パーティーまであったわね。
そうそう、レオが実は生きていたとか。
「まるで乙女ゲームだな。」
「乙女げーむ?」
「また、変な知識を持ってきて。」
魔王が不思議なワードを出してきました。でもその言葉は何度か聞いたことのあるもの。
そう、たしか男爵令嬢のアリアが呟いていなかったかしら。
「乙女げーむとは何ですか。」
「知っているとは思うが、オレは異世界から来た。」
「ええ。有名ですからね。」
魔王が異世界から来ていることは、結構有名である。
というのも、そもそも魔王は魔族の王でかつては残虐で横暴。
人族も神族もその王に困り、異世界から勇者を呼び出した。
知人もいない世界に呼び出された勇者は元の世界に戻るために強くなり、とうとう魔王を倒した。
その時に、勇者は魔王の核に侵された。そして、魔王の力、知識を受け継ぐはめになり、元の世界に戻れなくなったのです。
「その異世界では乙女げーむという玩具がある。」
「玩具。」
「乙女ゲームは一人の女を色々なシチュエーションで男たちが取り合い恋愛する。そんなものだ。特に人気なのは身分の低い健気な少女が王子に見初められる話だ。」
「まさに。あの男爵令嬢と同じだな。」
「ああ。さらにそこには王子の婚約者がいてそれが障害となり恋を燃え上がらせる。婚約者は少女を排除しようと難癖つけたり、要は悪役だな。」
その婚約者の気持ちは痛いほど分かります。
きっとその婚約者は王子の心が離れるのが苦しかったのでしょう。それなのに悪役だなんて。
最後、その婚約者はとあるパーティー等で排除しようとした行動で断罪されるのだとか。
「もしかしたら、わたくしの未来の一つかも知れませんでしたね。」
「ああ。だろうな。オレが思うに誰かが裏にいるのは正解だと思う。あまりにも男爵令嬢がストーリーに固執しているしな。王子を手に入れたのだから余計なことをしなければ良い。」
そうですね。
陛下のお話だと最初からドラクネア家を毒とおっしゃっていたらしいですから。
それがなければ、今頃幸せに暮らしていましたでしょうに。
「恐らく、糸を引いている奴の狙いはラスレア嬢。君だよ。」
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