14 / 34
わたくしは貴方を本当に
しおりを挟む偽物と言われたアリアは、般若の様に怖い表情で吼えている。
レオナルド様が言うようにアリアの瞳は明るめの黄土色に微かに縁が青味を混じっているような色で、明らかにアースアイではないし、早く言えばヘーゼル色ですわ。
そもそも、アースアイでしたら話題になっていますものね。
「あんたのせいだから!」
いきなり矛先がこちらに来て、ビックリしてしまい身体が跳ねました。こんなにオーバーアクションをしてしまい恥ずかしいです。
しかしそのあとに、わたくしを守るように背に隠しながら、レオナルド様が言った言葉で恥ずかしさもどこかに飛んでしまいました。
もしかして、あの買い物の時の黒幕は。
「なんの事よ。もしかして、そこの悪役令嬢ってば襲われたの?あは、悪いことしているからじゃない?」
嘲笑うかの姿に、確信が芽生えましたがわたくしには証拠がありません。恐る恐るとレオナルド様に寄り添い震える手は気付いたら彼の服を掴んでいました。不安を含んだ表情でいると後ろ手でまた、頭を撫でてくれます。
「往生際が悪いな。ウルススが自供したぞ。」
「ウルススがやったの?ああぁ、彼は私を守るためにしでかしてしまったのだわ。」
「ウルススは捨て駒か?憐れだな。」
「あら、私が知らないって言っているのよ。それとも私が唆した証拠はあるのかしら?」
アリアの自信満々の様子から見て、そんな証拠は残していないのでしょう。
でも、レオナルド様も考え無しにこの様な事は言わないはず。
「確か、ウルススに“あの女が怖い”と泣きついたのは学園の人気の無いテラスだったよな。確かにあそこなら人は来ないし、言葉だけなら証拠も残らない。ウルススを信じ込ませる演技も出来るな。」
「な、なん、何でそれを…。」
「散歩をしていたら見かけてね。何度も来ていたみたいだから、何気なく映像を記録する魔道具を置いておいたのだけど何が撮れているかな。」
「嘘よ。あそこは誰も近寄らない場所よ。幽霊がさ迷ってるって…。それに何であんたの様なおっさんが学園に…。」
あっ。たぶんそれはレオナルド様の霊魂ですかね。
実は、レオナルド様が幽霊の時、学園中を色々とさ迷っていたらしいです。わたくしが知っているのは1つですけど、幽霊の噂はいくつかあるようでしたから。全てがレオナルド様とは言いませんが、あの彼の様子からテラスはレオナルド様の仕業ですね。
それより、置いておいたとは触っている事からみるに肉体に戻ってません?
わたくしが目を赤くした別れの前ですよね。どういう事でしょうか。後で詳しく聞かせて貰おうかしら。
レオナルド様の証拠に何も言えなくなってしまったアリアに、今までちやほやしていた王子殿下が蔑んだ目をして見ていた。
でも、貴方様がそれをしてはいけないのでは?
「父上!僕はこの性悪女に騙されていたのです。むしろ変な魔術をかけていたに違いありません!」
「そうか。」
「ラスレアも、僕を愛してくれているのだろ?だから、危険をおかしてでもこの女を排除しようとしたのだろ?」
「……。」
「僕はこれから更に良い国の王になりましょう。」
「成ることは無いだろう。」
「…!?。」
陛下ははっきりとそう仰いました。
陛下曰く、王は国を背負っている。国とは国民であり、その国民の為ならば例え愛する妻であってもなにかの時には疑い、罰するのだとか。
今回もわたくしの話が王子殿下から聞かされたときにこれでもかと調べているのだとか。そして、その時点で女に簡単に騙された王子には見切りをつけたのです。とどめはわたくしの一族の事を裏切り者と罵り始めた事でした。
息子に向けるべきではない冷たい視線を陛下の覚悟だとやっと知った王子殿下は、わたくしの方に向き直り、手を差しのべて来ました。
「ラスレアは僕を助けてくれるのだろう?だって君は僕を愛しているじゃないか。」
「ええ。そうですわね。」
わたくしは、レオナルド様の背後からゆっくりとでて、ティグリスと久々に対等に立ちました。
こうしてちゃんと視線を合わせて話すのはいつぶりでしょうか。
頭のなかにはかつての楽しかった思い出が流れています。どれもこれも小さな頃の思いでしかありませんけど。
「貴方がわたくしを都合の良い召し使い扱いしても、本当に貴方を愛していました。」
「ラスレア?」
「婚約解消をされても貴方が幸せなら、支えようと思いましたし。ですが。」
わたくしの手で熱を持ってきたアザがじくじくと痛む。
「もう、わたくしは貴方を本当に人間とは思えませんの。」
わたくしの言葉に、辺りは静かになってしまいました。王族だからということでなくどなたにも、この様なことは言ってはいけません。でも、これぐらいちょっとした意趣返ししても良いじゃないですか。
辺りが静かになった後に、わたくしの背後で大きな笑い声があがりました。
6
お気に入りに追加
2,460
あなたにおすすめの小説
執着王子の唯一最愛~私を蹴落とそうとするヒロインは王子の異常性を知らない~
犬の下僕
恋愛
公爵令嬢であり第1王子の婚約者でもあるヒロインのジャンヌは学園主催の夜会で突如、婚約者の弟である第二王子に糾弾される。「兄上との婚約を破棄してもらおう」と言われたジャンヌはどうするのか…
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる