11 / 34
波乱の卒業式 ②
しおりを挟む「ほら、モンスターじゃない!」
突然にわたくしの血筋にバンシーが居たことにビックリです。父は何故話してくれなかったのでしょうか。
ここで、陛下は昔話を始めた。今、そんな事をするのは会場に居る者があらぬ疑いをしないためでしょう。疑われて困るのは、我が一族と庇護している陛下、そしてその事実を知るもの達ですからね。
かつて、陛下と私の父はパーティーを組みバイトというか趣味として冒険者をしていた。それは前にも話が出たと思います。その二人が遺跡を探索してある書物を見つけたことも。
その遺跡はドラクネア家が持つ未開発の領地にありました。父が子供の頃から封印されていていたのですが、ある日遺跡の封印が解けているのを発見したそう。普通ならそこで臆する人もいるのですが、二人は若いながらに色々と名を馳せ、実力もあったのです。迷うことなく中に入りました。
その遺跡の中枢には一冊の書物だけが置かれていたという。それを手に取ると、日記であることが分かった。何故こんなところにそんなものがと調べていると、表紙の端にドラクネア一族の紋章が刻まれていたのです。
その中には、ドラクネア家の初代の話が書かれていたのです。初代は、とても美しいバンシーと恋仲になり夫婦となったらしいのだ。
“バンシーが司るのは死でなく生だ。バンシーが幸せを感じて笑えば生きる世界は変わる。”
そうきるされて日記は終わっていた。
父もその時にはじめて知った事実に驚いていたのでした。父は陛下が国をよりよく変えたいと思っていたのは知っていました。
我らが国は今でも良い国である。だけど、僅かに残る飢える人々も居るのはたしか。
それさえも、どうにか出来ないかと考える友人に、父はバンシーの血筋の自分が側に居よう。世界を変える力が本当ならば、血筋を交わらせてその力を使ってもらおう。
彼ならば、大事な子供も幸せにしてくれるだろう。
そう言ってわたくしと王子殿下が産まれて婚約することとなったのです。
「そもそも、バンシーとはバンは女性、シーは精霊を意味する精霊で魔物ではない。」
陛下のお話が終わり、周囲の目が明らかに変わっている。わたしくしが嫁ぎ幸せになれば、その家には幸福が来るかも知れない。何かが変わる可能性があるのではと執着にも似た視線を向けられている。
その視線が怖くてひきつった顔をしているとおもいます。
「何よそれ!精霊ですって?ゲームでもモンスターとして現れるじゃない!あの女は化け物よ。魔王と通じあっているのよ?私は見たの!」
アリアは顔を赤く染め、わたくしを射殺さん勢いで睨み付けて怒鳴るように騒いでいる。
王子殿下はそんな彼女を宥めて、落ち着かせていた。
「ラスレア、お前は僕を奪われたのが悔しくて魔王にアリアを売ろうとしているのだろ?」
何を斜め上の考えをしているのでしょうか。
確かにわたくしは貴方を愛していました。彼女との噂が出たときは上手く笑えなくなくなりましたし、噂が本当だと知った時は屋上で一人で泣きました。
でも、手に残る痛みで今はもうどうでもよくなりました。
「魔王もこの愛らしいアリアが欲しいからな。乗ってきたのだろ?」
「なぜ、魔王が彼女を狙うのです?」
「あら、気付きません?私が可愛いのも勿論。アースアイを持っているからですよ。」
その言葉に辺りが静まりかえった。
8
お気に入りに追加
2,464
あなたにおすすめの小説
クリスティーヌの華麗なる復讐[完]
風龍佳乃
恋愛
伯爵家に生まれたクリスティーヌは
代々ボーン家に現れる魔力が弱く
その事が原因で次第に家族から相手に
されなくなってしまった。
使用人達からも理不尽な扱いを受けるが
婚約者のビルウィルの笑顔に救われて
過ごしている。
ところが魔力のせいでビルウィルとの
婚約が白紙となってしまい、更には
ビルウィルの新しい婚約者が
妹のティファニーだと知り
全てに失望するクリスティーヌだが
突然、強力な魔力を覚醒させた事で
虐げてきたボーン家の人々に復讐を誓う
クリスティーヌの華麗なざまぁによって
見事な逆転人生を歩む事になるのだった
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
【完結済み】王子への断罪 〜ヒロインよりも酷いんだけど!〜
BBやっこ
恋愛
悪役令嬢もので王子の立ち位置ってワンパターンだよなあ。ひねりを加えられないかな?とショートショートで書こうとしたら、短編に。他の人物目線でも投稿できたらいいかな。ハッピーエンド希望。
断罪の舞台に立った令嬢、王子とともにいる女。そんなよくありそうで、変な方向に行く話。
※ 【完結済み】
[完結]貴方なんか、要りません
シマ
恋愛
私、ロゼッタ・チャールストン15歳には婚約者がいる。
バカで女にだらしなくて、ギャンブル好きのクズだ。公爵家当主に土下座する勢いで頼まれた婚約だったから断われなかった。
だから、条件を付けて学園を卒業するまでに、全てクリアする事を約束した筈なのに……
一つもクリア出来ない貴方なんか要りません。絶対に婚約破棄します。
婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる