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34話 オークとの遭遇
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それは魔物との戦いを終えて、帰り道となる谷に差し掛かったときのことだった。
「ゼリルさん、あの魔物は今までに見たことがない種類でしたね」
ミアが少し考え込んだ様子で話しかけてきた。
確かに、あの魔物は他の魔物とは異なる特徴を持っていた。
その鋭い牙や爪は、まるで岩をも切り裂くかのような強力さだったが、何よりその視線には強力な魔力が込められていた。
見たことのない魔物ではあったが、伝え聞く特徴からしておそらく――
「あれはおそらくバジリスクだ」
「バジリスク、ですか?」
「非常に危険な伝説上の魔物だ。視線が合うと一瞬で石にされるという話もあるが、今回は幸い俺が標的になったおかげで難を逃れた」
俺の言葉にミアが驚きの表情を見せた。
「えっ、石に!? ゼリルさんは大丈夫だったんですか!?」
「俺は魔族だからな。ほとんどの魔法は効かない」
ミアが口をぱくぱくさせた。
「バジリスク……伝説の魔物だったんですね。そんな危険な相手に出会ってしまうなんて」
「そういうこともあるのがアビスランドだ」
フェンリスもその言葉に反応して軽く鼻を鳴らして同意を示している。
俺たちは無事に戦いを終えられたことに感謝しつつ、谷を抜けるために慎重に進んだ。
谷の出口が見え始めた頃。
再びフェンリスが何かに反応し、立ち止まった。
「何かいるのか?」
俺の問いかけにフェンリスは鼻をひくつかせ、低く唸り声を上げることで返答とした。
その警戒に従い、動きを止めて耳を澄ませる。
すると、谷の先からかすかな足音が聞こえてきた。どうやら複数の生物がこちらに近づいているようだ。
俺たちは息を潜め、その正体を確認しようとした。
やがて、岩陰から姿を現したのは一群の『オーク』だった。
オークは地下世界に生息する獰猛な妖魔で、力強い体躯と粗暴な性格を持つ。彼らは集団で行動することが多く、敵対的な性質を持っている。
「オークか。これは厄介だな」
俺すぐに戦闘の準備を整えた。オークは交渉が通じないことが多いため、彼らと遭遇した際は戦闘を避けるのが難しい。ミアも魔法の準備を整え、フェンリスも身構えた。
だが、オークたちがこちらに気づく前に何かが異変を感じたのか、急に立ち止まって周囲を見渡し始めた。
そして、何かに警戒するように後退し、再び岩陰の向こうへと消えていった。
「どうやら、こちらに気づく前に去ってくれたようだ」
フェンリスとミアに目を向け、ふたりが無事であることを確認した。
オークたちはこちらに気づく前に去ってしまったが、あの様子からして何か別の存在を警戒しているようだった。
「ゼリルさん、オークたちが何かを恐れているように見えましたね」
ミアが不思議そうに呟いた。
同館だ。オークたちがあれほど警戒していたものが何なのか気になるが、今は深入りするべきではない。
「何かがこの谷に潜んでいるのかもしれないが、深入りする必要はない。こちらも無事に戻ることが先決だ」
俺たちは再び谷を進み始めた。
フェンリスも緊張を解かず、周囲を見渡しながら歩いている。
オークたちが恐れていたものが何なのか、その正体が気になるが……今は安全を優先するべきだ。
やがて俺たちは谷を抜けて開けた場所にたどり着いた。
冷たい風が頬を撫で、遠くには広がる平原が見える。
もう少し進めばいつもの洞窟が見えてくるはずだ。
「今日はここまでだ。明日、また新たな探索を始めよう」
俺の言葉にミアも頷き、フェンリスも満足そうに尻尾を振るのだった。
「ゼリルさん、あの魔物は今までに見たことがない種類でしたね」
ミアが少し考え込んだ様子で話しかけてきた。
確かに、あの魔物は他の魔物とは異なる特徴を持っていた。
その鋭い牙や爪は、まるで岩をも切り裂くかのような強力さだったが、何よりその視線には強力な魔力が込められていた。
見たことのない魔物ではあったが、伝え聞く特徴からしておそらく――
「あれはおそらくバジリスクだ」
「バジリスク、ですか?」
「非常に危険な伝説上の魔物だ。視線が合うと一瞬で石にされるという話もあるが、今回は幸い俺が標的になったおかげで難を逃れた」
俺の言葉にミアが驚きの表情を見せた。
「えっ、石に!? ゼリルさんは大丈夫だったんですか!?」
「俺は魔族だからな。ほとんどの魔法は効かない」
ミアが口をぱくぱくさせた。
「バジリスク……伝説の魔物だったんですね。そんな危険な相手に出会ってしまうなんて」
「そういうこともあるのがアビスランドだ」
フェンリスもその言葉に反応して軽く鼻を鳴らして同意を示している。
俺たちは無事に戦いを終えられたことに感謝しつつ、谷を抜けるために慎重に進んだ。
谷の出口が見え始めた頃。
再びフェンリスが何かに反応し、立ち止まった。
「何かいるのか?」
俺の問いかけにフェンリスは鼻をひくつかせ、低く唸り声を上げることで返答とした。
その警戒に従い、動きを止めて耳を澄ませる。
すると、谷の先からかすかな足音が聞こえてきた。どうやら複数の生物がこちらに近づいているようだ。
俺たちは息を潜め、その正体を確認しようとした。
やがて、岩陰から姿を現したのは一群の『オーク』だった。
オークは地下世界に生息する獰猛な妖魔で、力強い体躯と粗暴な性格を持つ。彼らは集団で行動することが多く、敵対的な性質を持っている。
「オークか。これは厄介だな」
俺すぐに戦闘の準備を整えた。オークは交渉が通じないことが多いため、彼らと遭遇した際は戦闘を避けるのが難しい。ミアも魔法の準備を整え、フェンリスも身構えた。
だが、オークたちがこちらに気づく前に何かが異変を感じたのか、急に立ち止まって周囲を見渡し始めた。
そして、何かに警戒するように後退し、再び岩陰の向こうへと消えていった。
「どうやら、こちらに気づく前に去ってくれたようだ」
フェンリスとミアに目を向け、ふたりが無事であることを確認した。
オークたちはこちらに気づく前に去ってしまったが、あの様子からして何か別の存在を警戒しているようだった。
「ゼリルさん、オークたちが何かを恐れているように見えましたね」
ミアが不思議そうに呟いた。
同館だ。オークたちがあれほど警戒していたものが何なのか気になるが、今は深入りするべきではない。
「何かがこの谷に潜んでいるのかもしれないが、深入りする必要はない。こちらも無事に戻ることが先決だ」
俺たちは再び谷を進み始めた。
フェンリスも緊張を解かず、周囲を見渡しながら歩いている。
オークたちが恐れていたものが何なのか、その正体が気になるが……今は安全を優先するべきだ。
やがて俺たちは谷を抜けて開けた場所にたどり着いた。
冷たい風が頬を撫で、遠くには広がる平原が見える。
もう少し進めばいつもの洞窟が見えてくるはずだ。
「今日はここまでだ。明日、また新たな探索を始めよう」
俺の言葉にミアも頷き、フェンリスも満足そうに尻尾を振るのだった。
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