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28話 転移水晶
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続いて俺たちは、大きな水晶があった崖の中にある施設へと向かった。
「ゼリルさん、ここは確か……」
ミアが不安そうに崖の扉を見つめている。
他の遺跡と同様、この場所も静寂に包まれていた。
「ああ、前に来た場所だ。あのときは水晶に触れなかったら転移は起こらなかったが、今回も油断はするな」
注意を促しながら扉に手をかける。
フェンリスはいつものようにミアのそばを離れず警戒を怠らない。
扉を開くと施設の中央に位置する大きな部屋が広がっている。
部屋の中央には以前見たときと同じように巨大な水晶が鎮座していた。
水晶は不気味なほどに静かで、まるで何かを待ち続けているかのようだった。
「あの水晶、時間が停まってるみたいに何も変わっていないですね」
ミアがゆっくりとその場に立ち止まり、水晶を見つめている。
「ミア。お前がこの水晶に触れることで何が起こるかはまだ分からない。危険を冒す必要はないぞ。転移装置を起動するなら俺たちが共に行く方法を先に探るべきだ」
俺の言葉にミアが躊躇したように見えたが、その後すぐに決意を固めた表情を見せた。
「ゼリルさん、ありがとうございます。でも、きっと私がこの水晶に触れる必要があるんです。私が触れることで、何かが分かるはずなんです。今まで怖かったけど、今はふたりがそばにいてくれる。だから……私は試してみたい」
その決意に満ちた声を聞いて、俺はしばらく考えた後で深いため息をついた。
「……分かった。だが、無理はするなよ。もし何かが起これば、すぐに俺たちが対応するからな」
ミアは小さく頷き、ゆっくりと水晶に近づいていった。
フェンリスはその動きを見守りながら、緊張を隠せない様子でミアに寄り添っている。
俺もミアの背中を見つめながら何かが起きたときに備えて準備をした。
ついにミアが水晶に触れる。
その瞬間、強烈な光が水晶から放たれて部屋全体が白く染まった。
その光に目を細めながらも、ミアの姿が徐々に消えていくのが見える。
「ミア!」
俺が叫ぶと同時にフェンリスも焦ったようにミアを引き戻そうとしたが、光がさらに強まり、俺たちを弾き返すかのように強烈な衝撃を放つ。
「ぐっ!?」
すぐに態勢は立て直したが、ミアを引き戻すには失敗してしまった。
やがて光が一気に消え去り、部屋は再び静寂に包まれる。
「……ミア?」
俺とフェンリスは驚きと不安を抱えながら周囲を見渡した。
だが、ミアの姿は再び消えてしまっていた。
「また転移したのか……?」
拳を握りしめ、再びミアがどこか別の場所に飛ばされてしまったことに焦りを感じた。
だが、その思考も束の間、再び部屋が淡く輝き始めたのだ。
「ゼリルさん!」
突然、ミアの声が聞こえた。
驚いてその方向を見やるとミアの姿が光の中から浮かび上がってきた。
俺もフェンリスも慌てて駆け寄る。
「ミア! 大丈夫か?」
ミアは少し息を切らしながらも、しっかりとこちらを見つめていた。
「ゼリルさん…私は大丈夫です。今、あの水晶が……」
息を整えながらミアは何が起こったのかを説明し始めた。
「私、別の部屋に転移しました! でも、そこにも同じような水晶があって、触れたらすぐに戻ってこられたんです!」
その言葉を聞いて俺は再びその水晶を見つめた。
つまり、この水晶は古代の人々が転移で移動するための装置として使っていた可能性が高いということだ。
「転移のための装置か……」
この装置がどのようにして機能しているのか、そしてその目的は何なのかは依然として不明だ。
だが、ミアが戻ってきたことにはひとまず安堵する。
「ミア。お前が無事に戻ってきたことは何よりも重要だ。だが、これがどうして機能しているのか、まだ分からないことが多すぎるな」
ミアも頷きながら少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「少なくともひとつ分かったことがあります。行先にも正常に動く水晶があれば戻ってこられるってことです」
フェンリスもミアに同意するかのように軽く鼻を鳴らし、ミアの無事を祝うように彼女の手に頭を寄せた。
「よし、この情報を元に、他の水晶の調査を進めてみよう。おそらく、これらの水晶はどこかに繋がっているんだ」
「ゼリルさん、ここは確か……」
ミアが不安そうに崖の扉を見つめている。
他の遺跡と同様、この場所も静寂に包まれていた。
「ああ、前に来た場所だ。あのときは水晶に触れなかったら転移は起こらなかったが、今回も油断はするな」
注意を促しながら扉に手をかける。
フェンリスはいつものようにミアのそばを離れず警戒を怠らない。
扉を開くと施設の中央に位置する大きな部屋が広がっている。
部屋の中央には以前見たときと同じように巨大な水晶が鎮座していた。
水晶は不気味なほどに静かで、まるで何かを待ち続けているかのようだった。
「あの水晶、時間が停まってるみたいに何も変わっていないですね」
ミアがゆっくりとその場に立ち止まり、水晶を見つめている。
「ミア。お前がこの水晶に触れることで何が起こるかはまだ分からない。危険を冒す必要はないぞ。転移装置を起動するなら俺たちが共に行く方法を先に探るべきだ」
俺の言葉にミアが躊躇したように見えたが、その後すぐに決意を固めた表情を見せた。
「ゼリルさん、ありがとうございます。でも、きっと私がこの水晶に触れる必要があるんです。私が触れることで、何かが分かるはずなんです。今まで怖かったけど、今はふたりがそばにいてくれる。だから……私は試してみたい」
その決意に満ちた声を聞いて、俺はしばらく考えた後で深いため息をついた。
「……分かった。だが、無理はするなよ。もし何かが起これば、すぐに俺たちが対応するからな」
ミアは小さく頷き、ゆっくりと水晶に近づいていった。
フェンリスはその動きを見守りながら、緊張を隠せない様子でミアに寄り添っている。
俺もミアの背中を見つめながら何かが起きたときに備えて準備をした。
ついにミアが水晶に触れる。
その瞬間、強烈な光が水晶から放たれて部屋全体が白く染まった。
その光に目を細めながらも、ミアの姿が徐々に消えていくのが見える。
「ミア!」
俺が叫ぶと同時にフェンリスも焦ったようにミアを引き戻そうとしたが、光がさらに強まり、俺たちを弾き返すかのように強烈な衝撃を放つ。
「ぐっ!?」
すぐに態勢は立て直したが、ミアを引き戻すには失敗してしまった。
やがて光が一気に消え去り、部屋は再び静寂に包まれる。
「……ミア?」
俺とフェンリスは驚きと不安を抱えながら周囲を見渡した。
だが、ミアの姿は再び消えてしまっていた。
「また転移したのか……?」
拳を握りしめ、再びミアがどこか別の場所に飛ばされてしまったことに焦りを感じた。
だが、その思考も束の間、再び部屋が淡く輝き始めたのだ。
「ゼリルさん!」
突然、ミアの声が聞こえた。
驚いてその方向を見やるとミアの姿が光の中から浮かび上がってきた。
俺もフェンリスも慌てて駆け寄る。
「ミア! 大丈夫か?」
ミアは少し息を切らしながらも、しっかりとこちらを見つめていた。
「ゼリルさん…私は大丈夫です。今、あの水晶が……」
息を整えながらミアは何が起こったのかを説明し始めた。
「私、別の部屋に転移しました! でも、そこにも同じような水晶があって、触れたらすぐに戻ってこられたんです!」
その言葉を聞いて俺は再びその水晶を見つめた。
つまり、この水晶は古代の人々が転移で移動するための装置として使っていた可能性が高いということだ。
「転移のための装置か……」
この装置がどのようにして機能しているのか、そしてその目的は何なのかは依然として不明だ。
だが、ミアが戻ってきたことにはひとまず安堵する。
「ミア。お前が無事に戻ってきたことは何よりも重要だ。だが、これがどうして機能しているのか、まだ分からないことが多すぎるな」
ミアも頷きながら少しずつ落ち着きを取り戻していた。
「少なくともひとつ分かったことがあります。行先にも正常に動く水晶があれば戻ってこられるってことです」
フェンリスもミアに同意するかのように軽く鼻を鳴らし、ミアの無事を祝うように彼女の手に頭を寄せた。
「よし、この情報を元に、他の水晶の調査を進めてみよう。おそらく、これらの水晶はどこかに繋がっているんだ」
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