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18話 奈落の犯罪街
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ゴブリンの集落から無事に戻った後、俺たちは洞窟に戻って休息を取っていた。
調味料を手に入れるという願いが叶わなかったので、ミアは少し落胆しているようだった。
焚き火を見つめながら俺は次の手を考えていた。
この辺りは俺たちが縄張りにしている関係で、あのゴブリンの集落以外はだいぶ遠くなる。
このままではミアの願いを叶えることができない。
集落を訪れるよりもリスクが高いが、やはりここは――
「ゼリルさん……どうしましょう?」
ミアが不安そうに尋ねてくる。
しばらく考えた後、俺は意を決して提案した。
「やはり小さな集落では、調味料を手に入れるのは難しいだろう。だが、少し遠くに『コープス』という街がある。そこなら見つかるかもしれない」
「コープス?」
「コープスは、この周辺で最も大きな街だ。あらゆる種族が集まり、混沌とした犯罪街だ。正直、相当に危険な場所だ。俺たちのような魔族でも簡単に生き延びられる場所じゃない」
ミアの表情がさらに険しくなった。
「そんな危険な場所に行くんですか……?」
「お前を連れて行くつもりはない。俺とフェンリスだけで行こうと思う」
その言葉を聞いた瞬間、ミアは猛然と反対した。
「そんなの絶対にダメです! ゼリルさんとフェンリスだけでそんな場所に行くなんて! 私も一緒に行きます!」
ミアの強い決意に、俺は少しばかり驚いた。
これほどまでに俺たちを気にかけてくれているとは思わなかったのだ。
だが、コープスの危険性を知っている以上、ミアを連れて行くことは避けたい。
「ミア。コープスはお前が想像する以上に危険な街だ。俺たちにとっても厄介な連中がいる。お前を危険にさらしたくない」
ミアが目を見開いて、しっかりした口調で言った。
「それでも、私は一緒に行きます。自分だけが安全な場所にいたままゼリルさんたちだけを危険な目に遭わせたくないんです!」
ミアの強い意志表明に、俺は一瞬言葉を失った。
フェンリスもミアのそばに寄り添い、彼女を支持するような仕草を見せる。
「おいおい、お前もかよ」
仕方がない。
深くため息を吐いてから、俺は観念したように手を振った。
「分かった分かった。だが、コープスに入ったら、お前は俺たちの言うことを絶対に守れ。少しでも危険を感じたらすぐ動くんだ」
睨みつけるような俺の視線を受けてもミアは力強く頷いた。
「分かりました。ゼリルさんたちを信じます」
その言葉を聞いて俺も覚悟を決めた。
翌日、俺たちはコープスに向かうために出発した。
道中のミアはしっかりと歩みを進めている。
フェンリスはいつも以上に警戒しながら、周囲を見渡していた。
数日かけた旅の末にコープスの巨大な城壁が見えてきた。
城壁の中には、闇市や犯罪者たちの溜まり場が広がっているはずだ。
俺たちは城壁の前で立ち止まり、ミアに最後の確認をした。
「ミア、ここから先は本当に危険だ。もう一度言うが、絶対に俺たちの指示に従え」
ミアは真剣な表情で頷いた。
「分かっています、ゼリルさん」
城門を越えて、コープスの中へと足を踏み入れた。
街の中は暗く、狭い路地が迷路のように続いている。
あちこちで怪しい取引や喧嘩が繰り広げられ、殺気立った空気が漂っていた。
俺たちは寄り道することなく闇市へと向かい、調味料を探し始めた。
市場には様々な商品が並んでいたが、その多くは盗品や違法な物品であり、見るからに怪しげなものばかりだ。
しばらく歩き回った後、ようやく目当ての調味料を扱っている露店を見つけた。
その店主は老いたオーク、屈強な豚顔の妖魔だ。粗野な見た目だが、扱っている品物は確かだった。
「これが欲しいのか?」
店主が見せたのは、地上でも珍しい高価な調味料の瓶だった。
「これで間違いない。交換条件は何だ?」
そう尋ねると、店主は牙竜の素材に目を輝かせた。
「牙竜の鱗と牙があれば交換してやる」
牙竜の素材では足りないと言われるかもと警戒したが。条件が合うと判断して取引を成立させた。
ミアは調味料を手に取ると、感謝の笑顔を見せる。
「ゼリルさん、これで……これで料理が作れます!」
ミアの喜びの声を聞いた俺も少しだけ安心する。
だが次の瞬間、背後に不穏な気配を感じた。
「おい、お前ら」
鋭い声がした方を肩越しに見やると、数十名のゴロツキ妖魔たちが立ち塞がっていた。
連中は武器を手にし、俺たちに敵意を向けてきている。
「お前たち、牙竜の素材を持ってるんだろう? 俺たちの縄張りで勝手に取引してもらっちゃ困るぜ」
内心で舌打ちする。
連中はこの街を牛耳るギャングの一部だろう。
牙竜の素材を狙っているのは明らかだ。
「悪いが、素材はもう取引済みだ。もう帰る」
冷静に返答したが、ゴロツキたちはまったく退く気配を見せなかった。
「いやいや、そう簡単に帰してやるわけにはいかない。そのお嬢ちゃんも連れて行かせてもらうぜ?」
舌なめずりするギャングにミアが怯んだ。
フェンリスがすぐさま立ち塞がり、低く唸り声を上げる。
「ミア、俺たちの後ろに下がれ」
そう指示すると、ミアはすぐに従い、フェンリスの後ろに身を隠した。
俺もまたゆっくりと剣の柄に手をかけ、周囲を見渡した。
「無駄なことはするな。俺たちに手を出せば、ただでは済まないぞ」
俺の警告も空しくギャングたちはニヤリと笑って武器を構える。
「そんな脅しに乗るほど、俺たちは甘くねぇんだよ!」
ゴロツキたちが一斉に襲いかかってきた。
「無駄だと言ったはずだ!」
即座に応戦し、フェンリスも鋭い牙で敵を撃退し始めた。
ミアは後ろで魔法を使おうとしたが、その手が震えているのが分かった。
「ミア、冷静になれ! いつも通りでいい!」
俺が叫ぶとミアは震えを抑えて魔法を放ち始めた。
黒い炎がギャングの一人に命中し、その男が悲鳴を上げて倒れる。
だが、連中は次々に襲いかかってきて、状況はさらに混沌としてきた。
なんとか包囲を突破することができたが、楽勝とはいかなかった。
フェンリスが軽く負傷し、ミアも疲れ果てて息を切らしている。
ギャングの数が多すぎた上にミアを守りながらの戦いが想以上に不利だった。
「もうここに長居はできない。すぐに離れるぞ!」
全員でコープスの暗い路地を駆け抜けた。
敵が追ってこないのを確認しながら必死に街を抜け出す。
ようやくコープスの外に出たとき、ミアはその場に崩れ落ち、深い息を吐いていた。
「ゼリルさん……フェンリス……無事で良かった……」
ミアの言葉に、俺は軽く頷いた。
「お前もよくやった。これで目当てのものは手に入った。だが、もう二度とここには来ない方がいい」
ミアは疲れた笑顔を浮かべる。
「はい。でも、ゼリルさんたちのおかげで、やっと手に入れることができました」
俺はフェンリスの傷を魔法で治癒しながら応じた。
「もう少し休んでから洞窟に戻ろう。お前が無事で何よりだ」
ミアが笑顔で頷いて、フェンリスに寄り添いながら立ち上がった。
俺たちは一息ついてから洞窟に戻るための道を歩き始めた。
調味料を手に入れるという願いが叶わなかったので、ミアは少し落胆しているようだった。
焚き火を見つめながら俺は次の手を考えていた。
この辺りは俺たちが縄張りにしている関係で、あのゴブリンの集落以外はだいぶ遠くなる。
このままではミアの願いを叶えることができない。
集落を訪れるよりもリスクが高いが、やはりここは――
「ゼリルさん……どうしましょう?」
ミアが不安そうに尋ねてくる。
しばらく考えた後、俺は意を決して提案した。
「やはり小さな集落では、調味料を手に入れるのは難しいだろう。だが、少し遠くに『コープス』という街がある。そこなら見つかるかもしれない」
「コープス?」
「コープスは、この周辺で最も大きな街だ。あらゆる種族が集まり、混沌とした犯罪街だ。正直、相当に危険な場所だ。俺たちのような魔族でも簡単に生き延びられる場所じゃない」
ミアの表情がさらに険しくなった。
「そんな危険な場所に行くんですか……?」
「お前を連れて行くつもりはない。俺とフェンリスだけで行こうと思う」
その言葉を聞いた瞬間、ミアは猛然と反対した。
「そんなの絶対にダメです! ゼリルさんとフェンリスだけでそんな場所に行くなんて! 私も一緒に行きます!」
ミアの強い決意に、俺は少しばかり驚いた。
これほどまでに俺たちを気にかけてくれているとは思わなかったのだ。
だが、コープスの危険性を知っている以上、ミアを連れて行くことは避けたい。
「ミア。コープスはお前が想像する以上に危険な街だ。俺たちにとっても厄介な連中がいる。お前を危険にさらしたくない」
ミアが目を見開いて、しっかりした口調で言った。
「それでも、私は一緒に行きます。自分だけが安全な場所にいたままゼリルさんたちだけを危険な目に遭わせたくないんです!」
ミアの強い意志表明に、俺は一瞬言葉を失った。
フェンリスもミアのそばに寄り添い、彼女を支持するような仕草を見せる。
「おいおい、お前もかよ」
仕方がない。
深くため息を吐いてから、俺は観念したように手を振った。
「分かった分かった。だが、コープスに入ったら、お前は俺たちの言うことを絶対に守れ。少しでも危険を感じたらすぐ動くんだ」
睨みつけるような俺の視線を受けてもミアは力強く頷いた。
「分かりました。ゼリルさんたちを信じます」
その言葉を聞いて俺も覚悟を決めた。
翌日、俺たちはコープスに向かうために出発した。
道中のミアはしっかりと歩みを進めている。
フェンリスはいつも以上に警戒しながら、周囲を見渡していた。
数日かけた旅の末にコープスの巨大な城壁が見えてきた。
城壁の中には、闇市や犯罪者たちの溜まり場が広がっているはずだ。
俺たちは城壁の前で立ち止まり、ミアに最後の確認をした。
「ミア、ここから先は本当に危険だ。もう一度言うが、絶対に俺たちの指示に従え」
ミアは真剣な表情で頷いた。
「分かっています、ゼリルさん」
城門を越えて、コープスの中へと足を踏み入れた。
街の中は暗く、狭い路地が迷路のように続いている。
あちこちで怪しい取引や喧嘩が繰り広げられ、殺気立った空気が漂っていた。
俺たちは寄り道することなく闇市へと向かい、調味料を探し始めた。
市場には様々な商品が並んでいたが、その多くは盗品や違法な物品であり、見るからに怪しげなものばかりだ。
しばらく歩き回った後、ようやく目当ての調味料を扱っている露店を見つけた。
その店主は老いたオーク、屈強な豚顔の妖魔だ。粗野な見た目だが、扱っている品物は確かだった。
「これが欲しいのか?」
店主が見せたのは、地上でも珍しい高価な調味料の瓶だった。
「これで間違いない。交換条件は何だ?」
そう尋ねると、店主は牙竜の素材に目を輝かせた。
「牙竜の鱗と牙があれば交換してやる」
牙竜の素材では足りないと言われるかもと警戒したが。条件が合うと判断して取引を成立させた。
ミアは調味料を手に取ると、感謝の笑顔を見せる。
「ゼリルさん、これで……これで料理が作れます!」
ミアの喜びの声を聞いた俺も少しだけ安心する。
だが次の瞬間、背後に不穏な気配を感じた。
「おい、お前ら」
鋭い声がした方を肩越しに見やると、数十名のゴロツキ妖魔たちが立ち塞がっていた。
連中は武器を手にし、俺たちに敵意を向けてきている。
「お前たち、牙竜の素材を持ってるんだろう? 俺たちの縄張りで勝手に取引してもらっちゃ困るぜ」
内心で舌打ちする。
連中はこの街を牛耳るギャングの一部だろう。
牙竜の素材を狙っているのは明らかだ。
「悪いが、素材はもう取引済みだ。もう帰る」
冷静に返答したが、ゴロツキたちはまったく退く気配を見せなかった。
「いやいや、そう簡単に帰してやるわけにはいかない。そのお嬢ちゃんも連れて行かせてもらうぜ?」
舌なめずりするギャングにミアが怯んだ。
フェンリスがすぐさま立ち塞がり、低く唸り声を上げる。
「ミア、俺たちの後ろに下がれ」
そう指示すると、ミアはすぐに従い、フェンリスの後ろに身を隠した。
俺もまたゆっくりと剣の柄に手をかけ、周囲を見渡した。
「無駄なことはするな。俺たちに手を出せば、ただでは済まないぞ」
俺の警告も空しくギャングたちはニヤリと笑って武器を構える。
「そんな脅しに乗るほど、俺たちは甘くねぇんだよ!」
ゴロツキたちが一斉に襲いかかってきた。
「無駄だと言ったはずだ!」
即座に応戦し、フェンリスも鋭い牙で敵を撃退し始めた。
ミアは後ろで魔法を使おうとしたが、その手が震えているのが分かった。
「ミア、冷静になれ! いつも通りでいい!」
俺が叫ぶとミアは震えを抑えて魔法を放ち始めた。
黒い炎がギャングの一人に命中し、その男が悲鳴を上げて倒れる。
だが、連中は次々に襲いかかってきて、状況はさらに混沌としてきた。
なんとか包囲を突破することができたが、楽勝とはいかなかった。
フェンリスが軽く負傷し、ミアも疲れ果てて息を切らしている。
ギャングの数が多すぎた上にミアを守りながらの戦いが想以上に不利だった。
「もうここに長居はできない。すぐに離れるぞ!」
全員でコープスの暗い路地を駆け抜けた。
敵が追ってこないのを確認しながら必死に街を抜け出す。
ようやくコープスの外に出たとき、ミアはその場に崩れ落ち、深い息を吐いていた。
「ゼリルさん……フェンリス……無事で良かった……」
ミアの言葉に、俺は軽く頷いた。
「お前もよくやった。これで目当てのものは手に入った。だが、もう二度とここには来ない方がいい」
ミアは疲れた笑顔を浮かべる。
「はい。でも、ゼリルさんたちのおかげで、やっと手に入れることができました」
俺はフェンリスの傷を魔法で治癒しながら応じた。
「もう少し休んでから洞窟に戻ろう。お前が無事で何よりだ」
ミアが笑顔で頷いて、フェンリスに寄り添いながら立ち上がった。
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