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夢のような日々

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ーー起きたら彼がいる。

彼が来て、間もなく3日が経とうとしていた。
今までに感じた事のない幸福感に、戸惑いながらも変化を楽しんでいた。
起きてすぐ彼が部屋にいて、着替えの時以外はほぼ側にいる。元々体質的に日が沈んでから活動を始める私を、彼は黙って合わせてくれ、私が眠る午前中に騎士団との連絡をするらしい。
お昼過ぎに起きる私と一緒に出される料理を食べ、少ししたらエスコートされながらも、一緒に図書室で過ごす。半日ほど図書室で過ごしたら、私にとってはお昼の料理を自分の部屋に戻って食べる。その後また少ししたら、僅かな時間のみ許される屋敷の外へと出て、庭園を回って散歩をする。
以前は家庭教師が付いて勉強の時間もあったのだが、18歳を迎えてからはなくなった。
「ミカド、寒いから」
庭に咲く冬の花をしゃがんでじっと見ていたら、上着がズレていたらしい、すぐうしろにいたゼンが衣類の乱れを直してくれた。
「…ありがとう」
立ち上がり上を向くと彼と視線を絡め、しばし見つめ合った。散歩が終わるといつもは図書室に行くのだけど、自分の部屋へと戻ってゆっくりする事にした。
無言で差し出されるゼンの手に、自分の手を重ねてエスコートされ屋敷内へと入る。
ーーこのままぎゅっと抱きつきたい、彼を私だけの…
ふと湧いた想いに、どうしてそう思っているのだろうかと、戸惑いながらも心の中からじわじわと仄暗い独占欲が、広がっていく感覚を覚えた。

どんどん溢れていく想いに理由を、考える事を拒否するかのように、でも欲しい欲しいと欲望が占める。
「…ミカド、どうした?」
庭園と繋がっている大広間に入ると、下を向く私を心配したゼンが、私の顔を覗く。
「っ!!ミカド!どうしたっ」
私の顔を見て驚くゼンに何のことか分からず、ただ彼の顔を見返す。
「っ…瞳がっ」
「瞳?」
眼帯をしている反対の目元に触れるが、痛みも違和感もない。
「悪いっ、急いで部屋に戻る」
私の返事を待たず、横抱きに抱き上げると猛烈な速さで歩き始めたゼンは、私の部屋へと向かった。




ソファーに座らされ、ゼンはマチから手鏡を受け取ると私に渡した。
「っ!私の瞳がっ…っ」
驚きで目を見開くと、鏡の中の自分の目が同じ動きをした。
赤い瞳だった私の片目が、黒く…眼帯の下と同じ漆黒の瞳に変わっていた。
「…なん…で」
震える指で眼帯を取ると、同じ色の2つの瞳が鏡の中から私を見つめ、顔が青くなる。
ーーついに…ついに片目にも変化が表れ始めたのね
無言で自分の顔を見る私を、彼は苦しそうな声を掛ける。
「…何か…何か思考の変化や、体調の変化はあったのか?」
ーー思考…変化…?
体調はいつもと変わらない、変化も何もない…だけど、思考は…思考は…と考え始めて、またじわじわと仄暗い想いが蘇っていく。

「!!」
「っお嬢様!!」

ゼンとマチが、私をみて息を飲む。どうしたのか、という前に私の手から金色の湯気みたいなオーラが出て、自分の両手を上げると、それは身体中から発している事に気がついた。

「…なに…これ」
そう呟くと、


「やっと、覚醒したんだね」

と3人しかいないはずの部屋から、聞いたことがあるーー懐かしい声が聞こえてきた。
ハッと固く閉じているはずのカーテンを見ると、そこにいたの避暑地で魘された半月の間に見た夢の頭のてっぺんからウサギのような白くて長い耳の青眼の少女が、カーテンも窓が開いている窓の縁に座っていた。
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