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修学旅行1
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1学期の期末も終わり、3泊4日の修学旅行に入った。今回行く場所は沖縄だ。
「では、団体行動を心がけて、怪我のないようにーー」
大きな駅の改札口の近くにある、ロータリーで学年主任の先生が旅行の注意点を軽く説明している。
他に修学旅行に行く3年生と引率の先生達、教頭先生と旅の写真を撮るカメラマン、数名の保護者が座って話を聞く生徒の周りに立っている。今回は生徒達も私服参加の旅行で、着替えなどの入った荷物は昨日学校へと預けてあり一足先に沖縄へと送られている。
待ち合わせ場所までの交通費とお土産代などのお金や携帯電話、その他それぞれ必要なものをリュックやショルダーバッグなどの軽い荷物に入れている生徒達。
その中の1人、私もそうだ。
今日は白のキャップと黒の英字が胸の中央に並ぶベビーピンクのTシャツにハイウェストの黒のデニムスカート、白い靴下と黒いスニーカー。彼に買って貰った斜め掛けのショルダーバッグは、ダークピンクの長方形の外ポケット付きの合成皮革だ。メイクポーチと携帯電話、モバイル充電器、お財布とハンカチが入っていて、コンパクトなのに意外とモノが入る。
そしてーー
チラッと私のクラスの前に立つ、私の彼ーー林田先生を見る。白いポロシャツと濃緑のスキニーパンツを履き、スポーツブランドの黒のスニーカーと腕時計、黒いキャップ。生徒達がちゃんと話を聞いているか、視線を巡らせ腕を組んでいる。
シンプルなんだけど、スタイルの良さが全面に出た私服姿に頬が赤くなるのを止められない。慌てて下を向き、口元をギュッと結ぶ。
『この交際は、誰にも知らされたらいけない』
彼との約束を思い出し、ドキドキと胸が熱くなる。初めてのデートもまだしていない私達は、付き合ってーー視聴覚室で交際を始めてまだ1週間。一度だけ彼の部屋に上がり数時間だけ一緒に過ごした。修学旅行の話になって、ショルダーバッグを新しく買うつもりと言ったら、その場で一緒に買い物アプリを見て、このバックを買ってくれた。
その時の彼の服装もTシャツとジーパンでまた新鮮だったんだけど、今回の服装もカッコいい。
ーーうん、気をつけよう
そう心に決めた時、前にいた親友の絵里が振り向いた。
「ねっ結菜、飛行機って飲み物持ち込み禁止なんだって!」
無邪気に笑う絵里は、Tシャツは白いが私とお揃いの双子コーデで、白いリュックだ。彼女は小学校からの幼馴染で、大の仲良しだ。
「そうなの…?なら、この飲み物飲まないとダメかな…?」
そう、手には半分程飲んだ飲みかけの、熱中症対策の市販の麦茶のペットボトルを持っていた。
「あっ、そうか!頑張って飲んじゃお!」
私の言葉に、はっとした絵里は自分の手にも飲みかけのペットボトルがあったのを思い出した。
あはは、と笑い合っていたら、まだ学年主任の先生の話が終わっていなかったみたいで、
「こら、お前ら話を聞け!」
と、林田先生に怒られてしまったのだった。
**************
飛行機に乗り、絵里と話したりお昼時だったために機内食を食べ、映画を見ていたら、あっという間に着いた沖縄。
ちょうど観光シーズンで人が多くて、空港も激混みだ。
手配されたバスに乗り、動き出した窓の外を見ながら普段住む景色とは違う新鮮な常夏の雰囲気に、わくわくする。
その時、バッグの中の携帯のバイブが震えたので、取り出すと、SNSアプリのメッセージが届いていた。
隣にいる絵里を見ると、彼女はスマホで動画を見ていた。彼女に見られないように、SNSアプリのアイコンをタップして開くと、"S(ハートの絵文字)Y"のトークルームが開く。
メッセージ送信者の"しんちゃん"のアイコンは、2人で会った時に繋いだ手の写真で、私の"ゆい"アイコンは、しんちゃんと同じ写真を使っている。
そのアイコンの横にあるしんちゃんからのメッセージは、
『気をつけろよ』
だった。
この交際を始めてすぐ交換した電話番号とSNSアプリのID。最初は普通の何をしているかの会話だったけど、私が『好き』と送る度3回に一度は『俺も』と返してくれるようになって、最近ではハートを持ったウサギのスタンプをくれるようになった。一日中メッセージの送り合いをして、その毎日メッセージのやり取りを過去を遡り読み返すのが、私の日課となっていたのだ。
『うん』
とだけ返して、彼の座る位置に顔を上げたくなるのをグッと我慢して携帯の画面を暗くしてバッグへと戻した。
「では、団体行動を心がけて、怪我のないようにーー」
大きな駅の改札口の近くにある、ロータリーで学年主任の先生が旅行の注意点を軽く説明している。
他に修学旅行に行く3年生と引率の先生達、教頭先生と旅の写真を撮るカメラマン、数名の保護者が座って話を聞く生徒の周りに立っている。今回は生徒達も私服参加の旅行で、着替えなどの入った荷物は昨日学校へと預けてあり一足先に沖縄へと送られている。
待ち合わせ場所までの交通費とお土産代などのお金や携帯電話、その他それぞれ必要なものをリュックやショルダーバッグなどの軽い荷物に入れている生徒達。
その中の1人、私もそうだ。
今日は白のキャップと黒の英字が胸の中央に並ぶベビーピンクのTシャツにハイウェストの黒のデニムスカート、白い靴下と黒いスニーカー。彼に買って貰った斜め掛けのショルダーバッグは、ダークピンクの長方形の外ポケット付きの合成皮革だ。メイクポーチと携帯電話、モバイル充電器、お財布とハンカチが入っていて、コンパクトなのに意外とモノが入る。
そしてーー
チラッと私のクラスの前に立つ、私の彼ーー林田先生を見る。白いポロシャツと濃緑のスキニーパンツを履き、スポーツブランドの黒のスニーカーと腕時計、黒いキャップ。生徒達がちゃんと話を聞いているか、視線を巡らせ腕を組んでいる。
シンプルなんだけど、スタイルの良さが全面に出た私服姿に頬が赤くなるのを止められない。慌てて下を向き、口元をギュッと結ぶ。
『この交際は、誰にも知らされたらいけない』
彼との約束を思い出し、ドキドキと胸が熱くなる。初めてのデートもまだしていない私達は、付き合ってーー視聴覚室で交際を始めてまだ1週間。一度だけ彼の部屋に上がり数時間だけ一緒に過ごした。修学旅行の話になって、ショルダーバッグを新しく買うつもりと言ったら、その場で一緒に買い物アプリを見て、このバックを買ってくれた。
その時の彼の服装もTシャツとジーパンでまた新鮮だったんだけど、今回の服装もカッコいい。
ーーうん、気をつけよう
そう心に決めた時、前にいた親友の絵里が振り向いた。
「ねっ結菜、飛行機って飲み物持ち込み禁止なんだって!」
無邪気に笑う絵里は、Tシャツは白いが私とお揃いの双子コーデで、白いリュックだ。彼女は小学校からの幼馴染で、大の仲良しだ。
「そうなの…?なら、この飲み物飲まないとダメかな…?」
そう、手には半分程飲んだ飲みかけの、熱中症対策の市販の麦茶のペットボトルを持っていた。
「あっ、そうか!頑張って飲んじゃお!」
私の言葉に、はっとした絵里は自分の手にも飲みかけのペットボトルがあったのを思い出した。
あはは、と笑い合っていたら、まだ学年主任の先生の話が終わっていなかったみたいで、
「こら、お前ら話を聞け!」
と、林田先生に怒られてしまったのだった。
**************
飛行機に乗り、絵里と話したりお昼時だったために機内食を食べ、映画を見ていたら、あっという間に着いた沖縄。
ちょうど観光シーズンで人が多くて、空港も激混みだ。
手配されたバスに乗り、動き出した窓の外を見ながら普段住む景色とは違う新鮮な常夏の雰囲気に、わくわくする。
その時、バッグの中の携帯のバイブが震えたので、取り出すと、SNSアプリのメッセージが届いていた。
隣にいる絵里を見ると、彼女はスマホで動画を見ていた。彼女に見られないように、SNSアプリのアイコンをタップして開くと、"S(ハートの絵文字)Y"のトークルームが開く。
メッセージ送信者の"しんちゃん"のアイコンは、2人で会った時に繋いだ手の写真で、私の"ゆい"アイコンは、しんちゃんと同じ写真を使っている。
そのアイコンの横にあるしんちゃんからのメッセージは、
『気をつけろよ』
だった。
この交際を始めてすぐ交換した電話番号とSNSアプリのID。最初は普通の何をしているかの会話だったけど、私が『好き』と送る度3回に一度は『俺も』と返してくれるようになって、最近ではハートを持ったウサギのスタンプをくれるようになった。一日中メッセージの送り合いをして、その毎日メッセージのやり取りを過去を遡り読み返すのが、私の日課となっていたのだ。
『うん』
とだけ返して、彼の座る位置に顔を上げたくなるのをグッと我慢して携帯の画面を暗くしてバッグへと戻した。
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