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番外編 MerryChristmas クリスマス企画第2弾4 兄の親友
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「クリスマスは泊まらせられないから、イルミネーションを見て送るよ」
日曜日に当たる24日に会う約束していた恋人の一大イベントなのに、無情にもそう告げたのは、私の1コ年上の彼──大原福次だった。
──ええ、わかってますよーだ
心の中で舌を出しながら、分かったフリをしているのは、私──篠田青葉19歳だ。お酒が飲める歳になった福次は、最近では自動車の専門学校の友達や私の兄と飲みにいく機会が多くなり、大学に行った私と平日会えない時もあった。週末なんて、滅多に福次の家にお泊まりなんてしなくなっている。以前なら半年に一度は、お泊りあったのにさ。
──分かってるけどさーなんだかなー
イルミネーションが点灯しだした11月からあちこち行きたいと思っていたのに、福次から友達と遊びに行くと言われたら、渋々納得するしかない。
私だって友達と遊びに行くけど、それは大体21時くらいまでだし、そもそも彼の場合は飲み会だから、私とは遊びに行くタイプが違う。
一人暮らしを始めて長い彼は簡単な自炊はするが、ほとんどはファーストフード店で済ませている事が多く、この間彼の家に行った時に見た冷蔵庫は缶ビールの方が料理の材料よりも多かった。
──20歳になったらこうも変わるものなの?
ちょくちょく泊まったりするが、福次は私が彼の家に泊まるのを最近では渋るようになった。
そこで私は、兄に詰め寄る事にした。
──だって兄の親友が、私の彼氏なんだからっ!
「福次が浮気?そりゃないない、俺から見てもお前以外いない」
大学から家に帰ってきた兄を問い詰めたら、兄は小馬鹿にしたように返事をする。くだらない質問をするな、と言っているように、なので兄の腕をぽかぽか叩くと、兄は大袈裟に腕を押さえた。
「だっておかしいじゃんっクリスマスなのにさっ!」
「いででっ、お前乱暴だなっ、こんな暴力女よく付き合ってられるよ…ったく、福次なりになんか考えがあるんだろ」
「……その考えを知りたいのにさ」
「そんなにお前ら上手くいってないのか?」
私があまりにもしょんぼりしているからか、兄は逆に私の心配を始めた。
「…もうわかった!」
「どわっ!何だよ、突然大きな声で叫んでっ」
私の顔を覗き込もうとした兄に遮るように、私が拳を振り上げて気合いの一言を発すると、兄は大袈裟に仰け反った。
「なら金曜日の夜から福次の家に泊まるから、親に話合わせて欲しいんだけど」
「はっ?何で俺が?」
「だってお兄、友達と小旅行いくんだよね?」
兄は私の言葉にめちゃくちゃ驚いて、目を見開く。兄はこのクリスマスに友達と、『クリスマスイルミネーションがあるから寂しくて虚しい思いをするんだ!』と意味のわからない事を言って、恋人がいない友人達と22日から26日の朝まで山に籠る──兄は頑なにキャンプだと行っているが、私は現実逃避だと思ってる──らしい。なので、私もついて行くと親に伝えるから話を合わせて欲しいと言うと、兄は眉を顰めた。
「何でお前のアリバイを俺が保証しなくちゃいけないんだよっ!リア充のくせにっ」
「妹も参加しちゃいけない決まりはないし、口裏合わせるだけじゃんっ」
ケチッと小声で言うと、兄は「はぁ?」とキレそうになる。兄がキレると、どんなに謝っても絶対に口裏を合わせてくれなくなると思った私は、
「……これだけは使いたくなかったけど、襖の押し入れの奥にあるさ、サトミちゃん、ユウミさん、禁断の…」
「だーっ!分かった分かった!親に伝えるからっ!」
「本当?嬉しいっ!さすがお兄っ!…あっ、後でソレを処分してもちゃんと写真撮ってるから、しらばっくれても無駄だからねっ」
「…お前兄を脅すとは…末恐ろしい女や…こんなやつ福次のやつどこがいいんだよ」
兄の部屋の押し入れの中にあるAVの存在を口にすると、途端に兄は慌て出してお泊まりの件を了承してくれた。後で親に私が同行しなかったと、チクられないように証拠の写真はあると匂わせると、兄は憐れむような眼差しを私に向けた。だが、これは私に向けてじゃなくて、私の彼に向けたものだとわかる。
──べーだ、私を蔑ろにしようとするからでしょ
心の中で今いない彼氏に舌を出す。ここまで行動を起こすつもりはなかったのだ、福次に24日の予定を言われるまでは…なので福次のせいだと私は兄への脅しを正当化した。
「先輩には言わないでね、私から直接言うから」
福次に泊まることを言うつもりなんて毛頭ない。言えばこれまでの流れ的に、反対されるからと分かりきっているからだ。
「…お兄ちゃんは、兄の事を脅すお前の将来が心配だよ」
兄の嘆きは綺麗にスルーして、私は22日から誰にも邪魔されずに福次の家で過ごせる事に思いを馳せていた。
***************
「…マジでありえなくない?兄のくせに私を何だと思ってるの」
22日のまだ日付も変わってすぐの時間帯に叩き起こされ、『キャンプ場は遠いから朝早くから、みんなで集まって行くんだよっ』
と兄に言われ、兄の運転する車で移動して、朝の3時に福次のアパートの前にキャリーケースと共に置いてかれた。
福次が一人暮らしを始めてすぐの頃、彼の家の合鍵を貰っていた私は、福次の部屋の前まで行くと、一瞬だけ鍵を使うのを躊躇った。
──これで女の人の靴とかあったらどうしよう
連絡もなしに彼氏の家にやってきた彼女は玄関を開けると、彼氏の浮気に気がつく…と、漫画のワンシーンを思い出したが、頭を振って邪念を追い払った。
──先輩に限って、それはないって…それにっ、最初はいつでも来ていいって言ってたしっ!
シンとしたアパートの部屋の前で憂鬱な気持ちになったが、今から躓いていたら何にも出来ないと思い切って彼の部屋の合鍵を初めて使う事にした。
ガチャッと静かに開けたつもりでも、寝静まった時間帯にはどんな音でも大きく聞こえる。
「…うわっ、お酒くさっ」
ドアを少し開けただけなのに、空間に漂うアルコールの匂いが強過ぎて鼻を摘む。玄関先に女物の靴も、福次以外の靴がないと確認すると、ホッとした。静かに玄関の扉を閉めて、履いてきたブーツを脱ぎ、キャリーケースを入口のそばに置くと、部屋の奥へと入っていった。
福次が借りている1Kのワンルームは、短い廊下の先に普段布団を敷いて寝てる部屋へと通じる。短い廊下に行くまで、1人しか立てないミニ台所とシンク、トイレとお風呂があって、私が前回きた時よりもシンクの中に、たくさんの缶ビールが半分に凹んで置いてある。缶ビールが散乱する台所を見て違和感を覚えたけど、いつもなら事前に連絡してから福次の家にお邪魔する。いつも私が来ると分かっているから事前に片付けているのかもしれないと、福次の新たな一面を知りドキドキした。
──結構、ズボラなのかな…
一緒にいる時はちゃんとしているイメージだったけど、実際には違っているのかもしれない。
──もっと一緒にいればわかるかもしれない
同棲する未来を思い描いて、胸が擽ったい…なんて思っていたけど、スカートを履いてるし、足を温めてくれたブーツもなくなって寒さには勝てなくなり、福次の寝ている部屋へと足を運んだ。
真っ暗な部屋だけど、明かりもついていない玄関は暗かったから暗闇に慣れた私は、床に落ちてる福次な物を踏まないように慎重に歩いて、部屋の隅に敷かれた布団と大きな身体の側まで行けた。冬場はよく着ているパーカー姿で私に背を向けて壁側に身体の正面を向けている福次は、熟睡しているのか起きない。
──私も寝ようかな
起きたら来た理由を話そうと思っていたけど、私が側まで来ても起きないって事は深く眠っている証拠だ。着てきた上着を脱いで床に置いとくと、腰から下に掛かっている掛け布団を退かし、福次を跨いで壁側と彼の間に滑り込んだ。冷えた身体は、彼の寝ている布団の中で温まっていき、肩まで掛け直すと、
「…う…ん」
と福次が身動きを取り、伸びた手が私の腕に触れると、彼は私の身体に腕を巻き付けて抱き寄せた。首の下に福次の右腕が入り、私のくびれの上に左腕を置かれた。
「…青葉」
「うん?」
呼ばれたから返事をしたのに、彼はまだ夢の中の住人みたいですやすや眠っている。
──おやすみ
福次の腕の中に入ると、微かに彼の匂いがするし、アルコールの匂いもある。だけど福次の体温で温かくなった身体は、早くに起こされてちゃんと眠れなかったから簡単に眠りについてしまったのだ。
ピピッ、ピピピピッ、と自分の携帯のアラームとは違うアラーム音が鳴り、夢を見ていた気もするが意識が浮上する。
「…ん、寒い」
「ああ、悪…って、青葉?!」
アラーム音を消すためか、福次が動いたからズレた布団から冷気が入り、ぬくぬくしていた身体が冷える。寒いとただ言っただけなのに、寝ぼけていた福次が謝り、一瞬にして目が覚めたらしく、私の名前を呼んだ。
「…寒いって」
もう少し寝ていたかった私は福次の胸に抱きつくと、彼は条件反射のように、ズレた掛け布団を直して私を抱きしめた。
「…何でいるの?」
「んー、何かお兄ちゃんが友達とキャンプに行くって言うから、私も先輩の家に泊まれるようにしてもらった」
「どういう事?」
寝ぼけてるからちゃんとした説明が出来てないのに、辛抱強くまとめながら私の話を聞いた。
2度目のアラーム音が鳴ると話していたから私の目も覚めて、福次の胸から顔を上げると彼が私を優しい眼差しで見つめていた。
「おはよう」
「おはよう」
福次が私の顔に自分の顔を近づけると、唇が重なるだけのキスをした。
「…だから26日にお兄ちゃんから連絡あるまで一緒にいていい?」
可愛く首を傾げると、福次は苦笑した。
「ありえないが…もし断ったら、どうなる?」
「んー、お兄ちゃんのいるキャンプ場まで行って一緒に過ごすけど?」
お兄ちゃんのことだから、テントを張ったキャンプをするはずで、ホテルや車中泊ではないと思う。付き合いの長い福次なら分かると思うが…その可能性を滲ませると、彼はそうか、と一言だけ言って私のおでこに口をつけた。
「それは問題だから、しばらくは一緒に過ごそう」
と、彼は私が家に泊まるのを承諾してくれた。
「…そろそろ起きないとな…あー、学校行きたくねー」
課題を先にやっとけば良かった、と嘆いている福次に、私はくすくすと笑った。
「…青葉、大学は?」
「私は3限からだから…必修科目じゃないから行かなくてもいいし」
お互い顔を近づけて話すから、そんなに大きな声を出さなくても聞こえる。私が福次の腰に腕を回して、身体を近づけながら私とは違う固い身体にくっつけると、彼の足が私の足の間に入った。足を絡めていると私の髪に鼻をつけた福次が、
「…今日絶対早く帰ってくる」
自分に言い聞かせるように呟いた。
***************
「ただいま」
「おかえりー、早いね」
朝はギリギリまでお布団で戯れていたため、福次は遅刻するからと慌てて出て行ってしまった。今日は大学に行こうと思っていたが、台所にある空き缶を捨てたり掃除していたり、ご飯の献立を考えていたら、今から彼の家を出ても授業に間に合わない事に気がついた。
──どのみち、お兄といる事になってるから、別にいいか
寒いから鍋にしようと台所を見たら鍋があったので、近くのスーパーで買い物して帰って来て野菜を切っている所に福次が帰ってきた。野菜を切って肉団子の形になってるお肉を鍋に詰めて、鍋の素を入れるだけだから、家庭科の授業でしか料理をした事のない私でも出来ると思ったのだ。
スマホを見ると、まだ15時で帰って来るには早い時間だと言うと、福次は今日は特別に早退したと白状した。
「…何してるの」
「今日の夕飯鍋にしようと思って」
そう聞きながら、彼は私の横に立って手を洗い始めた。切っていた手を止めて、福次の腕にキッチンペーパーで拭いた自分の手を置いたら彼が私を見下ろし、踵を上げて彼の口元にキスをしようとすると、彼も屈んでくれた。
「…先にご飯食べる?」
「いや…青葉がいい」
一度触れ合ったら、その先も欲しくなるのは当然の流れで、彼の腕が私の腰に回り、身体を寄せられた。
「お風呂入った?」
耳朶を甘噛みされながら問いかけられ、私は頷いた。
「うん、買い物行った後に」
本当は料理の下拵えが終わったら少し寝ようと思ったけど、福次が帰ってきたのだ。
「俺風呂入ってるから、先に部屋で待ってて」
そう言われたら、期待の眼差しを福次に向けちゃって、彼は苦笑する。
「…その目だと、このまま部屋にいっちゃいそうだから」
名残惜しく私から離れた彼は、私を残してお風呂へと直行した。
カーテンを閉めた部屋は電気を付けなくても、外の太陽の光でお互いの姿が見えた。腰にタオルを巻いて出て来た福次は、部屋にいた私の姿を見て驚いて目を見張る。それもそうだ、さっきまで着ていた服は脱いでいて、ブラも外してパンツ一枚の私が彼の白いTシャツを着ていたからだ。白いTシャツは、服の下に下着を身につけていない事を教えて、胸元のTシャツは私の乳房で盛り上がって、乳房の中央にある粒が寒さで固くなっているのがはっきりと分かった。
1人だけ興奮しているみたいで恥ずかしかったけど、腰にタオルを巻いた彼のおへその下が盛り上がっているのを見て、私だけじゃないんだと嬉しくなった。磁石によって引き寄せられるように近づいてキスをすると、福次は私の乳房をTシャツの上から揉み、私は彼の腰に巻かれたタオルを剥がした。既に半勃ちとなっている昂りを右手で握り、親指の腹で昂りの先端を押すと、手のひらの中の昂りが一回り大きくなった。先端から溢れるツユを昂り全体につけ、福次も負けじとTシャツの上から、私の乳房の粒を摘み引っ張りながら弄り始めた。顔が近づけば、自然と唇が重なり、舌の絡まる濃厚なキスも最早当たり前となっている。
「ん、っ、はっ、ぅ…んっ」
私のTシャツの中に手を入れた福次の左手で背中をなぞられ、流れるように腰からお腹、そしてその下の下着の中へと入った。下生えの先にある蜜口に当たると、そのまま蜜口の縁を触って、キスと胸の愛撫によって蜜壺から溢れた蜜が、潤滑油のように彼の指を難なく蜜壺の中へと飲み込んでいく。
抽送の時みたいに前後に彼の指が動くと、快感と蜜が溢れていくのを感じる。足に力が入らなくて福次にもたれると、彼は右手で私の背中を抱きしめて支えた。
「…ん、っ…ぅ」
「…舐めて、青葉」
福次は私の耳の中に舌を入れながら熱い吐息で囁くと、私の蜜壺の中から指を離した。彼に言われるがまま、膝を床につけると、目の前にある天井に向かってそそり立つ固くて太い昂りに舌を伸ばした。下から上へと──昂りの付け根から先端に向かってソフトクリームを舐めるように舌を這わせ、大きすぎる昂りの側面を右手で握る。昂りの側面の血管が浮き出て凸凹しているし、舐めるたびにピクピクと反応する別の生き物みたいで愛おしい気持ちが出て来る。ぱくりと先端を口にすると、先端から口の中に独特な味が広がる。
この味は何度口にしても慣れる事はないし、この先も慣れないと思うが、不思議ともうやりたくないとは思わない。
もっと顔を昂りに近づけてると、鼻先に彼の下生えが当たって、擽ったい。
「…お尻揺れてる」
私の頭に両手を添えた福次の低い声にうっとりとしていると、彼はもっと咥えてと、追加でお願いをする。
彼の昂りの先端を口の奥へと入れると、彼は腰を前後に動かし出した。じゅるっ、と私の唾液と彼の昂りから出るツユが、昂りの入る口の隙間から溢れて私の顎を伝う。
少し余裕ができると口内の唾液を飲み込もうと、ゴクンと口が意図せず彼の昂りを締め付けてしまう。
「…っ、ぐ」
すると、彼の低い唸る声が聞こえ、私は彼の昂りを口に入れたまま上目遣いになって福次を見上げた。私を見下ろす彼は冬の日没が早くて部屋が暗くなってきているから、どんな表情をしているのか見えない。
──私も触って欲しい
願いを込めて左手で自分の左胸をTシャツの上から、福次に見せかけるように揉むと、福次は無言で右手を私の頭から離して、私の胸を鷲掴みした。Tシャツをたくし上げて乳房が露わになると、彼は直接私の乳房に愛撫を始めた。そして、彼の左足が動いたかと思ったら、私の口内から彼の昂りがいなくなり、屈んだ福次によって口を塞がれた。
「んっ、ふふっ」
彼のツユが口内に残ったまま舌を絡めるキスをするから眉を顰める福次に、思わず笑いが込み上げてくると、彼は咎めるように私の舌を強く吸い付いた。
彼も床に膝をつけると私のTシャツを脱がし、私を押し倒すと足が上がった拍子に下着も脱がした。
「…綺麗だ、青葉」
変わらず見下ろしてくる顔は見えないけど、福次から私は見えているみたいで、敷かれた布団の上で背中をズラすと、2つの乳房はぷるぷる揺れた。脚を曲げて膝を両手で持つと、彼にははっきり見えているかもしれないと一瞬だけ羞恥が出たが、それよりも早く一つになりたいと脚を広げた。
「早くっ、ね…あっ」
無言で私の露わになっている下半身に、福次は自分の昂りを握りながら、先端を蜜口に充てがうと一気に腰を進めた。ズズッと入る太い昂りを蜜壺は受け入れ、私は膝から手を離して自由になった脚を彼の太ももの裏へと掛けた。空いた手を彼の腕に添えると、私の蜜壺から昂りが引き、昂りの先端と側面の境目が蜜壺から出ると、また私の蜜壺の奥へと戻ってきた。
「あっ、あっ、気持ちっ…あっ、福っ、ちゃ」
ぱんっ、ぱんっとゆっくりだった抽送が早くなると、私の快感も強くなって甘い声が大きくなっていく。
「青葉っ、青葉」
福次は膝をつけたまま手を伸ばして、抽送の激しさで揺れてる乳房を掴むと乳房の中央にある粒を弄る。乳房からも快感が生まれ、下半身に力が入ると、蜜壺の中にいる昂りをぎゅうと締め付ける。福次は屈むと、私の首から肩に舌を這わし、ちゅうと吸い付きながら、抽送のスピードを早くした。
「あっ、い…くっ、んっ、いくっ」
「俺もっ、俺もっ」
最初の絶頂がやって来るのを感じて、福次に知らせると、彼も自分もと言ってひと突きするたびに、腰をぶるりと動かして刺激を与えた。
「あっ、ぁあっ!」
「…ぐっ、っ」
パンッ!と腰が私のお尻に当たると、その衝撃で頭が真っ白になって身体が強張り私は達した。ぎゅうぅっと昂りを締め付けると、その後すぐに福次の低い唸り声が聞こえて、蜜壺の中がヤケドをしそうなくらい熱い液体で満たされた。
早いとか、思う暇もなく、息を整えている間に、蜜壺の中がいっぱいになって圧迫されると、福次の昂りが私の中で大きくなったと気がついた。
「…もう、帰さなくてもいいのか」
キスを繰り返しながら乳房への愛撫もスタートすると、福次は嬉しそうにそう呟いた。
「…うん、うん、帰さないで」
改めてそう言われたら、私ももう帰らなくていいと思うと嬉しくて福次の首の後ろへと腕を回すと、今までずっと私は我慢していたと気がついた。
「寂しいッ、んっ…ぅ、あっ、あ、あ」
「俺も青葉が居なくて寂しかった」
悲しい声は掠れているのに、繋がっている2人の身体は正直に己の欲情をお互いに向かってぶつけた。はっ、はっ、と福次が熱い息を吐くと、熱烈に求められていると湧き上がる喜びと快感に心も身体も蕩される。
ぐぅ、と福次のお腹が鳴ると、腹を満たそうと一時休憩とした。
「私やろうか?」
「…俺がやるから休んでろ」
喘ぎ過ぎて掠れた青葉の声に、このままもう1ラウンドぐらいは出来ると思った福次は、自分の邪念を払った。福次が下拵えが終わった鍋なら出来ると、最初に青葉が着ていたTシャツとボクサーパンツ一枚を着てミニ台所へと立つと、しばらくして青葉も部屋の隅にあった福次のTシャツと脱ぎ捨てられた下着を履いて彼の元へと向かった。
「ビール飲む?」
福次の背後から抱きついて彼の手元を覗き込むと、毎日飲んでいるであろう沢山の缶ビールを午前中に捨てたから、今回も飲むのかと思ったら福次は苦笑いをした。
「今日から飲まないよ、青葉がいるから」
「?…どういう意味?」
鍋に詰めた野菜の上から鍋の元を入れる福次に問いかけると、彼は重い口を開いた。
「高校卒業してから、付き合い始めた時よりも会えないし、この家に泊まらせると青葉の親に悪いなって思うようになってさ」
「…それとこれとどう関係あるの?」
アルコールを飲むのと私の親の話が出て来て不思議に思っていると、鍋に適当な大きさに取ったアルミホイルを蓋をした福次は、鍋の火をつけた。
「…嫌われたくないんだよ、青葉の親とお兄ちゃんにな、俺の印象を良くしたいんだ…青葉と将来一緒になりたいから」
そう言って、私の左頬に彼の大きな右手を添えられた。
「…そんなのいいのに」
彼の手のひらに自分の頬を押し付けると、そう言うと思ったから言わなかったと福次は言った。
「青葉とデートした後、この家に1人で帰ると色々思う事があるから、友達と飲んだり市販のアルコールで誤魔化してたんだ」
だからあんなに空き缶があったのかと納得すると、福次は更に続けた。
「何度か高校時代に戻りたいと思ったよ、だって会おうと思えば会えたし」
高校の時はどこの場所も同じような時間帯に学校が終わるから気軽に会えたが、専門学校と大学は全然違う。なんなら夏とか冬の休暇も同じではない。それに今、福次は自動車の専門学校と先輩が働いている自動車整備工場でヘルプで働いているのだ。大人になるに連れて、土日に会えるとは限らない状況が増えていく。
「…私…ずっと考えてたの…やっぱり福ちゃんと暮らしたい…それか一人暮らしする」
実は大学進学する時に親に一人暮らしするか聞かれたが、家から大学は遠いが、朝の1限の授業は取っていなかったから必要ないと言って今だに実家に住んでいた。
親に娘を連れて行くなんて、と親の視線を気にしなくなるのは、実家から出て暮らす他選択肢はない。それを言うと、福次は
「無理に言わなくてもいい、俺は今のままでも……満足はしてないが」
そう言って私を抱きしめた。
「無理じゃない…私が福ちゃんと、誰の目も気にせずに会いたいの」
私も抱きしめる腕の力を強くすると、彼は私の頭にキスをした。
「俺も、いつでも会いたい」
福次が呟いた言葉は、私の背中を押してくれたのだった。
***************
爛れた4日間過ごすのかと思っていたが、約束通りイルミネーションは見に行った。写真もいっぱい撮った後、人混みの中でいつも以上に身体を寄せても、周りはカップルだらけだったから気にしなかった。
「帰ろうか、家に」
「うん、帰ろう」
いつかはまた言う言葉を初めて先に使うと、嬉しくて彼の腕を引っ張って頬にキスをした。
「…青葉っ」
「大丈夫、みんなカップルだよ」
焦る彼を見て私はくすくすと笑うと、福次も笑ってくれた。明日もまだ一緒にいれるから、今日はうんとイベントを楽しむんだと、大胆にも2人で顔を近づけて口にキスをした。
キャンプから帰って来た兄は迎えに来て、私は福次の家の前で拾われて帰った。
その数日後、一人暮らししたいと言った私を反対したのは、意外にも兄だった。
「ダメダメっ!お前が一人暮らししたら、恋人作らずにまだ家にいるのって親に言われるだろっ!」
理不尽な理由に呆れる私とは裏腹に、両親は独り立ちする娘に喜んだ。
「今度、彼氏連れて来なさい」
お茶目にウィンクする母に、私の思いがバレているかもと思ったけど、なんとか頷いて濁した。
それから数ヶ月後に決まった物件に引越した私は、週末にはもう福次とどちらかの家で過ごす事がすでに決まっている。
「…これで、福次からくる、次の旅行はいつだの、の催促から解放されるのか…」
途中から一人暮らしに反対しなくなった兄に、青葉が恋人の家から帰ってすぐ位から、福次からメッセージが届くようになった。その内容は、また友達と一緒か1人で旅行をしないか、出来たら最低4日ぐらいを目安に計画してくれと、ひと月に一度はメッセージを彼氏から兄に送られ始めたのを、青葉は知らなかった。
──学生の俺にそんな毎月旅行に行く金はねぇっ!
と兄の嘆きは、ついには誰にも知られる事はなく青葉の新生活は始まった。
日曜日に当たる24日に会う約束していた恋人の一大イベントなのに、無情にもそう告げたのは、私の1コ年上の彼──大原福次だった。
──ええ、わかってますよーだ
心の中で舌を出しながら、分かったフリをしているのは、私──篠田青葉19歳だ。お酒が飲める歳になった福次は、最近では自動車の専門学校の友達や私の兄と飲みにいく機会が多くなり、大学に行った私と平日会えない時もあった。週末なんて、滅多に福次の家にお泊まりなんてしなくなっている。以前なら半年に一度は、お泊りあったのにさ。
──分かってるけどさーなんだかなー
イルミネーションが点灯しだした11月からあちこち行きたいと思っていたのに、福次から友達と遊びに行くと言われたら、渋々納得するしかない。
私だって友達と遊びに行くけど、それは大体21時くらいまでだし、そもそも彼の場合は飲み会だから、私とは遊びに行くタイプが違う。
一人暮らしを始めて長い彼は簡単な自炊はするが、ほとんどはファーストフード店で済ませている事が多く、この間彼の家に行った時に見た冷蔵庫は缶ビールの方が料理の材料よりも多かった。
──20歳になったらこうも変わるものなの?
ちょくちょく泊まったりするが、福次は私が彼の家に泊まるのを最近では渋るようになった。
そこで私は、兄に詰め寄る事にした。
──だって兄の親友が、私の彼氏なんだからっ!
「福次が浮気?そりゃないない、俺から見てもお前以外いない」
大学から家に帰ってきた兄を問い詰めたら、兄は小馬鹿にしたように返事をする。くだらない質問をするな、と言っているように、なので兄の腕をぽかぽか叩くと、兄は大袈裟に腕を押さえた。
「だっておかしいじゃんっクリスマスなのにさっ!」
「いででっ、お前乱暴だなっ、こんな暴力女よく付き合ってられるよ…ったく、福次なりになんか考えがあるんだろ」
「……その考えを知りたいのにさ」
「そんなにお前ら上手くいってないのか?」
私があまりにもしょんぼりしているからか、兄は逆に私の心配を始めた。
「…もうわかった!」
「どわっ!何だよ、突然大きな声で叫んでっ」
私の顔を覗き込もうとした兄に遮るように、私が拳を振り上げて気合いの一言を発すると、兄は大袈裟に仰け反った。
「なら金曜日の夜から福次の家に泊まるから、親に話合わせて欲しいんだけど」
「はっ?何で俺が?」
「だってお兄、友達と小旅行いくんだよね?」
兄は私の言葉にめちゃくちゃ驚いて、目を見開く。兄はこのクリスマスに友達と、『クリスマスイルミネーションがあるから寂しくて虚しい思いをするんだ!』と意味のわからない事を言って、恋人がいない友人達と22日から26日の朝まで山に籠る──兄は頑なにキャンプだと行っているが、私は現実逃避だと思ってる──らしい。なので、私もついて行くと親に伝えるから話を合わせて欲しいと言うと、兄は眉を顰めた。
「何でお前のアリバイを俺が保証しなくちゃいけないんだよっ!リア充のくせにっ」
「妹も参加しちゃいけない決まりはないし、口裏合わせるだけじゃんっ」
ケチッと小声で言うと、兄は「はぁ?」とキレそうになる。兄がキレると、どんなに謝っても絶対に口裏を合わせてくれなくなると思った私は、
「……これだけは使いたくなかったけど、襖の押し入れの奥にあるさ、サトミちゃん、ユウミさん、禁断の…」
「だーっ!分かった分かった!親に伝えるからっ!」
「本当?嬉しいっ!さすがお兄っ!…あっ、後でソレを処分してもちゃんと写真撮ってるから、しらばっくれても無駄だからねっ」
「…お前兄を脅すとは…末恐ろしい女や…こんなやつ福次のやつどこがいいんだよ」
兄の部屋の押し入れの中にあるAVの存在を口にすると、途端に兄は慌て出してお泊まりの件を了承してくれた。後で親に私が同行しなかったと、チクられないように証拠の写真はあると匂わせると、兄は憐れむような眼差しを私に向けた。だが、これは私に向けてじゃなくて、私の彼に向けたものだとわかる。
──べーだ、私を蔑ろにしようとするからでしょ
心の中で今いない彼氏に舌を出す。ここまで行動を起こすつもりはなかったのだ、福次に24日の予定を言われるまでは…なので福次のせいだと私は兄への脅しを正当化した。
「先輩には言わないでね、私から直接言うから」
福次に泊まることを言うつもりなんて毛頭ない。言えばこれまでの流れ的に、反対されるからと分かりきっているからだ。
「…お兄ちゃんは、兄の事を脅すお前の将来が心配だよ」
兄の嘆きは綺麗にスルーして、私は22日から誰にも邪魔されずに福次の家で過ごせる事に思いを馳せていた。
***************
「…マジでありえなくない?兄のくせに私を何だと思ってるの」
22日のまだ日付も変わってすぐの時間帯に叩き起こされ、『キャンプ場は遠いから朝早くから、みんなで集まって行くんだよっ』
と兄に言われ、兄の運転する車で移動して、朝の3時に福次のアパートの前にキャリーケースと共に置いてかれた。
福次が一人暮らしを始めてすぐの頃、彼の家の合鍵を貰っていた私は、福次の部屋の前まで行くと、一瞬だけ鍵を使うのを躊躇った。
──これで女の人の靴とかあったらどうしよう
連絡もなしに彼氏の家にやってきた彼女は玄関を開けると、彼氏の浮気に気がつく…と、漫画のワンシーンを思い出したが、頭を振って邪念を追い払った。
──先輩に限って、それはないって…それにっ、最初はいつでも来ていいって言ってたしっ!
シンとしたアパートの部屋の前で憂鬱な気持ちになったが、今から躓いていたら何にも出来ないと思い切って彼の部屋の合鍵を初めて使う事にした。
ガチャッと静かに開けたつもりでも、寝静まった時間帯にはどんな音でも大きく聞こえる。
「…うわっ、お酒くさっ」
ドアを少し開けただけなのに、空間に漂うアルコールの匂いが強過ぎて鼻を摘む。玄関先に女物の靴も、福次以外の靴がないと確認すると、ホッとした。静かに玄関の扉を閉めて、履いてきたブーツを脱ぎ、キャリーケースを入口のそばに置くと、部屋の奥へと入っていった。
福次が借りている1Kのワンルームは、短い廊下の先に普段布団を敷いて寝てる部屋へと通じる。短い廊下に行くまで、1人しか立てないミニ台所とシンク、トイレとお風呂があって、私が前回きた時よりもシンクの中に、たくさんの缶ビールが半分に凹んで置いてある。缶ビールが散乱する台所を見て違和感を覚えたけど、いつもなら事前に連絡してから福次の家にお邪魔する。いつも私が来ると分かっているから事前に片付けているのかもしれないと、福次の新たな一面を知りドキドキした。
──結構、ズボラなのかな…
一緒にいる時はちゃんとしているイメージだったけど、実際には違っているのかもしれない。
──もっと一緒にいればわかるかもしれない
同棲する未来を思い描いて、胸が擽ったい…なんて思っていたけど、スカートを履いてるし、足を温めてくれたブーツもなくなって寒さには勝てなくなり、福次の寝ている部屋へと足を運んだ。
真っ暗な部屋だけど、明かりもついていない玄関は暗かったから暗闇に慣れた私は、床に落ちてる福次な物を踏まないように慎重に歩いて、部屋の隅に敷かれた布団と大きな身体の側まで行けた。冬場はよく着ているパーカー姿で私に背を向けて壁側に身体の正面を向けている福次は、熟睡しているのか起きない。
──私も寝ようかな
起きたら来た理由を話そうと思っていたけど、私が側まで来ても起きないって事は深く眠っている証拠だ。着てきた上着を脱いで床に置いとくと、腰から下に掛かっている掛け布団を退かし、福次を跨いで壁側と彼の間に滑り込んだ。冷えた身体は、彼の寝ている布団の中で温まっていき、肩まで掛け直すと、
「…う…ん」
と福次が身動きを取り、伸びた手が私の腕に触れると、彼は私の身体に腕を巻き付けて抱き寄せた。首の下に福次の右腕が入り、私のくびれの上に左腕を置かれた。
「…青葉」
「うん?」
呼ばれたから返事をしたのに、彼はまだ夢の中の住人みたいですやすや眠っている。
──おやすみ
福次の腕の中に入ると、微かに彼の匂いがするし、アルコールの匂いもある。だけど福次の体温で温かくなった身体は、早くに起こされてちゃんと眠れなかったから簡単に眠りについてしまったのだ。
ピピッ、ピピピピッ、と自分の携帯のアラームとは違うアラーム音が鳴り、夢を見ていた気もするが意識が浮上する。
「…ん、寒い」
「ああ、悪…って、青葉?!」
アラーム音を消すためか、福次が動いたからズレた布団から冷気が入り、ぬくぬくしていた身体が冷える。寒いとただ言っただけなのに、寝ぼけていた福次が謝り、一瞬にして目が覚めたらしく、私の名前を呼んだ。
「…寒いって」
もう少し寝ていたかった私は福次の胸に抱きつくと、彼は条件反射のように、ズレた掛け布団を直して私を抱きしめた。
「…何でいるの?」
「んー、何かお兄ちゃんが友達とキャンプに行くって言うから、私も先輩の家に泊まれるようにしてもらった」
「どういう事?」
寝ぼけてるからちゃんとした説明が出来てないのに、辛抱強くまとめながら私の話を聞いた。
2度目のアラーム音が鳴ると話していたから私の目も覚めて、福次の胸から顔を上げると彼が私を優しい眼差しで見つめていた。
「おはよう」
「おはよう」
福次が私の顔に自分の顔を近づけると、唇が重なるだけのキスをした。
「…だから26日にお兄ちゃんから連絡あるまで一緒にいていい?」
可愛く首を傾げると、福次は苦笑した。
「ありえないが…もし断ったら、どうなる?」
「んー、お兄ちゃんのいるキャンプ場まで行って一緒に過ごすけど?」
お兄ちゃんのことだから、テントを張ったキャンプをするはずで、ホテルや車中泊ではないと思う。付き合いの長い福次なら分かると思うが…その可能性を滲ませると、彼はそうか、と一言だけ言って私のおでこに口をつけた。
「それは問題だから、しばらくは一緒に過ごそう」
と、彼は私が家に泊まるのを承諾してくれた。
「…そろそろ起きないとな…あー、学校行きたくねー」
課題を先にやっとけば良かった、と嘆いている福次に、私はくすくすと笑った。
「…青葉、大学は?」
「私は3限からだから…必修科目じゃないから行かなくてもいいし」
お互い顔を近づけて話すから、そんなに大きな声を出さなくても聞こえる。私が福次の腰に腕を回して、身体を近づけながら私とは違う固い身体にくっつけると、彼の足が私の足の間に入った。足を絡めていると私の髪に鼻をつけた福次が、
「…今日絶対早く帰ってくる」
自分に言い聞かせるように呟いた。
***************
「ただいま」
「おかえりー、早いね」
朝はギリギリまでお布団で戯れていたため、福次は遅刻するからと慌てて出て行ってしまった。今日は大学に行こうと思っていたが、台所にある空き缶を捨てたり掃除していたり、ご飯の献立を考えていたら、今から彼の家を出ても授業に間に合わない事に気がついた。
──どのみち、お兄といる事になってるから、別にいいか
寒いから鍋にしようと台所を見たら鍋があったので、近くのスーパーで買い物して帰って来て野菜を切っている所に福次が帰ってきた。野菜を切って肉団子の形になってるお肉を鍋に詰めて、鍋の素を入れるだけだから、家庭科の授業でしか料理をした事のない私でも出来ると思ったのだ。
スマホを見ると、まだ15時で帰って来るには早い時間だと言うと、福次は今日は特別に早退したと白状した。
「…何してるの」
「今日の夕飯鍋にしようと思って」
そう聞きながら、彼は私の横に立って手を洗い始めた。切っていた手を止めて、福次の腕にキッチンペーパーで拭いた自分の手を置いたら彼が私を見下ろし、踵を上げて彼の口元にキスをしようとすると、彼も屈んでくれた。
「…先にご飯食べる?」
「いや…青葉がいい」
一度触れ合ったら、その先も欲しくなるのは当然の流れで、彼の腕が私の腰に回り、身体を寄せられた。
「お風呂入った?」
耳朶を甘噛みされながら問いかけられ、私は頷いた。
「うん、買い物行った後に」
本当は料理の下拵えが終わったら少し寝ようと思ったけど、福次が帰ってきたのだ。
「俺風呂入ってるから、先に部屋で待ってて」
そう言われたら、期待の眼差しを福次に向けちゃって、彼は苦笑する。
「…その目だと、このまま部屋にいっちゃいそうだから」
名残惜しく私から離れた彼は、私を残してお風呂へと直行した。
カーテンを閉めた部屋は電気を付けなくても、外の太陽の光でお互いの姿が見えた。腰にタオルを巻いて出て来た福次は、部屋にいた私の姿を見て驚いて目を見張る。それもそうだ、さっきまで着ていた服は脱いでいて、ブラも外してパンツ一枚の私が彼の白いTシャツを着ていたからだ。白いTシャツは、服の下に下着を身につけていない事を教えて、胸元のTシャツは私の乳房で盛り上がって、乳房の中央にある粒が寒さで固くなっているのがはっきりと分かった。
1人だけ興奮しているみたいで恥ずかしかったけど、腰にタオルを巻いた彼のおへその下が盛り上がっているのを見て、私だけじゃないんだと嬉しくなった。磁石によって引き寄せられるように近づいてキスをすると、福次は私の乳房をTシャツの上から揉み、私は彼の腰に巻かれたタオルを剥がした。既に半勃ちとなっている昂りを右手で握り、親指の腹で昂りの先端を押すと、手のひらの中の昂りが一回り大きくなった。先端から溢れるツユを昂り全体につけ、福次も負けじとTシャツの上から、私の乳房の粒を摘み引っ張りながら弄り始めた。顔が近づけば、自然と唇が重なり、舌の絡まる濃厚なキスも最早当たり前となっている。
「ん、っ、はっ、ぅ…んっ」
私のTシャツの中に手を入れた福次の左手で背中をなぞられ、流れるように腰からお腹、そしてその下の下着の中へと入った。下生えの先にある蜜口に当たると、そのまま蜜口の縁を触って、キスと胸の愛撫によって蜜壺から溢れた蜜が、潤滑油のように彼の指を難なく蜜壺の中へと飲み込んでいく。
抽送の時みたいに前後に彼の指が動くと、快感と蜜が溢れていくのを感じる。足に力が入らなくて福次にもたれると、彼は右手で私の背中を抱きしめて支えた。
「…ん、っ…ぅ」
「…舐めて、青葉」
福次は私の耳の中に舌を入れながら熱い吐息で囁くと、私の蜜壺の中から指を離した。彼に言われるがまま、膝を床につけると、目の前にある天井に向かってそそり立つ固くて太い昂りに舌を伸ばした。下から上へと──昂りの付け根から先端に向かってソフトクリームを舐めるように舌を這わせ、大きすぎる昂りの側面を右手で握る。昂りの側面の血管が浮き出て凸凹しているし、舐めるたびにピクピクと反応する別の生き物みたいで愛おしい気持ちが出て来る。ぱくりと先端を口にすると、先端から口の中に独特な味が広がる。
この味は何度口にしても慣れる事はないし、この先も慣れないと思うが、不思議ともうやりたくないとは思わない。
もっと顔を昂りに近づけてると、鼻先に彼の下生えが当たって、擽ったい。
「…お尻揺れてる」
私の頭に両手を添えた福次の低い声にうっとりとしていると、彼はもっと咥えてと、追加でお願いをする。
彼の昂りの先端を口の奥へと入れると、彼は腰を前後に動かし出した。じゅるっ、と私の唾液と彼の昂りから出るツユが、昂りの入る口の隙間から溢れて私の顎を伝う。
少し余裕ができると口内の唾液を飲み込もうと、ゴクンと口が意図せず彼の昂りを締め付けてしまう。
「…っ、ぐ」
すると、彼の低い唸る声が聞こえ、私は彼の昂りを口に入れたまま上目遣いになって福次を見上げた。私を見下ろす彼は冬の日没が早くて部屋が暗くなってきているから、どんな表情をしているのか見えない。
──私も触って欲しい
願いを込めて左手で自分の左胸をTシャツの上から、福次に見せかけるように揉むと、福次は無言で右手を私の頭から離して、私の胸を鷲掴みした。Tシャツをたくし上げて乳房が露わになると、彼は直接私の乳房に愛撫を始めた。そして、彼の左足が動いたかと思ったら、私の口内から彼の昂りがいなくなり、屈んだ福次によって口を塞がれた。
「んっ、ふふっ」
彼のツユが口内に残ったまま舌を絡めるキスをするから眉を顰める福次に、思わず笑いが込み上げてくると、彼は咎めるように私の舌を強く吸い付いた。
彼も床に膝をつけると私のTシャツを脱がし、私を押し倒すと足が上がった拍子に下着も脱がした。
「…綺麗だ、青葉」
変わらず見下ろしてくる顔は見えないけど、福次から私は見えているみたいで、敷かれた布団の上で背中をズラすと、2つの乳房はぷるぷる揺れた。脚を曲げて膝を両手で持つと、彼にははっきり見えているかもしれないと一瞬だけ羞恥が出たが、それよりも早く一つになりたいと脚を広げた。
「早くっ、ね…あっ」
無言で私の露わになっている下半身に、福次は自分の昂りを握りながら、先端を蜜口に充てがうと一気に腰を進めた。ズズッと入る太い昂りを蜜壺は受け入れ、私は膝から手を離して自由になった脚を彼の太ももの裏へと掛けた。空いた手を彼の腕に添えると、私の蜜壺から昂りが引き、昂りの先端と側面の境目が蜜壺から出ると、また私の蜜壺の奥へと戻ってきた。
「あっ、あっ、気持ちっ…あっ、福っ、ちゃ」
ぱんっ、ぱんっとゆっくりだった抽送が早くなると、私の快感も強くなって甘い声が大きくなっていく。
「青葉っ、青葉」
福次は膝をつけたまま手を伸ばして、抽送の激しさで揺れてる乳房を掴むと乳房の中央にある粒を弄る。乳房からも快感が生まれ、下半身に力が入ると、蜜壺の中にいる昂りをぎゅうと締め付ける。福次は屈むと、私の首から肩に舌を這わし、ちゅうと吸い付きながら、抽送のスピードを早くした。
「あっ、い…くっ、んっ、いくっ」
「俺もっ、俺もっ」
最初の絶頂がやって来るのを感じて、福次に知らせると、彼も自分もと言ってひと突きするたびに、腰をぶるりと動かして刺激を与えた。
「あっ、ぁあっ!」
「…ぐっ、っ」
パンッ!と腰が私のお尻に当たると、その衝撃で頭が真っ白になって身体が強張り私は達した。ぎゅうぅっと昂りを締め付けると、その後すぐに福次の低い唸り声が聞こえて、蜜壺の中がヤケドをしそうなくらい熱い液体で満たされた。
早いとか、思う暇もなく、息を整えている間に、蜜壺の中がいっぱいになって圧迫されると、福次の昂りが私の中で大きくなったと気がついた。
「…もう、帰さなくてもいいのか」
キスを繰り返しながら乳房への愛撫もスタートすると、福次は嬉しそうにそう呟いた。
「…うん、うん、帰さないで」
改めてそう言われたら、私ももう帰らなくていいと思うと嬉しくて福次の首の後ろへと腕を回すと、今までずっと私は我慢していたと気がついた。
「寂しいッ、んっ…ぅ、あっ、あ、あ」
「俺も青葉が居なくて寂しかった」
悲しい声は掠れているのに、繋がっている2人の身体は正直に己の欲情をお互いに向かってぶつけた。はっ、はっ、と福次が熱い息を吐くと、熱烈に求められていると湧き上がる喜びと快感に心も身体も蕩される。
ぐぅ、と福次のお腹が鳴ると、腹を満たそうと一時休憩とした。
「私やろうか?」
「…俺がやるから休んでろ」
喘ぎ過ぎて掠れた青葉の声に、このままもう1ラウンドぐらいは出来ると思った福次は、自分の邪念を払った。福次が下拵えが終わった鍋なら出来ると、最初に青葉が着ていたTシャツとボクサーパンツ一枚を着てミニ台所へと立つと、しばらくして青葉も部屋の隅にあった福次のTシャツと脱ぎ捨てられた下着を履いて彼の元へと向かった。
「ビール飲む?」
福次の背後から抱きついて彼の手元を覗き込むと、毎日飲んでいるであろう沢山の缶ビールを午前中に捨てたから、今回も飲むのかと思ったら福次は苦笑いをした。
「今日から飲まないよ、青葉がいるから」
「?…どういう意味?」
鍋に詰めた野菜の上から鍋の元を入れる福次に問いかけると、彼は重い口を開いた。
「高校卒業してから、付き合い始めた時よりも会えないし、この家に泊まらせると青葉の親に悪いなって思うようになってさ」
「…それとこれとどう関係あるの?」
アルコールを飲むのと私の親の話が出て来て不思議に思っていると、鍋に適当な大きさに取ったアルミホイルを蓋をした福次は、鍋の火をつけた。
「…嫌われたくないんだよ、青葉の親とお兄ちゃんにな、俺の印象を良くしたいんだ…青葉と将来一緒になりたいから」
そう言って、私の左頬に彼の大きな右手を添えられた。
「…そんなのいいのに」
彼の手のひらに自分の頬を押し付けると、そう言うと思ったから言わなかったと福次は言った。
「青葉とデートした後、この家に1人で帰ると色々思う事があるから、友達と飲んだり市販のアルコールで誤魔化してたんだ」
だからあんなに空き缶があったのかと納得すると、福次は更に続けた。
「何度か高校時代に戻りたいと思ったよ、だって会おうと思えば会えたし」
高校の時はどこの場所も同じような時間帯に学校が終わるから気軽に会えたが、専門学校と大学は全然違う。なんなら夏とか冬の休暇も同じではない。それに今、福次は自動車の専門学校と先輩が働いている自動車整備工場でヘルプで働いているのだ。大人になるに連れて、土日に会えるとは限らない状況が増えていく。
「…私…ずっと考えてたの…やっぱり福ちゃんと暮らしたい…それか一人暮らしする」
実は大学進学する時に親に一人暮らしするか聞かれたが、家から大学は遠いが、朝の1限の授業は取っていなかったから必要ないと言って今だに実家に住んでいた。
親に娘を連れて行くなんて、と親の視線を気にしなくなるのは、実家から出て暮らす他選択肢はない。それを言うと、福次は
「無理に言わなくてもいい、俺は今のままでも……満足はしてないが」
そう言って私を抱きしめた。
「無理じゃない…私が福ちゃんと、誰の目も気にせずに会いたいの」
私も抱きしめる腕の力を強くすると、彼は私の頭にキスをした。
「俺も、いつでも会いたい」
福次が呟いた言葉は、私の背中を押してくれたのだった。
***************
爛れた4日間過ごすのかと思っていたが、約束通りイルミネーションは見に行った。写真もいっぱい撮った後、人混みの中でいつも以上に身体を寄せても、周りはカップルだらけだったから気にしなかった。
「帰ろうか、家に」
「うん、帰ろう」
いつかはまた言う言葉を初めて先に使うと、嬉しくて彼の腕を引っ張って頬にキスをした。
「…青葉っ」
「大丈夫、みんなカップルだよ」
焦る彼を見て私はくすくすと笑うと、福次も笑ってくれた。明日もまだ一緒にいれるから、今日はうんとイベントを楽しむんだと、大胆にも2人で顔を近づけて口にキスをした。
キャンプから帰って来た兄は迎えに来て、私は福次の家の前で拾われて帰った。
その数日後、一人暮らししたいと言った私を反対したのは、意外にも兄だった。
「ダメダメっ!お前が一人暮らししたら、恋人作らずにまだ家にいるのって親に言われるだろっ!」
理不尽な理由に呆れる私とは裏腹に、両親は独り立ちする娘に喜んだ。
「今度、彼氏連れて来なさい」
お茶目にウィンクする母に、私の思いがバレているかもと思ったけど、なんとか頷いて濁した。
それから数ヶ月後に決まった物件に引越した私は、週末にはもう福次とどちらかの家で過ごす事がすでに決まっている。
「…これで、福次からくる、次の旅行はいつだの、の催促から解放されるのか…」
途中から一人暮らしに反対しなくなった兄に、青葉が恋人の家から帰ってすぐ位から、福次からメッセージが届くようになった。その内容は、また友達と一緒か1人で旅行をしないか、出来たら最低4日ぐらいを目安に計画してくれと、ひと月に一度はメッセージを彼氏から兄に送られ始めたのを、青葉は知らなかった。
──学生の俺にそんな毎月旅行に行く金はねぇっ!
と兄の嘆きは、ついには誰にも知られる事はなく青葉の新生活は始まった。
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