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1日目。2

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薄紫色のライトがラウンジを照らし、カウンターの席に隣同士で座る私達の距離は少しだけ近い。
水色のカクテルを飲む私と、ウィスキーを飲む彼。
2人の腕は少しだけ触れていて、内緒話をする様に顔を近づけて話す。
「つまり今は結婚してないし、恋人も好きな人も居ないんだね?」
「ええ、なんか変な男の人しか声を掛けてこないので、1人の方が気楽かなって…思ってます」
あと数センチ近づけたら、鼻がぶつかりそう、と思いながら返答をする。このラウンジの雰囲気に酔っているのか、それともアルコールに酔ったのか、妖しい雰囲気がこの2人の間に漂っている気がする。
彼の手が、カウンターの上に置く私の手に重なる。親指を摩る彼の顔を見ると、私を熱っぽい瞳で見つめていた。
「…お遊びですか?」
遊びなら付き合わないと断固とした決意で睨むと、
「いや、君を見た時からずっと誘いたいと思っていたよ」
私の耳に掛かる息が擽ったくて肩をすくめる。
「…私、好きになったら重いって言われるんですけど」
彼の反応を知りたくて、今まで振られてきた理由を敢えて言って彼の指を絡めて、肩に頭を乗せると
「重くなってくれるの?光栄だな」
彼の絡まる指の力が強くなり、私の頭の上に頭を乗せられた。





******************



ゴムが無いと、近くまで買いに行こうとする彼に、私も行きたいと一緒に行く事にした。
ーー少しでも離れたら、決心が鈍りそうで
時間差でホテルを出てホテルからワンブロック先で待ち合わせをする事になった。
ホテルから出ると薄暗い夜道での風が冷たく肌寒い。腕を摩っていると、待っていた部長が私を抱きしめた。
「寒いのか」
「はい」
バスの中でも思っていた、いい香りが私の全身を包み深く息を吸い込み、彼の胸に頬をくっつけた。
肌寒かった身体が暖かくなり、部長は私の左側の腰に手を回し歩き出して、私も彼の背中に手をつけ浴衣を握り身体を寄せた。コンビニがあと数十メートル先となると、身体を離し無言で買い物をする。
彼はコンドームとビール、私はお茶とおつまみを同じカゴに入れ、待っていて、と言い残し部長はレジへと向かった。
買い物が終わるとコンビニを出て少ししてから、部長が持っていたビニール袋を1つ貰い、また身体をくっつけた。


他愛のない話をして、歩く私と部長。


ホテルに着く前に茂みに引き寄せられ背に手を腰を掴み、激しく唇を奪われた私は彼の胸の浴衣を握る。私の口内を暴れ情熱的な口づけを与えてくれる彼に夢中になり応える。
くちゅくちゅと水音が響き、舌を甘噛みしては強く吸い、歯列をなぞり、内頬に舌を這わせる。
ちゅぅっと離れた唇だが、額を合わせたまま何度も啄む。
「…1608号室だから」
囁く声量が腰に来て、
「んっ」
と甘えた声が出てしまう。最後にとキスをまた始めると、また濃厚な雰囲気が2人を包み、しばらく動かずにただ口づけを堪能していた。


私が持っていたコンビニで買ったビニール袋を渡すと、
「待ってる」
そう言って私を先にホテルへ行かせる部長と離れ難く、後ろ髪を引かれる。一度部屋に戻りスマホとお財布、ルームキーと、迷って下着とアイブロウを小さなショルダーバックに入れた。スマホを見ると部長と別れてから30分経っている事に気がつき、部屋を出た。
ーーほのかの旦那さんが入院しなかったら、こんな時間もないよね
つくづく未来のことは分からないなと、苦笑した。
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