上 下
22 / 63
本編

六月に芽吹く(7)

しおりを挟む
流れる景色。体に酒が回って熱くて窓を開けて風に当たる。

「小鳥遊、身を乗り出したら危ない」
「…あれ、かんざきだ。何でいんの?」
「小鳥遊を迎えに来たんだ」
「何で?」
「何で、か」

真っ直ぐとまるで此処ではない何かを見るような顔。神崎が言いにくい事がある時にする顔だ。どうやらこれは俺が踏み込んじゃいけない話らしい。

別にいつもの事だ、慣れてる。そう自分に言い聞かせて笑って見せた。

「また隠し事かよー。いいよ、そんな興味ねえし」
「隠し事?隠し事の方じゃなくて。これは俺自身さっき気づいたばかりで、まだよく分かっていないんだ」

隣で神崎が何か言ってるが頭に入ってこない。酷く眠たくて目を閉じる。緩やかな揺れだけが伝わる神崎の安全運転が逆に眠気を誘う。

「待ってくれ。違うんだ、小鳥遊、話を…」

神崎の焦ったような声が聞こえた気がする。
今は本当にムリだから続きは後にしてくれ、そう伝えたつもりだが本当に言えていたかはっきりとした記憶はない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛を亡くした男は今度こそその手を離さない

竜鳴躍
BL
愛した人がいた。自分の寿命を分け与えても、彼を庇って右目と右腕を失うことになっても。見返りはなくても。親友という立ち位置を失うことを恐れ、一線を越えることができなかった。そのうちに彼は若くして儚くなり、ただ虚しく過ごしているとき。彼の妹の子として、彼は生まれ変わった。今度こそ、彼を離さない。 <関連作> https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/745514318 https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/186571339 R18にはなりませんでした…! 短編に直しました。

「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが

ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク 王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。 余談だが趣味で小説を書いている。 そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが? 全8話完結

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

私の愛する人は、私ではない人を愛しています

ハナミズキ
恋愛
代々王宮医師を輩出しているオルディアン伯爵家の双子の妹として生まれたヴィオラ。 物心ついた頃から病弱の双子の兄を溺愛する母に冷遇されていた。王族の専属侍医である父は王宮に常駐し、領地の邸には不在がちなため、誰も夫人によるヴィオラへの仕打ちを諫められる者はいなかった。 母に拒絶され続け、冷たい日々の中でヴィオラを支えたのは幼き頃の初恋の相手であり、婚約者であるフォルスター侯爵家嫡男ルカディオとの約束だった。 『俺が騎士になったらすぐにヴィオを迎えに行くから待っていて。ヴィオの事は俺が一生守るから』 だが、その約束は守られる事はなかった。 15歳の時、愛するルカディオと再会したヴィオラは残酷な現実を知り、心が壊れていく。 そんなヴィオラに、1人の青年が近づき、やがて国を巻き込む運命が廻り出す。 『約束する。お前の心も身体も、俺が守るから。だからもう頑張らなくていい』 それは誰の声だったか。 でもヴィオラの壊れた心にその声は届かない。 もうヴィオラは約束なんてしない。 信じたって最後には裏切られるのだ。 だってこれは既に決まっているシナリオだから。 そう。『悪役令嬢』の私は、破滅する為だけに生まれてきた、ただの当て馬なのだから。

彼の理想に

いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。 人は違ってもそれだけは変わらなかった。 だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。 優しくする努力をした。 本当はそんな人間なんかじゃないのに。 俺はあの人の恋人になりたい。 だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。 心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。

テンプレを無視する異世界生活

ss
ファンタジー
主人公の如月 翔(きさらぎ しょう)は1度見聞きしたものを完璧に覚えるIQ200を超える大天才。 そんな彼が勇者召喚により異世界へ。 だが、翔には何のスキルもなかった。 翔は異世界で過ごしていくうちに異世界の真実を解き明かしていく。 これは、そんなスキルなしの大天才が行く異世界生活である.......... hotランキング2位にランクイン 人気ランキング3位にランクイン ファンタジーで2位にランクイン ※しばらくは0時、6時、12時、6時の4本投稿にしようと思います。 ※コメントが多すぎて処理しきれなくなった時は一時的に閉鎖する場合があります。

『濁』なる俺は『清』なる幼馴染と決別する

はにわ
ファンタジー
主人公ゴウキは幼馴染である女勇者クレアのパーティーに属する前衛の拳闘士である。 スラムで育ち喧嘩に明け暮れていたゴウキに声をかけ、特待生として学校に通わせてくれたクレアに恩を感じ、ゴウキは苛烈な戦闘塗れの勇者パーティーに加入して日々活躍していた。 だがクレアは人の良い両親に育てられた人間を疑うことを知らずに育った脳内お花畑の女の子。 そんな彼女のパーティーにはエリート神官で腹黒のリフト、クレアと同じくゴウキと幼馴染の聖女ミリアと、剣聖マリスというリーダーと気持ちを同じくするお人よしの聖人ばかりが揃う。 勇者パーティーの聖人達は普段の立ち振る舞いもさることながら、戦いにおいても「美しい」と言わしめるスマートな戦いぶりに周囲は彼らを国の誇りだと称える。 そんなパーティーでゴウキ一人だけ・・・人を疑い、荒っぽい言動、額にある大きな古傷、『拳鬼』と呼ばれるほどの荒々しく泥臭い戦闘スタイル・・・そんな異色な彼が浮いていた。 周囲からも『清』の中の『濁』だと彼のパーティー在籍を疑問視する声も多い。 素直過ぎる勇者パーティーの面々にゴウキは捻くれ者とカテゴライズされ、パーティーと意見を違えることが多く、衝突を繰り返すが常となっていた。 しかしゴウキはゴウキなりに救世の道を歩めることに誇りを持っており、パーティーを離れようとは思っていなかった。 そんなある日、ゴウキは勇者パーティーをいつの間にか追放処分とされていた。失意の底に沈むゴウキだったが、『濁』なる存在と認知されていると思っていたはずの彼には思いの外人望があることに気付く。 『濁』の存在である自分にも『濁』なりの救世の道があることに気付き、ゴウキは勇者パーティーと決別して己の道を歩み始めるが、流れに流れいつの間にか『マフィア』を率いるようになってしまい、立場の違いから勇者と争うように・・・ 一方、人を疑うことのないクレア達は防波堤となっていたゴウキがいなくなったことで、悪意ある者達の食い物にされ弱体化しつつあった。

闇を照らす愛

モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。 与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。 どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。 抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。

処理中です...